閑話 チョーの現実
「チョージ様!本家ではやはり税率を上げる方向で動いているようです。国民の反感を買うだけなのに、なぜわからないのでしょうか?」
「うーん。それはなぁ、自分が選ばれた人間だと思っているからだ」
「冗談でしょう?」
俺の部下は口を引きつらせてそう言う。そうだよな、俺も本家の連中が選ばれた人間だとは思わない。俺も選ばれた人間ではないが、国民を蔑ろにするようでは、もう国王として終わったな…と思う。
「仕方ないな…。気が進まないがここは一つクーデターを起こすとするか?クーデターというか、下剋上か?」
「チョージ様、流石で御座います。私どもはどこまでもチョージ様について行く所存です!」
それはちょっと…。鬱陶しいかな?
俺はその旨を楓と産まれた俺の息子(5才)コウジに告げた。
「うちは傍流だったから、黙って生活をしてきたけど。どうやら本家が国民への税率を上げるらしい。これ以上、税率を上げては国民の反感を買ってしまい、国民が居なくなるということも考えられる。それは避けたい。そこで、うちは傍流だけども本家に下剋上してしまおうと思う」
「チョージ様、どこまでもお供致します。この楓、腕は衰えておりません!鍛錬も毎日のようにしておりました!」
「流石は父上ですね。下剋上には当然ですが僕も参加いたします。これでも母上と鍛錬を日々重ねて並みの兵士よりも動けると思います」
頼もしいな。二人とも。
俺は喰櫻霞を携えて、戦場となる本家の方へと歩みを進めた。
本家の連中は本当に税率を上げるつもりなのか?
本家に着いてわかった。別に食べるのに困っているわけではない。どこもかしこも豪華絢爛。和室にシャンデリア?和洋折衷もセンスが問われる。
本家の連中はどうやら浪費癖があるようだ。これはまずい。お金は湧いてくるものではない。
話し合いと思ったが、「たかが傍流の人間」と門前払いをされた。
話し合いで解決ができれば良かったんだが、これはやむを得ない…。
俺は家に帰り本家の状態を伝え、翌日に出陣することとした。
本家の連中は堕落し、堕ちるところまで堕ち、俺の家の者に全く歯が立たなかった。
「僕もやる気だったのに、出番がなかった…」
と、コウジが不満を言う。
「コウジが戦場にいる方が私は心配よ?」
俺もなんだが。まぁ、いい。
下剋上は成功して、俺の家が本家となった。
「コウジ!お前が本家を継いでいくんだ。本家の王子だな。各種勉学などをするんだぞ」
「あら、私は王妃?」
「楓が王妃で俺が国王だ。俺も知らないことはどんどん学んでいく。そうしなければならない。国のトップとはそういうものだ」
「あら、それじゃあ久しぶりにアンペール王子に連絡をとって国王の何たるかを教えてもらうのがいいかもしれないわね」
「なんとなく癪だがそうだな…」
このようにアワレちゃんを使うこともなく下剋上は幕を下ろした。
アワレちゃんが哀れ……。活躍したかったのにというのはコウジ(チョーの息子)もか……。