葬式は再会の場
俺の名は七森。 しょぼい出版社でマイナーな雑誌の記者と編集者を兼任する、しょぼいジャーナリストだ。
しょぼい本屋で自分の書いた記事のある雑誌を買い、それをまたしょぼい喫茶店で読んで、「なんで俺こんなつまんない記事書いたんだろ」という反省未満なほろ苦い思いをコーヒーとともに飲み込んだ時だった。
俺のスマホが鳴る。 母からだ。
「はい、もしもし? どうした? えっ・・・ そうか、じゃあ・・・ そっちに一度帰ってから、出席するよ・・・」
親から幼馴染の訃報を受け取った。
地元に帰省する形で、俺は幼馴染の葬式に出席した。
そこで俺は、また別な幼馴染の友人と再開した。
「七森くん? 久しぶり! ・・・雰囲気変わったね」
「そういう八ヶ峰は昔から雰囲気変わんねぇな」
「そっかな? う~ん、やっぱり僕は子供っぽいままかなぁ」
「でも安心感あるよ。変わらないって」
「始ちゃんとも・・・ こういう会話したかったね・・・」
「あぁ、そうだな・・・」
壱山 始。遺影のなかで彼女は微笑んでいた。
だいぶ大人びてはいたが、昔の面影は残っていた。
彼女は八ヶ峰と同じく俺の幼馴染だった。
それこそ幼稚園の頃からの知り合いではあったが、俺と彼女は距離が近すぎて、姉妹のような親戚のような感覚というか、俺たちは友達ではあっても恋人になりたいという感覚は無かった。
だが八ヶ峰は違ったようだ。2人は一時期付き合っていた。
中学の頃、壱山と八ヶ峰がデートしているのを、近所のショッピングモールで見かけたとき、ちょっと驚いたこともあったな。
そして高校卒業してから2人は進路の違いから疎遠となり、自然消滅的に別れたようだ。
子供の頃とはいえ、元カノの死には八ヶ峰も思う所があったのだろう。
そんな彼女は何者かに殺された。
犯人はまだ捕まっていない。
泣いてる遺族の顔を遠目に見ながら、俺たちは世間話をする。
「七森くんは、今何してるの? いまも食品メーカーの営業?」
「それはもう辞めたよ。いまはしょぼい出版社でマイナーな雑誌の記事書いてる」
「へぇ、なんて雑誌?」
「月刊ライフハック日和」
「・・・ごめん、知らない」
「だろうな。 そういえばお前、なんか大学で研究してるんだって? 親から聞いたんだけど」
「そう、もう少しで成果が出そうなんだけど、ちょっと行き詰まってるかな。成功したら大発明なんだけど・・・」
「なにそれ。こんど取材に行っていいか?」
「いいよ」
思わぬところで、俺は雑誌の隙間を埋められそうなネタを見つけた。
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