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1 プロローグ 死に戻りとループ

悪役令嬢とヒロインが交互に死に戻りとループさせられていることに気づきタッグを組んで、生きて幸せになるために行動していく話になる予定です。

どうぞよろしくお願いします。

 ミリアムが跪く私の耳元に屈んで囁いた。

「シャーリー、今回は私の勝ちよ」


 今回? 勝ち?

 何を言っているのだろう。聞き返したくても言葉を発せられないように口に紐を噛ませられていて「うう……、ぐぅ、うぁ……」ぐらいしか声が出せない。


 後ろ手にくくられていた縄を乱暴に引っ張り上げられる。

 連れて行かれる先に処刑のための……。絶望が見える。


 私は身体を捻って、振り返った。

 ミリアムが微笑んで軽く手を胸の辺りで振っている。

『バイバイ』唇の動き。

 そして、大げさによろめいて見せるとミリアムの後ろにいたダグラスの胸に縋るように抱きつく。

 いつもの可憐で守ってあげたくなるような女らしい伯爵令嬢の姿だった。


 私は頭をつかまれ、穴に頭を押し込められ身体を固定される。


 何で……、何で……、こんなことに!?


 ミリアムは私の親友で、ダグラスと私の婚約を祝ってくれてたんじゃないの!?


 縄が切られる音、刃が滑りながら落ちてくる音。


『許さない!!』と心の中で力の限り叫んだ。




   ◇ ◇ ◇




 シャーリーが立っている。牢の外で私を見下ろしている。

 牢の中で傷だらけになり、息も絶ええになっている私を見下ろしている。冷たい目。

「私にしたことを思い知らせることができたかしら……。

 その気持ちだけで私は……。そのまま苦しんで死になさい」


 私があなたにしたこと?


「シャーリー、行くよ」

 牢の階段の方からダグラスの声が響いた。


「はい! ミリアムとお別れの時間を頂き、ありがとう……」

 悲しそうな声なのに、私を見下ろすその目は冷たい。


 シャーリーが立ち去り、階段上のドアが閉まる音がして、静かになる……。


 シャーリーは上品で冷静な公爵令嬢なのに、実は剣の稽古が大好きでそのギャップが魅力的な私の親友で……、ダグラスは婚約者だった……。

 身体中が痛い。そして石の床は冷たく硬く、私の身体は寒くて震えている。

 紫のきれいな瞳が瞬きをした。私と一瞬だけ目が合い、消えた。

 

 震えがおさまってきた……、ああ、もう身体が動かないんだ……。

 感覚もなくなってきた……。

 無に全てが飲み込まれる直前。


『許さない……、絶対に!!』と心の中で最後の力を振り絞って叫んだ。




   ◇ ◇ ◇




 気が付いたら私はベッドの上に寝ていた。

 あわてて自分の身体を確かめる。


 ん、死んで……ない!?


 ベッドの上に起き上がると、そこは私の部屋。

 ドアがノックされ、メイドが顔を覗かせる。


「お嬢様! 目覚められたのですね!

 お疲れだったようで、王城からお帰りになるなり、ベッドで横になられたので……。

 ご気分はどうですか?」


 マナ……、私が捕らえられた時、私を庇おうとして騎士に斬られていた……。


 王城?


 私は曖昧に微笑んだ。


「王城で何があったんだっけ?」

「あまり気が進まないと話されてましたけど……、ダグラス王子のお茶会だったではないですか!」


 あ……、3年前?

 じゃあ、私は16歳?

 

 私は18歳の時、あれ、処刑……、いや、ミリアムを牢に置き去りに……?


「どうかしましたか、お嬢様?」


 私は何とか微笑むと「大丈夫!」と答えた。


 その時、頭の中で『大丈夫!』と同じ言葉が違う声で響いた。


 あ?  

 あれ? こんな感じが何回かあった気がする……。

 私は死に戻って、ミリアムに復讐したはず……。


 ミリアムの声?


 私の頭の中にこれまでくり返してきた、様々な記憶が溢れるように流れ出した。

 私の記憶ではないものもあって……、これはミリアムの?


 その時、今、ミリアムも同じことを体験しているのでは!? という感覚があった。


 私は膨大なふたりの死に戻りとループと復讐と死のくり返しの記憶に圧倒されて、またベッドに倒れ込んだ。


 そして、気がついた。

 私達は戦わせられている。何かに、何者かに。




   ◇ ◇ ◇




 私はシャーリーとダグラスに牢の中に置き去りにされて死んだと思ったのに、自分のベッドの上にいた。


 しかも3年前の15歳に戻っている。

 メイドのアンと戸惑いながら話をしていたら、王城のお茶会の後のようだ。

 心配してくれたアンを安心させようと自分の発した「大丈夫!」という言葉が他人の声のように聞こえた。


 この声……、シャーリー!?


 脳裏に捕らえられて縛られているシャーリーに近づいて『今回は私の勝ちよ』と囁いた記憶が蘇る。

 これは今回の死に戻りの記憶ではないわ!!


 その時。私の頭の中にこれまでくり返してきたらしい様々な記憶が溢れるように流れ出した。


 私の記憶ではないものも混じっていて……。

 これはシャーリーの記憶では?


 その時、シャーリーもこれを、今、体験しているのではと、ふと思った。


 何故か、ずっとくり返しているのだ。

 私達はお互いに死に戻り、記憶の無い相手に復讐し、ループして復讐される……。


 何故? 何でこんなことを……、させられている!?

読んで頂きありがとうございます。

凄惨なスタートですが、ここから周囲を巻き込んでふたりのヒロインの戦いが始まります。

それは楽しいものだといいなと思っています。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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