第72話 「言っていないこと」
二人は岩の上から焦土を眺めていた。
――まるで、それを待っていたかのように陽が昇り、焦土と化した大地を暖かな陽光が照らす。
長い一日だった。
そういえば、日を跨いで感覚が狂っているが、一昨日の夜はクレハを探していたところだったと、ルーイは不意に思い出した。
「まさか最上位魔術まで使えるなんてな……ホントに何者なんだよ」
「言ったでしょ。ただの学者よ」
「嘘つけ! 最上位魔術ぶっ放す学者がいてたまるか!」
「本当だってば! 今更あんたに嘘なんかつかないわよ!」
「(ジト目)」
「……とは言え、言っていないこともあるわ」
「ほれ見たことか!」
「嘘はついてないわ! ただ言ってないことがあっただけよ!」
「同じようなもんだろ! なんだ……っへ」
「! ルーイ!」
ルーイがよろけたのをクレハが支える。
だが、
「あっ」
「へっ?」
ルーイを支えたはずのクレハも一緒に倒れてしまう。というより、クレハの方がルーイ目掛けて倒れたと言ったほうが正確だろう。
ルーイはさっきまで三途の川に片足を突っ込んでいたし、クレハはクレハで満身創痍もいいところだ。
集中が切れた途端、お互いに力が抜けてしまうのも無理はなかった。
そのまま岩に頭を強かに打ち付けたルーイが、痛みに声をあげる。
「いってぇ!」
「ごめんな……さ……!!」
「いや、今のはオレ……が……?」
――ふにょん――。
倒れ込んだだけで、一体何がどうなったのか。
ルーイの右手がクレハの胸を鷲掴みしていた。
「いや、悪い! 今のは不可抗力で!」
――するっ――。
倒れ込んだだけで、一体何がどうなったのか。
ルーイの左手がクレハのブーツとショートパンツの間を何故かピンポイントで撫でた。
「………………」
「あの……クレハ……さん」
「――――咲き乱――――幾万――の」
「ちょ、ちょっとっと、クレハさん! たんまたんま!」
「――紅の一輪――咲き誇れ」
二輪目の花をルーイが見ることはなかった。




