第61話 夜明けはすぐそこまで
「うおおぉぉぉぉぉるぁぁあぁぁぁぁあ!」
ハスラーの大剣が薙ぎ払われ、ガルムが真っ二つにされた。そのまま大上段からの振り下ろしでもう一頭。逆袈裟に振り抜いて更にもう一頭。
「アンス! そっちに一頭いった!」
「ふん!」
ガルム渾身の突進をアンスは斧で受け止めた。
辺りに鈍い衝撃音が響く中、ジタンが素早くそちらに駆け寄り、確実に首の頸動脈を短刀で切り裂いた。
どす黒い血が雨と降る前に、ジタンはポーンの元へと向かう。
街壁の北東から北側にかけては、死屍累々といった様相だった。
南から順に結果が張られていくので、戦線が少しづつ北側に押し上げられている。
合同部隊も少しづつ北側へと向かっているはずだが、魔獣一頭、魔蟲の一匹でも逃せば街での被害は免れない。
慎重に部隊を北上させなければならず、想定以上に時間がかかっていた。
「お頭! 右でゲス!」
「でぇい!」
ジタンの叫びにハスラーが反応し、大剣を無造作に振り抜いた。
だが、その一太刀はデビルズマンティスの鎌によって防がれる。もう片方の鎌がハスラーの首を刎ねようと振るわれる中、ハスラーは迷わず後ろに跳び回避する。
キチチチ、と鳴き声なのか何なのか分からない不気味な音を発しながら、首を傾げるように複眼をこちらに向けてくる。
大人三人分ほどもあろうかという体躯のデビルズマンティス、その腕にある鎌は非常に鋭く身体能力強化の魔術を施していなければ、腕だろうが胴体だろうが首だろうが、一振りで刈り取られてしまう。
一撃必殺を体現しているかのような、非常に危険な魔蟲だ。
「お頭、大丈夫でゲスか?」
「心配いらねぇ」
「なら、良かった……でゲス!」
ジタンが短刀を振るい、近付いてきたギガホーネットの翅を切り落とす。
空中でバランスが取れなくなった蜂の魔蟲は、そのまま地に落ちる前にアンスが持つ斧の一振りで真っ二つになった。
「さすがに、そろそろ、こっちもキツく、なってきたね」
「ゲスな……これ以上増えられたら保たないかもしれない、でゲス」
「……」
ポーンがガルムの眉間を正確に突いた片手剣を引き抜き、アンスも斧を肩に構える。
ハスラー単身とアンポンタンの三人一組、北側の護りを担う二組だったが、先ほどから明らかに魔物の数が増えてきている。
それはルーイが首尾よく結界を張ってくれていることを意味しているが、その分こちらの負担は増え続けるばかりだ。
「まったく、早く終わらせ、たいね」
「ゲスゲス……」
「……」
三人が愚痴を零す中、未だ勢いの衰えないハスラーが大剣を振り回す。
一度に三頭のガルムが横一文字に切り裂かれるが、もはや何頭いるのかも分からない中では、焼け石に水のようだ。
だが、抜かれるわけにはいかない。
二組は最前線にして最終防衛線と同義の場所を護り続ける。
夜明けはすぐそこまで迫っていた。




