第22話 不自然
デビルゴートから逃げてどれくらいの時間が経っただろうか。
無我夢中で走り続けた森の中、たまたま見付けた洞窟の中を入念にチェックし、危険がないことを確認した上でクレハは束の間の休息を取っていた。
洞窟の中は霧がなく異臭も籠もってなかった。
奥から澄んだ風が吹いてくるので、〝魔女の庭〟の外のどこかと繋がっているのだろう。
数時間ぶりに新鮮な空気が吸え、見た限りでは魔物の巣でもない。
少々、虫が多いのことに目を瞑ればこの洞窟は休息にはもってこいの場所だった。
ここでなら、と中位の治癒魔術を時間を掛けて施したのである程度は傷も癒えたし、痛みも気にならない程度になっていた。
デビルゴート以降、強弱問わず魔物たちと遭遇しなかったのは幸いだった。
やはりこの深い霧と異臭は魔物たちにも作用しており、さっきあの場で見付かったのはたまたま運が悪かったのだろう。
しかし、それ以上に困難な状況でもあった。
無我夢中で走っていたので、もはや自分が地図上のどこにいるのか全く分からなくなっていた。
懐中時計を確認する。
現在時刻は十九時を回ろうとしていた。現在位置を把握出来ていたとしても探索するには遅過ぎる時間だ。
ここから〝封印の祠〟へ向かうも、先ほどの泉に戻るも、一体どれくらいの時間がかかるか、そもそも辿り着けるのかさえも分からない。
転移魔術も念話魔術も霧に遮られて使えない。
そもそもルーイと念話魔術の波長を合わせることすらも怠っていた。それも自分から言い出したことだ。
(ここで野宿するしかないか……朝一番で出ればどっちかには辿り着けるかな)
覚悟を決めたクレハは焚き火を起こす為の枯れ枝や落ち葉を集めるため、一度洞窟から出た。
辺りは酷い有様だった。
見える範囲に転がるのは、腐敗した動植物の成れの果てばかり。
朽ちた巨木からは目も疑うような毒々しい色のキノコが生えている。それらはまだマシでそのキノコすらと生えることを許さないような、腐った巨木も多い。
それらに混じって死んで日が浅い野獣の死骸と今まさに腐りつつある死骸が混じりあっている。
弱肉強食が自然の摂理といえど、この光景はあまりにも地獄絵図だった。
(いくらなんでも、ここまで酷くなるの不自然……)
自身の求めるものが祠にあり、やはり何かが起こっているのだと確信を抱くも、まずは今晩を安全に乗り切らなければならない。
クレハは腐敗していない枯れ枝や落ち葉を一通り集め終えると洞窟に戻った。




