マリスビリーに相談
マリスビリー、大事な坊ちゃんのために寄り添う
「あの、クロヴィス様」
「なんだ?」
むすっとしたヤキモチ妬きのクロヴィス様がなんだか可愛い。
「その…ヤキモチを妬いてくれたんですか?」
「…ああ、そうだ」
むすっとしながらも素直なクロヴィス様。
「えっと…嬉しいです」
「え?」
「クロヴィス様にヤキモチ妬いて貰えて、僕すごく嬉しいです」
嬉しくて思わずニヤニヤしながらそう言えば、何故かクロヴィス様は顔が真っ赤になる。なんで?
「…私にヤキモチを妬かれて嬉しい、のか?」
「はい!」
「…ああもう!」
クロヴィス様は何故か頭を強く振る。
「…アリス、いい加減私も覚悟を決める」
「クロヴィス様?」
「アリス、君が好きだ」
クロヴィス様の言葉に僕は思考が停止する。
「…えっと?」
「恋愛感情、という意味で」
「え、え?」
「君の気持ちを聞かせて欲しい」
クロヴィス様の言葉に僕は、顔が真っ赤になるのが分かる。わけもわからずパニックになって、思わずその場から逃げ出した。
「く、クロヴィス様、僕ちょっと頭を冷やして来ます!」
「…アリスっ!」
クロヴィス様が追いかけてくる気配はなかった。
「…はぁ」
僕は一人、庭の大きな木の後ろに隠れて蹲る。
「失礼な態度、取っちゃったな」
ぎゅっと縮こまる。
「…嫌だったわけじゃないんだ。ただ、胸がぎゅーってなって。嬉しいのに苦しくて。この感情は、一体なに?怖いよ…」
涙が自然と溢れる。
「マリスビリー…」
助けて。
「はい、坊ちゃん」
「…え、マリスビリー!?」
突然の登場に思わず涙が止まった。
「坊ちゃんはどうせ泣いているだろうと思って、探しに参りました。お嬢様達はクロヴィス様とちょっとお話ししていらっしゃるのでまだしばらくこうしていても許されるでしょう。ということで俺と少しお話ししましょうか」
マリスビリーが僕の隣に座る。
「坊ちゃん。どうして泣いていたのか、自覚はお有りでしょうか?」
「…えっと、よくわからないんだ。胸がぎゅーって苦しくて」
「…まあ、自覚するのは自分で自覚してもらった方がいいか」
「マリスビリー?」
「でも、逃げちゃったのは悪手でしたね」
マリスビリーにはっきりと言われて落ち込む。
「うん。…クロヴィス様のこと、傷付けた。ごめんなさい」
「それはご本人に仰って下さいね。…でも、俺的にはクロヴィス様も悪いと思いますけど」
「え」
マリスビリーがこんなことはっきり言うなんてなかなか無いので、そっちに驚いた。
「だって、今まで散々坊ちゃんへの恋愛感情を…直接ではなくともシエル様にからかわれた時とか、否定してましたし」
「そんなことあった?」
「有りましたよ、坊ちゃんが鈍いだけです」
鈍いと言われてちょっと落ち込む。
「ただ…鈍い坊ちゃんも悪いですけど。あそこまで否定されていたら、恋愛感情ではないのかなって誰でも思いますよ。俺だってクロヴィス様の坊ちゃんへの態度に一喜一憂してましたし。なのに、お嬢様に焚きつけられたとはいえ急に告白とか。俺、ちょっと怒ってます」
「マリスビリー…」
「坊ちゃんを弄んでいるわけではないのは分かってます。でも、イタズラに混乱させないで欲しい。坊ちゃんは繊細だから…今もこんなに泣いて」
マリスビリーは僕の頬の涙の跡をそっとハンカチで拭いてくれた。
「でもね、坊ちゃん。俺、やっぱり…クロヴィス様以上に坊ちゃんを幸せにしてくださる方はいないと思います」
「…うん」
マリスビリーの真っ直ぐな言葉は、僕の心に素直に響く。
「クロヴィス様は…あれで恋愛感情ではないと頑なになっていたのが信じられないくらい、分かりやすく坊ちゃんを愛していらっしゃいます」
「あ、あい…」
ぼっと顔が燃えるように熱い。火傷しそう。
「だからね、坊ちゃんも…男同士だから、とか先入観は捨ててみましょうか」
「でも…」
「坊ちゃん」
マリスビリーが真剣な表情で僕を見つめる。
「男同士だからなんです?坊ちゃんを本当に愛してくれるのは誰ですか?坊ちゃんが…心を許せるのは?」
「…でも、いいのかな」
「いいんです。いいんですよ、坊ちゃん。坊ちゃんは、幸せになっていいんです。その為の選択なら、きっと間違いなんてない」
「マリスビリー…」
「とはいえやはり、冷静になって考える時間くらいは欲しいですよね」
マリスビリーはため息をついた。
「でも、クロヴィス様はもうスイッチが入ったみたいだし。いい加減進展して欲しいとは思っていたけど、クロヴィス様は零か百かしかないのか…」
「んーと…ごめんね?」
「坊ちゃんは悪くありませんよ。いや、鈍すぎるのは問題だけど」
「んー…?」
それは宥められてるのか責められてるのか。
「…でも。嫌ではなかったんですよね?告白」
「うん」
「なら、いいんです。でもね、坊ちゃん」
真剣な表情で僕を見つめるマリスビリー。
「もしクロヴィス様と上手くいかなくて、逃げ出したくなったら。俺に言ってくれれば、いつだって貴方を連れて逃げますよ」
「マリスビリー…?」
「俺は生涯、貴方だけの味方です。貴方は俺にとって、かけがえのない大切な方です」
「あの」
「だから。そんなことにならないように、頑張ってくださいね」
にっこり笑うマリスビリーは、いつもの雰囲気に戻っていた。
「う、うん。頑張るね」
「ふふ、はい」
「あの…マリスビリー」
「なんです?」
「…なんかさっき、まるで知らない人みたいだった。だからなにってわけじゃないんだけど」
マリスビリーは一瞬目を閉じて、またにっこり笑う。
「普段は鈍いくせに…たまにそう言うことを言いますね、貴方は」
「え、ご、ごめん」
「でも、そうですね…」
マリスビリーは僕の手を取って、まるで騎士様が姫君にするように恭しくキスをした。
「俺は貴方が望めば、なんだって出来る。ビビリでコミュ障な俺でも、貴方のためなら命を張れます。それだけは、覚えていてください」
「…ふふ。マリスビリー、騎士様みたい」
「一度やってみたかったんですよー。さ、落ち着きましたか?」
「うん!」
「じゃあ、戻りましょうか」
手を差し伸べてくれるマリスビリー。僕はその手を取って立ち上がる。
「ちゃんと、クロヴィス様と向き合わなくちゃ!」
「その意気ですよ、坊ちゃん!」
マリスビリーもついていてくれるし、僕はもう大丈夫!ちゃんとクロヴィス様と向き合うぞ!
マリスビリーの想いはご想像にお任せします




