黒の少年との婚姻に向けて動き出す
クロヴィス、ツーショットの絵に喜ぶ。
「それではお姉様、気をつけて帰ってくださいね」
「転移魔法使うんだから気をつけても何もないわよ。じゃあ、元気でね。アリスティアの幸せを心から願っているわ」
「はい、お姉様!」
義姉上とオベール様はあの後数日間泊まっていってくれて、アリスはとても楽しそうだった。そして今日、お別れだ。アリスは義姉上にそっと抱きしめられる。アリスもぎゅっと抱きしめ返して、離れた。
「オベール様、お姉様をよろしくお願いします」
「ええ、お任せください」
「義姉上、オベール様、お元気で」
「ええ、弟をよろしくお願いしますね」
「数日間、クロヴィス様とアリスティア様のラブラブ振りを眺めるのは楽しかったです」
オベール様が私とアリスをからかう。私は照れて、アリスは真っ赤になっていた。
「義姉上とオベール様も充分見せつけてくれたと思いますが?」
「だってダーリンのこと、愛していますもの」
「ふふ、そういうことです」
オベール様と義姉上は、余裕の表情。
「アナイスお姉ちゃんもオベールお兄ちゃんも、また遊びに来てね」
「ええ、もちろんです」
「もしよろしければ、いつかこちらにも遊びにいらしてくださいね」
「いいの!?やったー!」
無邪気なシエルにみんなで癒される。
「じゃあ、そろそろ本当に帰るわ。またね」
「はい、また!」
そして義姉上はオベール様と共に転移魔法で帰っていった。
「数日間賑やかだったから、少し寂しくなるな」
「そうですね、クロヴィス様」
「アリスティアお兄ちゃん、僕がいるから寂しくないよ」
シエルがぎゅっとアリスに抱きつく。
「うん。ありがとう、シエル様」
アリスがシエルの頭を撫でれば、満足気な笑顔を浮かべた。
「…アリス」
「はい、クロヴィス様」
これから私は一世一代の大勝負に出る。プロポーズだ。庭だから景色もいいし、想いも通じ合ったので良いタイミングじゃないだろうか。というかあんまりタイミングを待つ気もない。押せ押せ作戦継続中だ。その時ちょうど強い風が吹いて庭のバラの花びらが舞った。
「わっ…!」
バラの花びらが舞うのに目を奪われたアリス。その間に跪いた。
「え、クロヴィス様…!?」
「アリス、私と結婚して欲しい」
「…っ!」
私は小さな箱に入った指輪を差し出した。感極まり今にも泣き出しそうで、何も言えずコクコクと頷くだけのアリスの左手をとって薬指にはめる。
「結婚指輪だ。サイズもぴったりだな」
「えっと、クロヴィス様…これ…」
「義姉上達の滞在中に注文しておいた。私とアリスのイニシャルも内側に入ってる。気に入ったか?」
「はい、とっても…!」
悩みに悩んで選び抜いた結婚指輪はシンプルなデザインで、アリスの好みに合わせたものだった。
「クロヴィス様…僕、僕ぅ…」
感動からか涙が溢れるアリス。
「アリス」
私は立ち上がってアリスを抱きしめた。
「幸せです、クロヴィス様ぁっ!」
「私もそんなに喜んでもらえてとても幸せだ」
「一生一緒に居させてくださいー!」
「もちろんだ。むしろこちらからお願いする」
こんな言葉を貰えるなんて、私は幸せ者だな。
「よかったね、アリスティアお兄ちゃん!」
「シエル様、ありがとう…!」
空気を読んで黙っていたらしいシエルからも祝福される。
「僕、こんなに幸せでいいのかな…」
「これからもっと幸せにするから心配ない」
アリスには笑顔が似合うから。
「…えへへ。じゃあ、クロヴィス様は僕がたくさん幸せにしますね」
にっこり笑ってそう言われた。思わず抱きしめる力を強めた。
「私の婚約者はなんでこう…可愛いんだ」
「え」
「アリス」
名前を呼んでおでこにキスをする。アリスの涙も引っ込んだ。
「クロヴィス様…」
「いつまでもこうしていたいが、そろそろ屋敷に戻ろうか」
「はい!」
アリスの涙をハンカチで拭いてから離れる。少し寂しい。
屋敷に入ると、途端にパーンという破裂音。そして大量の紙吹雪が舞う。クラッカーだ。突然のことにびっくりする。
「ご当主様、アリスティア様、おめでとうございます!」
使用人達が、私とアリスを祝福してくれた。
「ちょっとお祝いが遅くなってしまいましたが、本当におめでとうございます!我々使用人一同、心からアリスティア様に感謝を申し上げます!」
「ご当主様も、想いが通じて本当におめでとうございます!ご当主様のアリスティア様への一途な想いが実って本当によかったです!」
使用人達が、総出で口々にお祝いの言葉をくれる。その光景に、またもアリスの涙腺は緩む。
「みんなぁ…ありがとう…」
「アリスティア様こそ、ご当主様をいつも大事にしてくださってありがとうございます!我々使用人一同、アリスティア様を敬愛しております!」
「…幸せ過ぎるぅ」
ポロポロ涙が溢れるアリス。そんなアリスを優しく見守る。アリスはマリスビリーにハンカチを渡されて涙を拭うが、それでも涙が止まらない。
「それと、ご当主様とアリスティア様の薬指に光るモノがあるということはいよいよ本格的に結婚を考えていらっしゃるのですよね!お祝いが追いつかないです!おめでとうございます!」
「おめでとうございます!今日のお夕飯は特別豪華に致しましょう!」
「わーい!」
シエルが豪華なお夕飯を楽しみに万歳をする。その可愛い光景に微笑んだアリスは、自然と涙が止まった。
「…まさか、ここまで祝福されるとは思わなかったな」
「僕もです!」
ちょっとだけ照れてそう言う。恥ずかしいが満更でもない。アリスもそうらしい。
「それとその…差しでがましいかとも思ったのですが、我々使用人一同からささやかなプレゼントをご用意したのですが」
「え?なになに?」
「今お持ち致します」
ポールの言葉を合図に、使用人達が数人がかりで大きなモノをたくさん運んできた。
「これは…?」
「開けてみてください」
一つ一つラッピングを外す。すると中から出てきたのは…。
「…私達の絵か」
「わあ…!アリスティアお兄ちゃん、兄様!素敵な絵だね!ほら、これなんか僕もいるよ!」
私とアリスが寄り添う絵がたくさん。シエルも共に描かれているものも多い。
「我々にできるのはこのくらいですが…本当に、心からお祝い申し上げます」
「ありがとう…みんな、本当にありがとう!嬉しい!」
「私からも礼を言う。本当にありがとう」
「恐縮です」
私はまたも、幸せを噛みしめるのだった。
アリスティアの部屋にはもうすでにたくさん飾ってあるので、クロヴィスの部屋行き。シエルもいくつかもらって部屋に飾る。




