第27話 「依頼人」
「………………」
ルーイは外の様子を伺いながら時折クレハへ目を向ける。
焚き火の横で丸くなって寝ている姿は、まるで血統の良い猫のようだった。
「……どんな事情か知らないが、こんな子が一人で、どうしてこんな辺鄙な場所を目指してるんだか」
「んっ……」
クレハが身悶えしている。
寝苦しいのだろう、硬い地面に枕もなく横になれば当然だ。おまけに焚き火を焚いているとはいえ、少し冷えてきていた。
春先のこの時期、日中はともかく夜はまだまだ冷える日が続いている。
ルーイは平気だったが、女の子には少し肌寒いのかもしれない。
「……やれやれ」
ルーイは自身が羽織っていた外套を脱ぐと、そっとクレハに掛けてやった。
異物感を感じたのか、クレハの顔が少し歪む。
しかし、それもほんの一瞬のことで、その後は穏やかな顔のまま寝に就いていた。
「ったく、世話の掛かる依頼人さんだ」
独りごちるルーイの顔もまた穏やかなものだった――。
――数時間後、クレハが目覚めると自身に掛けられていた外套に驚いていたが、素直に礼を告げ番の交代を申し出た。
幸いにも夜の間も魔物の襲撃は一切なく、姿を見ることもなかった。
昼間あれだけの魔物たちに襲われていたのが、まるで嘘のように思えてしまった。
――二人は十分に身体を休め、ルーイが目を覚ました頃には陽が昇ろうとしてた。
ルーイは過去、幾度も野宿してきた経験があるのだろう。
〝魔女の庭〟であっても、きっちり眠れていたようだったし、クレハもルーイの見張りの番があった安心感からか、思っていたよりもゆっくり休めていたようだった。
「それじゃ、行くか」
「はい」
起きて早々、日の出とともに二人は洞窟を後にした。




