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私にはないもの

 逃げ回ってモヤモヤしてしまっている。紗枝はすごかった。だって、魔法だけで何でもできていたらしい…なのに、私は、エルと釣り合うのか?


「紗枝のままでも良かったのに」

 

 後ろからふぁっと花のいい香りがした。私は、みっともないけど、鼻をくんくんとした。


 花の香り?もしかして…ルファー?後ろを振り返ると

「あ、ティナベル様!」

 とへへっとルファーは笑う

「どしたの?」

「花をいけてたらティナベル様が走ってるのを見かけてついできてみました。」

「着いてこなくても」

「暇でしたから花の香りでもさせてようかなって、」

 これは魔法で香るの?すごい…やっぱこの世界は魔法なんだな…10年って長いな…


「ってかそんな魔法上手なのに庭師なんかしなくても」

「いやー、庭仕事好きなだけです」

 好きなこと…?確かにこの世界に来て好きなことしてない…あれ、好きなことって…?

 古典は好きだなあ。その人によって読み取り方が違うし…って私にもできることないかな…?

 私は思いつき、エルのところに戻ることにした。

「ありがとうルファー」

「良かったです」

 とルファーは綺麗にお辞儀をしてくれた。私は小走りでエルのところに戻る。



「エル!」

 私はエルの両手を握る

「えっと、私エルと釣り合うように頑張ってみる。それから、婚約するか破棄するか考えない?」

 エルは1人で首を傾げる

「とりあえず落ち着かない?」


 エルは私の手を重ね

「小さい頃から君が好きなんだ。」

「でも、記憶ないもの!」

 小さい時の記憶は消えてしまっている。

「でも、君だから」

 エルだけそんな思いしてもいいのかな。

「前のティナベルは?好きじゃないの?」

 エルはふぅーとため息をつく。


「ごめんあれはティナじゃないって気がついてたんだ。お互い理解してたんじゃないかな。」

 と窓から外を見る

 外を見るとルファーがせっせと魔法を使いながら庭仕事をしている。

「ルファーだ」

 大事な話をしているのにも関わらず、私は声に出してしまった。

 しまった…と思い口元を手で隠す

 エルは目を大きくして


「君も?」

 と小さく尋ねた。

「えなに?なんて?言った?」

 私は聞きにくかったからエルに近づき、顔近くまで行き背伸びをし耳を近づけた。


「いゃ、え、…」

「何?ちょっ…」

 近さに驚いた。驚いた拍子にバランスを崩してしまい、エルに体を寄せる。

 エルを見るとエルは顔が真っ赤だった私も顔が真っ赤だ。

「ごめんなさい…」

 私は謝りすぐに退いた。

「びっくりしただけ…」

 エルは顔を見せないように腕で隠していた。

 なんだ、ほんとに高校生くらいなんだな…かわいい。と感じてしまった。


 もう少し、婚約者でいたいかも…。頑張ろうと思った。

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