第4話 ドーナツの食べかすのような島
ルーイとタリアの兄妹が住む小さな島の名をプイスという。
まるでドーナツのように丸く真ん中がくり抜かれた大陸ダーナ。
その内海の中心、言わば世界の中心に位置する島――というわけでは勿論なく、大陸の外海南西部の端に食べカスのようにポツンと浮かんでいる、数多くある島の内の一つだ。
昔は希少な魔鉱石の採掘でそれなりに賑わっていた島だったが、当然それら資源は掘り尽くせば枯渇する。
枯渇すれば魔鉱石採掘の仕事を斡旋していた採掘ギルド、引いては王国からの仕事も生活の援助も打ち切られる。
そうなれば当然この島に居ることは無意味だ。
何せこの島はもともと無人島で先住民はおらず、採掘の仕事で移住してきた者しかいない。
――いや、先住民はいる。
魔獣や魔蟲の類、即ち魔物だ。
ともかく仕事で来ていた島で仕事がなくなれば島を離れるのは道理だ。
しかし、短くない期間を島で過ごす内に少なくない数の者たちが〝この島〟に愛着を持ち始めた。
住めば都、とはよく言ったものである。
仕事がなくなっても、援助が打ち切られても、島に愛着を持った者たちは残り続け、この島で暮らしていくために各々が自分に出来る仕事を始めた。
とは言っても、今まで採掘で生計を立てていた者がほとんどだったので、開拓当初は困難を極めていたが、家族同然の付き合いをしていた者ばかりだ。
皆で強力し、助け合っていればどうとでもなった。
そうして開拓を進め、単なる仮設住宅の寄せ集めから数年で一つの集落へ。それから更に数年で一つの村へとなり、また月日が流れ――王国の領土に小さな街が新たに加わった。
島に王国からの税が課されることに最初は反発する者も多かったが、半ば捨てられていたとはいえ王国の領地に無断で住み着くなどもってのほかだ。
島民がしていたことは、対価も支払わず他人様の家の庭で盛大にキャンプをしていたことと変わりない。誰も強く言えるはずがなかった。
当時の陛下は街の代表をそのまま領主に任命し、代々その役割を担っていくことと、以後も変わらずに島で暮らしていくことを許可してくれた。
加えて王都との交易やインフラ構築、結界の手配など様々な支援を行った。
名も無かった島は陛下によりプイスと名付けられ、そのまま街の名前にもなった。魔鉱石が殆ど採れなくなったプイスは、近海で捕れる新鮮な魚介類や島独自の生態系が育む郷土野菜を交易の要とし、島の財源とした。
そして、その名が広がる頃には、島の豊かな自然を目当てとした観光客を迎え入れる小さな観光地としても栄えていく。
結果として、プイスの税収は王国としても無視出来ないほどのものへと成長していき、開拓当時プイスへの支援に難色を示していた財務大臣をはじめとした大臣たちは、陛下の先見の明にただただ感服するしかなかった。
余談だが、後の歴史書には当時の国王ヌァザ=ダ=グーザ=マールス三世陛下の名は、先見の明に優れた為政者として記されている。




