表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

水が記憶していたもの

 その日、俺は八ヶ峰の大学の研究室にいた。


 窓の外は、天気予報を大きく外して大雨が降っていた。


 大学構内は日曜日で学生の姿も見かけない。


 八ヶ峰は、缶コーヒーを俺に差し出して、長い話の結論を述べた。


「・・・つまり、現場となった池の水を、この装置で読み取ったんだ。ひょっとしたら池の水が事件を記憶してたんじゃないかって。そして僕は奴が犯人だと確信を得て、問い詰めたんだ」


 まるで意味がわからん。


「よくわからんが、そんなものが証拠になるのか? よく警察が動いたな」


「ならないよ。 だから僕は警察官やってる五藤(ごとう) 正樹(まさき)くんに、頼んでおいたんだよ。 犯人だと思われる男をおびき出して、揺さぶりをかけるから、近くに潜んでいて欲しいって」


「五藤正樹ってあの!? 中学の時のあいつ!? ・・・警察官になってたのか」


「うん。で、上手くいったの」


「そうか・・・ しかしまだ分からんのだが、その・・・」


「まぁ実際に見てみないと分からないよね。水から取り出した情報は」


 八ヶ峰は近くの冷蔵庫から、500ミリリットルサイズのペットボトルを取り出した。


「これがあの池の水」


 それを例の妙な機械に取り付ける。


「さて、再生してみるよ」


 謎の機械に繋がれたノートパソコンの画面に、動画が再生される。


 池のほとりを歩く女性・・・ 壱山始。


 そこに男が現れる。 今回の事件の犯人だった男だ。


 2人は口論しているようだ。いや、男が一方的に詰め寄ってる。


 そして始はナイフで刺された。


 男は血で汚れたナイフを思いっきり投げて池に捨てた。


 そして逃走。 画面には、始の死体が残される。


 ザッ・・・ ザザッ・・・


 画面にノイズが走る。そして、始の死体が立ち上がった。


「えっ!?」


 いったい何なんだこれは? まるでホラー映画でも見ているようだ。


『久しぶりね、七森くん。 私はコレを八ヶ峰くんに見せたの』


 画面の中の彼女が、俺に語りかける。


「なんだよこれ・・・ 何がどうなってるんだ?」


「怖がることは無いよ。彼女の記憶が、いや霊魂ともいえるものが、池の水に記録されていたんだ。そして僕の装置は、それを再生できたんだ!」


 俺は唖然として画面を見つめる。


「ありえない・・・そんなことが・・・」


「いや、水はすべてを知っていたんだ。 いままで人間はそれを認識できなかった。 でも僕のマシンを使えば、人は水を通して死者とも会えるようになるんだ!!」


俺は白昼夢を見ているのだろうか?


目の前で起こっていることが、夢か現実か、認識できなくなりつつあった。


俺はフラフラと研究室から出て行った。


「おい! 七森くん! どこに行くんだ?」


俺はその場から逃げた。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

高評価★★★★★ コメント、たいへん励みになります。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ