第58話 プイスを守る小悪党三人組
「あーぁ、お頭、またやってるよ」
「ゲスな。後でまた領主様とタリアちゃんに怒られるでゲスよ」
ポーンのぼやきにジタンがやれやれと頭を振った。
ハスラーが魔術を唱える度、暴風が吹き荒れる。暴風が吹き荒れた後には、魔物たちの死骸とともに、見るも無残に荒れ果てた大地が残る。
三人の前には、天変地異が起こっているといっても過言ではない惨状が広がっていた。
「まぁ、実際タリアちゃんの、お頭への評価は、メチャクチャ高い、んだけどね」
「ゲス。ただし、男としての評価、じゃない辺りが泣けてくるんでゲスが」
「そう、だね。けど、今は、放っておこう。その方が街の、ひいてはタリアちゃんの為だし」
「ゲスゲス。あぁなったお頭を止められるのは単身ではルーイくらいしかいないでゲス」
「……おでたち……無力」
「そんなことは、ないさ」
「ゲス! ミーたちもお頭に習って、ミーたちの役目を果たすでゲス!」
三人の前に現れたのはハスラーの猛攻を逃れた一匹のギガホーネットだった。
獅子奮迅の勢いを魅せたハスラーを前に、どうやら尻込みをしていたようだが、目の前の小物たちなら首を取れると踏んだのだろう。
目を向けるアンポンタン。
手にそれぞれ斧、片手剣、短刀を構えていた。
「僕たち、みたいなのって、大体こういう時、舐められがち、だよね」
「それも仕方ないでゲス。というより、お頭とルーイが異常なんでゲス」
「だね。あの二人と、比べられたら確かに、目劣りしちゃう、けど」
ポーンがのんびりと話している隙に、ギガホーネットが突貫してくる。
硬質な針が迫る。狙いはポーンの顔面。そのまま激突するだけで、彼の顔には大きな風穴が空くだろう。
硬質な衝撃音が響いた。
ポーンの眼前にあったのは灰色の壁。――いや、壁ではない。アンスの持つ斧の斧刃だった。
斧刃によって攻撃を防がれたギガホーネットが、その刃を貫通させようと何度も針を穿つ。
だが、その真下。
蜂の身体と地面の間に短刀を構えた小男――ジタンが滑り込んでいた。
「ミーたちを侮ったでゲスな。小悪党三人組の名は、伊達ではないでゲス」
ジタンは目にも留まらぬ――というわけではないが、それなりに素早い動きで、四枚あった翅を切り落とした。
必然、飛翔する空力を奪われ蜂の魔蟲は地に落ちる。落ちた蟲は無い翅をバタつかせ、脚を使って悶える。
そこに細男ポーンが、手に持った片手剣で魔蟲の眉間を真っ直ぐ貫く。
魔蟲は一度だけビクリとその身体を震わせ、その後動かなくなった。
「酷い、よね。僕たちみたいなのは、いつの時代どんな噺の中でも、大抵雑魚扱いの、賑やかし要員でしかないなんて」
「そう言うなでゲス」
「おでたち……弱くない……あの二人が……特別なだけ」
「そう、だね。一人ひとりなら、あの二人には、叶わない。だけど」
「ミーたちが三人一組を組めば、あの二人とも互角以上にやりあえるでゲス!」
「おでたち……弱くない!」
そう言って三人は街壁を背に森を見据える。
森からは「タリアちゃああああん!」「うおおおおお! ルウウウウウウイィィイイイイ!」という
、愛の慟哭とも呪いの咆哮とも呼べそうなハスラーの叫びが聞こえてくる。
「……とりあえず、伝令の仕事も、終わったし」
「ミーたちはお頭が帰ってくるまでこの辺りを見ておくでゲスか」
「……」
プイスを守る小悪党三人組の静かな決意は固い。




