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神様の後始末  作者: まるす


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第15話 「住めば都」

「クレハ! そっち行ったぞ!」

「はい! 〝炎鎖(えんさ)〟!」


 クレハの左手に六芒星の魔術方陣が浮かぶ。

 術者の髪色と同じ深紅の魔術方陣から現れた炎の鎖が、飛び掛かってきたガルムに巻き付き、瞬時に炭化させる。

 そのままクレハは鎖を薙ぎ払い、ガルムの群れをまとめて焼き尽くした。


 結界から出て一時間ほど。

 二人は鬱蒼(うっそう)とした森の中を駆けていた。


 ルーイの言葉通り結界の外は魔物が跋扈(ばっこ)する、魔鏡と呼ぶに相応しい場所だった。

 ガルムやアウルベアなどの魔獣が、デビルズマンティスやギガホーネットといった魔蟲が、間髪入れずに襲い掛かってくる。


「下がれ、クレハ! おらぁ!」


 ルーイが炸裂魔石をギガホーネットの群れに向けて投げ付ける。


「〝爆〟!」


 ルーイの魔素(マナ)に反応した炸裂魔石が爆ぜ、ギガホーネットの群れを吹き飛ばした。

 その後ろから新たな群れが現れる。一匹一匹がクレハの頭くらいの大きさの魔蟲が、不協和音を響かせながら群れで迫ってくるさまは、不気味の一言に尽きる。


「ったく! 蜜なんて持ってねぇ、よ!」


 もう一つおまけ、とばかりに更に炸裂魔石を投げ付ける。魔石は魔素(マナ)を込めると、魔蟲の群れと一緒に爆ぜた。


「ルーイ様!」

「グルオオォォオ!」


 魔石を投げたルーイの背後、筋骨隆々のアウルベアが巨腕を振り降ろす。

 だが、アウルベアの腕は空を切るだけだった。


 ルーイ、瞬時に自身の魔力を足に纏わせ退避。

 アウルベアの背後に回り込んだルーイは、逆手に持つサバイバルナイフで急所である頸動脈を断ち切った。

 魔獣特有のどす黒い血が噴き出す。


「ったく。ホントに見境ねぇな、こいつらは」


 ナイフを振り、血糊を払ってから辺りを見回す。


 相変わらず不気味で陰湿な森が続いており、あちこちから魔獣や魔蟲の気配が立ち込めている。

 それらの気配を肌で感じながらルーイは森の奥を見やる。その隣、クレハが大鎌を肩に置きながらふわりと降り立った。


「骨が折れますね」

「まだまだ序の口だぞ」


 ルーイは持ってきたポーションの瓶を開けるとごくごくと一息で飲み干した。

 お世辞にも綺麗とは言えない緑色の液体は、しかし見た目に反して味は悪くない。甘みは少なくスッキリとした味だ。


 クレハもルーイに習って、自身の持ってきたポーションを口に含む。


 街売りの、それもプイスにあるような代物は決して上等な物とは言えなかったが、それでも二人の体力と魔素マナが少しだけ潤う。


「かつてプイスの開拓を行った方々はよくここに居住を構えようと思われましたね」

「住めば都、ってやつだろうな。最初は王国が用意したもっと小さな集落で、魔鉱石を掘る仕事をしてただけらしい。そっから結界の内を少しづつ少しづつ開拓してったって話だから、実際結界の規模は当時から変わってないはずだ。当時も住民たちは結界の中だけで生活してたんだろうし、外でこんだけ魔物がうようよしてるって知ってたんなら、この島で暮らすなんて選択肢は取らなかったのかもしれないな」

「………………」


 クレハが急に黙ったのでルーイは視線を向けた。

 視線を向けられたクレハは何処か意外そうな表情を浮かべていた。


「なんだよ」

「いえ、意外と博識と言いますか。詳しいと思いまして」

「……オレのことどういう風に見てんだよ」

「気を悪くしたのなら申し訳ございません。貴方はそういうことには、あまり興味がないのかと思っておりました」

「特別に興味があるわけじゃねぇけど、これくらいのことは島に住んでたら誰でも知ってることだからな」

「そうですか」


 クレハが薄く笑う。

 まるで弟に向けられるような優しい笑みだったが、ルーイとしてはそれが引っ掛かった。

 

「……何か含んでねぇか」

「いえ、何も。ただタリア様がおっしゃっていた通りの方だと思いまして」

「……あいつ、何か変なこと言ってたんじゃ」

「行きましょうか。ここで立ち話をしていてまた魔物たちに出会しても面倒です」

「あ! てめ!……ったく」


 二人は止めていた足を動かし、昏い森の奥へと足を進めた。

 足取りはまだまだ軽い。

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