マリスビリーは僕の親友
マリスビリーは坊ちゃん大好きっ子
持ってきた荷物だけをマリスビリーに運んでもらって、公爵家での生活が始まった。いやぁ、田舎の爺ちゃん家も広かったけど、ここはさらに広くて煌びやかだ。気後れしそう。
「坊ちゃん…マリスビリーはとても緊張しています…!」
「マリスビリー、大丈夫だよ。僕も緊張して心臓ばくばく。ほら」
マリスビリーの手を自分の胸に持っていく。するとマリスビリーは困った顔をした。
「本当にばくばくしてますね…俺ばかり弱音を吐いてすみません…」
「いいよいいよ!マリスビリーはそんなこと気にする必要ない!」
マリスビリーのこういう気にしいなところも、大好きだよ。
「それよりもマリスビリー。クロヴィス様、素敵だったね」
「そうですね。俺は、俺は…」
「ん?」
「坊ちゃんの黒を、綺麗だと仰ってくださった彼の方が…本当に神々しく見えました」
「そこまで!?」
マリスビリーはたまにぶっ飛んでる。そこも好きだけど。
「だって、昔から俺の夢は…坊ちゃんの幸せな結婚でしたから。坊ちゃんの小さな頃から、俺も小さかったのに孤児だからと大旦那様に雇って頂いて、坊ちゃんにお仕えして…坊ちゃんの良いところ、俺はたくさん知ってます。坊ちゃんには誰よりも幸せになって欲しいです」
マリスビリーは緊張しいで、気にしいで、気がちっちゃくて。でも、誰よりも人の幸せを願える強さがある。マリスビリーがいれば、僕は幸せでいられる気がする。
「マリスビリー、ありがとう。こんなに大切にしてもらって、僕は幸せだよ」
「坊ちゃん…っ!」
ちょっとマリスビリーの想いに感動しすぎて、公爵家だってこと忘れてた。だから、使用人たちがこぞってそんなマリスビリーと僕の会話を聞いていたのに全然気付かなかった。
「アリスティア様、なんか良いなぁ」
「呪われた黒を持つし、男性だけど…可愛いわよね」
「あの茶髪にブラウンの目の使用人との信頼関係も良いよな」
「男性なのがネックだけど、見た目どうみても女の子だしな」
「なんか癒されるしいいわよねー」
あとでこんな会話があったと聞いた。ちょっと恥ずかしいな。でも、そのおかげで僕もマリスビリーも受け入れられたんだから感謝だね。
「坊ちゃん。今日はもうお風呂に入って寝るだけですので、明日から同棲生活本番ですね!」
「やっぱり緊張するねー。でも楽しみだな」
「楽しみですか?」
「推し活始めるんだー」
「推し活ですか!?誰の!?」
マリスビリーは何を当たり前のことを聞いてるんだろう。
「クロヴィス様の」
「えー!?」
今日のマリスビリーは元気だね。そんなマリスビリーも好きだよ。
マリスビリーは孤児で幼い頃からアリスティアに仕えてる