第24話 聖英女学院 美亜目線
2010年4月24日 土曜日
聖英女学院中等部に入学して、2週間が過ぎた。
初等部からそのまま上がってきた生徒たちは「内部生」、私たち受験を経て入ってきた生徒は「外部生」と呼ばれている事は知っていたから、うまく馴染めるか少し不安だった。
「外部生」は3割ほどいるので、それ程珍くはないけど、呼び方の響きが良くないよね?
でも、みんな落ち着いていて、礼儀正しい子ばかり。
思っていたより安心だった。
それに、紺野インターナショナルスクールからきた結衣とエレナも同じクラスにいる事も心強かった。
黒野君と最後に再会できたことで、少しだけ元気を取り戻せたけど、相変わらずテンションは低いままだった。
でも、今はそのままでいいんだ…。
以前の元気いっぱいで、無邪気すぎる私だったら、この学校には馴染めなかっただろう。
下手をすれば、嫉妬されて、いじめられていたかもしれない。
そう思ったのは、入学してすぐ、上級生や他のクラスの子達が私を見に教室まで来て「かわいい!」て言ってくれたからだ。
容姿を褒められるのは嬉しいけど…。
もし以前の私だったら、きっと素直に「ありがとう!」「嬉しい!」なんて笑顔で言って、調子に乗ってしまったと思う…。
だけど、この学校にはインターと違って上級生の存在は絶対という、暗黙のルールがある。
それに、「内部生」の方が少し偉いという空気も。
極力控えめにしていた方が良さそう…。
それに引き換え、お母さんは一緒に入学式に出席した時、異常なまでにテンションが高かった。
あちこちをキョロキョロ見渡し、終始上機嫌だった。
私が帰ってきたら、「今日はどうだった?」「クラスメイトはどんな感じ?」「設備やルールは?」など事細かに聞いてくる。
私の事と言うより、聖英女学院と言う学校に興味津々なのだ。
お母さんは多分お嬢様学校に憧れていて、自分が通いたかったんだと思う。
聞いてみたら「全然違う」と言って不機嫌になったけど、絶対そうだと思う。
お母さんの岩手の実家は今まで1回しか行った事がないけど「団地」と言われているところだった。
「耳をすませば」の雫ちゃんのおうちみたいで、私は好きだけど、お母さんはひどく嫌っているようだった。
4、5歳くらいの時、1回行ったきりだから、おばあちゃんの事はよく知らない。「何歳?」って聞かれたくらいの記憶しかない。おじいちゃんはもうすでに亡くなっていた。
「私は家にお金がなかったから、美亜は恵まれ過ぎている」と年がら年中嫌味を言われている。
なんでお母さんは自分の娘にそんな事ばかり言うのかなぁ?
確かに、私は恵まれている点も多いと思うけど、そうでない事もかなり多いと思っている。
バレエもフランス語も無理矢理やらされているだけし、聖英女学院も、別に好きで入った訳ではない。
それに私は何よりも兄弟が欲しかった。
兄でも姉でも弟でも妹でも誰でもよかった。
1人っ子の1番のメリットは大事にされる事だと思うけど、私の場合はただお母さんに縛りつけられているだけの様に感じていく苦しくてしょうがなかった。
家で一緒に遊んだり、学びあったり、時にはケンカしたり、そんな兄弟がいる人が死ぬほど羨ましいかった。
小さい頃、お父さんにもお母さんにも「妹か弟が欲しいよぉ」と何度もお願いした事あるんだけど、上手くはぐらかされた記憶がある。
なぜ、お金に余裕があるのに私は1人っ子だったのだろう?
家政婦のタエさんもいるのはありがたいけど、普通の家はお母さんが家事をするのが一般的だ。
専業主婦なのに家政婦を雇う意味も全くわからない。
タエさんが忙しく動いている目の前で、くつろいでいる姿を見ていると、本当にムカついてくる。
黒野君の件に関しても普通の親ならあんな事をしないだろう。
“交際を認めてほしい”とまで言わないけど、もっと別の言い方があったと思うんだけどな…。
お父さんは優しいけど、仕事が忙しく、あまりかまってくれない。私としては、そんなにお金なんて稼がなくてもいいからもっと、一緒にいてほしいんだ。
お嬢様学校、高級外車や豪邸、ブランド物、高価なピアノなど私には別に必要ないんだけどなぁ…。
父さんもお母さんは完全に勘違いしている…。
こんな感じで、ない物ねだりかも知れないけど、私は普通でいいんだ…。
最近は、この家にいるとストレスで頭が変になりそうなことがよくある。
よみがえる前より家族関係が悪化しているなんて考えたくもなかった。
せっかくこの世によみがえったのだから、家族みんなでもっと楽しく穏やかに暮らしたい。
ただ、本当にそれだけなんだけどね…。




