第6話 テンプレ
――ルーイが駆け出し、タリアが後を追う和やかな光景を影から見ている者たちがいた。
腹回りに脂肪をたっぷり蓄えた大男、面長で枯れ木のようにやせ細った細男、ちっこくて目つきがドギツい小男の三人だ。
三人は家屋の影に潜み、鋭い視線を二人に向けている。
「はぁ、お頭もなにをそんなに拘っているんだか」
「そう言うでないでゲス、ポーン」
細男が怠そうに漏らした言葉に、小悪党のような語尾で答えたのは小男だ。大男は微動だにせず二人を視線で追っていた。
「まったく、さっさと済ませてしまえば、後はなんとでも、なるだろうに」
「だーかーらー! それはお頭の望むところじゃねぇでゲス! お頭はもっとこう、スマートで粋な展開を望んでいるのでゲス!」
「それ、どっちも、同じ意味じゃないか」
小言の応酬は続いている。大男は微動だにしない。
「まぁ、話は、分かったけどさ。具体的には、どうするのさ」
「ぐっふっふっ。実はミーには、チミらが考えも及ばないような素晴らしい案があるでゲス」
「ふーん、そう……それならそれで、さっさと終わらせよう」
「言われるまでもねぇでゲス。二人ともちょっと耳を貸すでゲス」
大男がここで初めて動きを見せた。腹回りの脂肪をどっぷりと揺らし、緩慢な動作で小男を見下ろした。
細男と大男は小男に合わせて屈んで耳を寄せる。
それでも小男は若干の背伸びをして、二人の耳元に何やらごにょごにょと素晴らしい案とやらを伝えている。
やがて言いたいことを二人に伝えた小男は、鼻を高々とさせながら言った。
「ミーが読んだ書籍では歴史ある正攻法と書かれていたでゲス! これならバッチリでゲス!」
「それって、やっすい、大衆娯楽小説じゃないの?」
「うるせぇでゲス! さっさとお頭に知らせて準備するでゲス! アンス! 二人の様子は?」
「うぅ……」
アンスと呼ばれた大男は体格に見合った重厚な声でうなる。
声だけ聞けば渋いイケボだが、その声質でのんびり喋るもんだから、慣れないものには聞き辛くて仕方がなかった。
「……いない……」
「は?」
小男の間抜け声を聞いて、細男は手をひらひらさせながら、わざとらしく面倒くさそうにため息を零した。
大男が顔中に汗を浮かべながら続けた。どちらかと言えば、今日は涼しいくらいの天候なのだが、大男は一人だけまるでマラソンを終えた選手のように汗だくだった。
「見失っだ……ジタンが話ず……目を離じだ……ずきに……」
「んなーにをやっとるんでゲス! 追うでゲスよ!」
「はー……どっちに?」
三人が往来に隈なく視線を走らせるも、二人の姿は雑踏に消え見当たらなかった。




