3.ミンテ・ナード
「んん…むにゃむにゃ、父さん…… ハッ!! 夢か…」
気づけばベッドの上にいた。
(そういえばあの時フォートンベアーっていう熊に襲われて、でっけぇ人に助けられたんだっけ)
「きゅっ!きゅっ!」
「うわぁ!」
そう考えているとハム郎が顔に引っ付いてきた。
「きゅ!」
「なんだよ、くすぐったいぞハム郎 ははは ハム郎も心配してくれたのか?」
「きゅっきゅ!」
そうやってしばらくハム郎と戯れていると
コンコン
「入るぞー、おっ起きていたか!体で変に感じる所はないか?」
俺を助けてくれた大男が入ってきた
「はい!大丈夫です。助けてもらってありがとうございます。」
「おう!その年で感謝を伝えられるとはいい男になれるぞ!ワッハッハッハ!」
俺を助けてくれたでけぇ人は俺の頭をくしゃくしゃと撫でながら高らかに笑った。
「おっとまだ名乗ってなかったな。俺はミンテ・ナードってんだよろしくな」ニッ!と太陽のように明るく笑った
「お前さんはなんて名前なんだ?」
「時満 光っていいます。」
「トキミツ ヒカル?このへんじゃかなり珍しい名前だな。だがあの森の中で生きて助けられて良かった。あの森はフォートンベアー以外にも多くの危険なモンスターがうようよいる。ヒカル、お前さんはかなり運が良かったということだな」
「そうなんですね、そんな所とは知りませんでした」
「そうか、そういやお前さんは何であんなところにいたんだ?見た感じこの村の子どもでもなさそうだしな」
これはなんて答えたらいいんだろうか。
俺の見てきたねろうのネット小説の中では転生や転移してきたことを話すと捕らえられたり、大変なことになるようなことがあった。
ここは本当のことは言わないようにしよう。
「えっと…俺も良くわからなくて…気づいたら森の中って感じで、森の中を歩いていたらハム郎に出会ったって感じです」
「きゅ!」
「そうか、きみはハム郎というのか。かわいいな!」
2mの大男に持ち上げられたハム郎は非常に小さく見えた
「きゅきゅ!」
持ち上げられるのはいやらしく、ハム郎はナードの手からすり抜けた
「おっといやだったかな…まぁ、これまで大変で不安だっただろう。その年であの森に一人でいたら恐ろしいことだ。ちなみにヒカルが一緒にもっていたその剣はどうしたんだ?」
「えっとそれは森の中に台座があって、そこに剣が刺してあったんですが、その剣を持ってきました」
「なに!!??となるとその剣は…」
そういうとナードはベッドに立てかけてあった剣を手に持ち、まじまじと見ながら何やら「本当なのか…」とブツブツとしばらく言っていた。
「あのー…」
「ん!?なんだ?」
「えっと、その剣に何かあったんですか?」
「ん!?いや、なんでもない!」
(どう見ても何かありそうだけどな…)
「ただ、その話は誰かに聞かれても一切話しをするな、お前さんの命に関わることだ。これは絶対だぞ」
まるで何かを射抜くような真剣な表情でナードはそういった
「は、はい!分かりました」
とにかくこの話しは他の人には絶対にしないほうがいいようだ…
2mの大男に真剣に言われるのはたかなりの迫力だった。
「そうだな…よし!もうお昼時だからヒカルもお腹がすいただろう!私の家族と食事をとらないかい?良かったら私の家族も紹介させてほしい」
そう言われれば、昨日は急にこの世界に来たことで緊張もあってあんまり意識していなかったが、色々なことがあって結局一食も食べずにいたせいで、かなりお腹がすいていることに気づいた
「はい!お願いします」
「おうわかった!じゃあ準備するからちょっと待ってろ!」
「はい!」
そういってナードは部屋を立ち去って行った。
「ふぅ…緊張した」
小学校に不登校になってあまり人と接してなかったこともあってかあんなに話すのは久ぶりのことだった。
ハム郎と戯れながら時間を過ごしていると
「ヒカル入るぞ~」
と声がしてドアが開き、ナードが入ってきた
「ヒカルご飯の準備ができたぞ!行こうか」
「はい!」
そういって、部屋から少し歩いてリビングのようなところに行くとナード以外に3人いた。
一人はおそらくナードの奥さんでとても美人な人でご飯の盛り付けをしていた。
残りの二人は俺よりも一回り小さい男の子と女の子でわいわいと食事の盛り付けを手伝っていた。
「クリスティ、昨日話していた森でフォートンベアーに襲われそうになっていた子どもだ、ついさっき起きてきたからご飯を食べさせてやりたいんだ」
「ふふ、もちろん準備していますよ」
「ありがとうクリスティ。アインハルトとトレシアも盛り付けができたらイスに座りなさい」
「「はーい!お父さん!」」
アインハルトとトレシアと呼ばれた子たちはナードに呼ばれて嬉しそうに返事をする。
そうやって、食事が準備され全員が席についた。
「改めて、みんなに紹介したい。この子はヒカルという色々な事情があって昨日森の中にいてフォートンベアーに襲われそうになっていたところを助けてあげた。特にアインハルトとトレシアはヒカルと仲良くしてあげて欲しい」
「「はーい!!」」
「俺はミンテ・アインハルトだ!よろしくな!」
「私はミンテ・トレシアよ!よろしくね!」
「よ、よろしく」
「ヒカルも自己紹介してくれ」
「はい、時満 光といいます。よろしくお願いします。」
「ヒカルヒカル!お前剣を振るの好きか!?ご飯の後一緒に騎士ごっこしようぜ!」
「兄ちゃんずるい!!ヒカル!私と一緒に村を回ってみない!?いろんなものやいろんな人がいて面白いよ!!」
「おい!ヒカルを取るな!」
「兄ちゃんもヒカル!を独り占めしようとしてるじゃん!」
「なんだと~!」
そういうとアインハルトとトレシアは取っ組み合いを始めてしまう。
俺は二人の元気のいっぱいの言動に驚いて、ぽかーんと見つめていた
そうすると、ナードが席を立ち
「コラ!」
ゴツン!
二人は父のゲンコツをくらい、漫画みたいなたんこぶを作って涙目になっていた
「食事の時間だぞ!ヒカルとは二人で遊びなさい!」
「「はぁーい」」
光はすごい元気でフレンドリーな子たちだなと思った。
二人をちょっと羨ましくも思った。
「すまんなヒカル、この村にはあまり子どもがいなくて遊び相手が少なくてな、昨日から二人はヒカルと遊べないかうずうずしてたんだ」
「そうなんですね」
そうしてなんやかんやしながら、時々笑い声が上がり、笑顔があふれるにぎやかで楽しい食事の時間が過ぎていった。
初めて会った家族の中での食事で最初は緊張したが、
そこには温かな家族があって、温かい会話があって、とても心が温まる時間だった
(こんな家族だったらな…)
転移前を思い出してヒカルはそう思った。
そうしてヒカルが村に来て3年の時がたった。




