第16話 「なんでもない」
その後も多種多様な魔物たちが二人に襲いかかる。
時に群れで襲いかかり、時に種族問わず同時に襲いかかり、時に前後からの挟み撃ちで襲いかかってきた。
だが、二人はそれらを時に正面からぶつかり、時に群れの側面から奇襲を仕掛け、時に木の陰に隠れてやり過ごした。
ルーイは内心で舌を巻いていた。
同行者の少女、クレハの実力は自分が思っていたものよりも数段高いものだったからだ。
魔術の腕は一級品で下位から中位までの炎熱系の魔術を詠唱破棄で唱える。威力は勿論、驚くべきはその制御力の高さだろう。
得意とするのは炎熱系魔術のようだが、木や草に一切の延焼を起こさず、的確に魔物の肉体のみを焼き尽くしていた。
これがそこいらの魔術師であったならば山火事とまでは言わずとも、木の一本や二本に延焼していてもおかしくはない。
魔術だけでなく大鎌の扱いも大したものだった。
小回りが効かない大鎌を、まるで舞を舞うかの如く、優雅に、可憐に、鮮やかに振るさまには時折見惚れてしまいそうになる。
デビルズマンティスの首を切り落とし、血糊を払ったクレハの姿をルーイは凝視していた。
その視線に気付いたクレハが、何事かと首を傾げながら問う。
「どうかされましたか?」
「……なんでもない」
ルーイは特に何も言わずにまた奥へと進み出した。
視線の意味が分からないクレハは、腑に落ちないものを感じつつも少年の背を追いかけていった。




