黒の少年がとにかく愛おしい
隣国にしばらく滞在して、リュック殿下との再会を喜び楽しく過ごした。そして今から公爵邸にクロヴィス様の転移魔法で帰る。
「リュック殿下、お会い出来て嬉しかったです!またお会い出来るのを楽しみにしていますね!」
「うん、アリスティア。俺も楽しみにしてる」
「リュック殿下、ご無理はなさらず休養もきちんと取ってくださいね」
「ありがとう、クロヴィス。気をつける」
「リュック殿下、また一緒に遊びましょう!」
「次に会う時にはチェスで勝負しようか。ポーカーで負けたのまだ悔しい」
リュック殿下と別れを惜しみつつ、転移魔法で帰った。
「ただいまー」
「おかえりなさいませ」
使用人達が頭を下げて出迎えてくれる。
「じゃあ、お兄様。僕お勉強してくるね!」
「ああ、偉いな。頑張れ」
「頑張りまーす!」
シエルが勉強に行く。
「今日までの分の執務は終わらせてある。予定もないし、アリスと一緒に過ごしたいんだがいいか?」
「はい、クロヴィス様!」
「じゃあ、私の部屋に行こうか」
「はい!」
私の部屋に入ると、ベッドの上に座ってアリスを呼ぶ。
「おいで、アリス」
「はい!」
私の足の間に入ってラッコさん座りをするアリス。後ろから抱きしめると、アリスの温度が伝わって気持ちいい。
「えへへ。なんだかカップルって感じでいいですね、これ」
「可愛い…そうだな、カップルって感じだな」
可愛いことを言って照れ笑いするアリス。煩悩に負けないように、アリスをさらにぎゅっと抱きしめる。
「あの、クロヴィス様」
「どうした?」
「クロヴィス様って、僕のどこが好き?」
少し驚いた。アリスがそんなことを聞くなんて思っていなくて、嬉しく思う。珍しく積極的なアリスに、頬が緩むのがわかる。たくさん想いを伝えようと決めた。
「…そうだな。アリスがアリスだから好きだ。どこが好きというより、存在自体を愛してる」
「はうっ」
私はアリスの存在自体を全肯定しているので、それを伝える。アリスは、呪われた黒と言われていたからか自己評価が低い。けれど、本当のアリスは誰からも愛される優しい子だ。少なくとも私はそう思う。それが少しでも伝わればいい。
「だが、敢えて好きなところを挙げるなら…ちょっと長くなるかもしれない」
「え」
好きなところが多過ぎるから。
「まずは、見た目から。その漆黒の髪は艶やかで美しい。紫の瞳と合わせて、神秘的でとても魅惑的だ」
「そ、そうかな。ありがとう」
嬉しそうな顔をするアリス。まだまだこれからだぞ?
「白い肌も綺麗だ。その頬が紅潮するのを見るのも好きだ。目もぱっちりしていて可愛らしいな。まつげ長いのも可愛い。綺麗な二重も素敵だな」
「え、あの」
たくさん褒められて戸惑うアリス。だが、もっと好きなところがたくさんある。
「ぷっくりした唇も好きだ。それと、手も素敵だな。働き者の手だ」
「あ、ありがとうございます…!」
「内面ももちろん好きだ。優しくて、ちょっと気弱で、繊細で。すぐに泣くけど、その分喜怒哀楽がはっきりしていて見ていて面白い。悪意が全く見えないし、一緒にいてとても穏やかな気持ちになる」
「そ、そうかな…?」
どれだけ愛してるか、少しは伝わっただろうか?
「一緒に過ごせるだけで、こんなに幸せだ」
「ぼ、僕もクロヴィス様と過ごせて幸せです…」
真っ赤なアリスが可愛くて、少し意地悪したくなる。
「じゃあ、次はアリスの番だな」
「え」
「私のどこが好きなんだ?」
アリスは真っ赤なまま答える。
「その…クロヴィス様は、とっても優しくて、僕のことを大切にしてくれる。声がとっても透き通っていて綺麗で、頭を撫でてくれる手も好き」
「うん」
「呪われた黒の僕をこんなに大切にしてくれて、愛情をたくさんくれた。一緒にいるだけで安心感がすごい。それに、今みたいにぎゅっと抱きしめてくれる時のこの温もりも、力の強さも、何もかもが僕を癒してくれる」
「そうか…アリス。呪われた黒なんて関係ない。アリスを誰よりも愛してる」
「ふふ、ありがとうございます」
やはり呪われた黒であることが、アリスを苦しめているらしい。私は気にしていないんだが。この想いが伝わればいいと、アリスを抱きしめる力をさらに強くする。
「あとは…僕も、クロヴィス様がクロヴィス様だから好き。たとえ他の人から愛されても、きっとクロヴィス様ほど大好きにはならなかったんじゃないかな」
「アリス…!」
アリスの気持ちが嬉しい。ラッコさん座りのまま、アリスに顔を寄せる。アリスが身体を少し捻ってこちらに振り返る。頬にキスをした。
「アリス、キスしていいか?」
「は、はい!」
おでこに、頬に、まぶたに、鼻先に、耳にも。たくさんキスを落とす。
「アリス…」
「クロヴィス様…」
熱っぽい瞳でこちらを見るアリス。
「…アリスと出会えてよかった」
私の口からぽろっと溢れた言葉に、アリスはすごく幸せそうな顔をした。
「僕こそ、クロヴィス様と出会えてよかったです」
「相思相愛、だな」
「えへへ、そうですね!」
可愛い。可愛すぎて意地悪したくなる。
「なあ、アリス」
「はい、クロヴィス様」
「アリスからはキスをしてくれないのか?」
「えっ」
「してくれたら嬉しい」
アリスは真っ赤な顔で受け入れてくれた。
「う、うん…!じゃあ、そっち向いていいですか?」
「ああ。おいで」
アリスが私に背中を預ける体勢だったのを、アリスがこちらを向いて対面で座る。
「…キス、しますね」
「ああ」
目を閉じて待つ私のおでこにキスをするアリス。
「…ど、どうかな」
「嬉しい。もっとして欲しい」
「うん…」
私がしたように、まぶたに、頬に、鼻先にキスをするアリス。なんだかすごく満たされる。もっとして欲しい。
「もっと」
耳や耳たぶ、首筋にもキスをしてくれる。アリスはすごく甘い香りがして、それを意識すると心臓がうるさくなる。
「アリス…」
「クロヴィス様…」
私の手をとるアリス。いきなり左手を掴まれて私はきょとんとする。アリスはそんな私の手のひらや手の甲にもキスを落として、私達の愛の証である結婚指輪にもキスをした。何故かすごく煽情的だ。
「…アリス、煽ってるのか?」
「…?何がですか?」
「なんでもない」
こうして私達は、今日も愛を確かめ合った。




