お姉様のお婿さんは自由なお姉様を支えてくださる素敵な方です
いよいよそろそろ進展してもらいましょう!
お姉様からあれからしばらくして連絡があって、婚約者と挨拶に来てくれることになった。
「楽しみだね、アリスティアお兄ちゃん!」
「そうだね、シエル様!」
そして転移魔法でお姉様が来てくれた。
「クロヴィス様、シエル様、お久しぶりです。アリスティア、元気にしていた?」
「お姉様!元気です、お姉様は?」
「元気も元気よ!はやく結婚して爵位を継ぐ計画もしてるくらい!」
「ふふ、さすがお姉様!」
お姉様は相変わらず元気そう。その隣には穏やかな笑みを浮かべていて優しそうな、赤毛で緑の瞳の男の人が立っていた。
「紹介しますね。私の婚約者です」
「お初にお目にかかります。オベール・コロンブ・エドガールです」
お姉様と未来のお義兄様は穏やかな信頼関係を築いているらしい。オベール様に腕を絡ませて、お姉様は幸せそうに笑っている。
「これはご丁寧に。この国で公爵の爵位を賜っている、クロヴィス・シリル・ドナシアンと申します。アリス共々、よろしくお願いします」
「アリスティア・ベレニス・カサンドルです。お姉様の弟で、クロヴィス様の婚約者です!」
「シエル・マチュー・ドナシアンです!アリスティアお兄ちゃんの未来の義弟だよ!よろしくね、オベールお兄ちゃん!」
自己紹介を軽く済ませて、公爵邸のお庭でお茶会にする。
「オベール様とお姉様はどうやって知り合ったんですか?」
「お恥ずかしながら…ダンスパーティーの時に、アナイスに俺が一目惚れしまして。それからずっと猛アタックをしていたのですが、ようやく頷いてくれたのです」
「へえ…!」
「ふふ、オベールお兄ちゃん積極的!お兄様も見習ったらー?」
「どういう意味だ、シエル」
クロヴィス様はシエル様とわちゃわちゃして、それをみてオベール様は微笑む。
「弟君と仲がよろしいのですね。アリスティア様はクロヴィス様とは上手くいっていますか?」
「は、はい!とても優しくしていただいています!」
「心配しなくても、お兄様とアリスティアお兄ちゃんは僕なんかより仲良しだから大丈夫だよー?ねー、お兄様!」
「…シエル、あまりからかわないでくれ。まあ、アリスとは上手くいっています。アリスはとても公爵家や国に尽くしてくれて、私にもシエルにも親身になってくれて。誰より素敵なパートナーです」
クロヴィス様が良く通る涼しげな声ではっきりとそう言うから、僕はもう真っ赤。お姉様とシエル様がニヤニヤ見てくるから何も言えない。クロヴィス様にはなんの思惑もないんだろうけど、そんな風に言われたら幸せすぎて困る…。
「ふふ、お二人とも幸せそうでなによりです。…そうだ、アリスティア様。お渡しするものがあるのです」
「なんですか?」
「お祖父様とお祖母様から、手作りのアミュレットを預かって参りました。アリスティア様に渡してくれと」
「わあ…!ありがとうございます!」
手作りのアミュレットを受け取って眺める。ミサンガっていう、手編みのアミュレット。さっそく手首に巻いた。僕は魔法は使えないからどれほどの魔力を込められているかもわからないけど、爺ちゃんと婆ちゃんの温かみが伝わって微笑んだ。
「爺ちゃん…婆ちゃん…」
僕が感慨に浸る間に、クロヴィス様がオベール様に話しかける。
「…何故、義姉上ではなく貴方が預かったのです?」
「いえそれが、アナイスが…」
「ダーリン、ネタバラシはまだダーメ!」
お姉様がオベール様の口を塞ぐ。それを見てシエル様もなんだかにんまり笑った。
「そういうことなら、オベールお兄ちゃん。アリスティアお兄ちゃんと一緒にお庭のお花見ない?」
「シエル。それならみんなで一緒に…」
「お兄様はアナイスお姉ちゃんとここでお留守番!」
シエル様に気紛れに手を引かれて、オベール様と三人でお花を鑑賞する。
「ねえねえ、アリスティアお兄ちゃん」
ある程度お姉様とクロヴィス様と離れて、声が聞こえない距離まで来るとシエル様は言った。
「お兄様のこと、好き?」
「もちろん、とっても大好きですよ」
「…まだ、その色なんだ?」
「?」
少し不満そうなシエル様に首をかしげる。オベール様はそんなシエル様に何か合点がいったようで笑う。
「クロヴィス様がきっとリードしてくださいますよ、シエル様」
「まあ、そのために今お兄様を焚きつけてるし」
「なんのお話ですか?」
「アリスティア様には内緒ですよ」
くすくす笑うオベール様。シエル様はふとクロヴィス様の方を見て、満足そうに微笑んだ。
「お兄様、アナイスお姉ちゃんに何か言われたのかな。それともこっちのやり取りを見ててヤキモキしたのかな。やっとその気になったみたい」
「え?」
「アリスティアお兄ちゃん、戻ろう!」
「え、シエル様?」
シエル様に手を引かれて走る。オベール様も穏やかに笑って後ろをついてくる。
「アリス」
「はい、クロヴィス様」
「…その、話は楽しかったか?」
「は、はい」
なんだろう。クロヴィス様が怒ってる…というより、拗ねてる?むすっとしてる。
「アリスティア、耳を貸しなさい」
「はい、お姉様」
お姉様は僕に囁いた。
「ヤキモチよ、ヤキモチ。クロヴィス様は、アリスティアがダーリンと仲よさそうに見えて妬いたのよ」
「ええ!?まさか!」
「だって貴方達、男性同士のパートナーだもの。変に女を近づけるより効果的だと思ったのよねー」
「お姉様なにやってるの!?」
「ふふ。で、どうよ?」
お姉様が真っ直ぐ見つめてくる。
「ヤキモチを妬かれて、嬉しかった?」
「それは…っ!」
…う、嬉しいけどっ。
「ふふ。アリスティアお兄ちゃんのその色、やっと見れた」
シエル様が笑う。その色ってどんな色?
シエル様は僕にしゃがむようジェスチャーして、僕がしゃがんだら耳を貸してとジェスチャーをする。耳を貸せば言われた。
「あのね、アリスティアお兄ちゃん。僕、お兄様もアリスティアお兄ちゃんも大好きなんだ。お兄様とアリスティアお兄ちゃんにはずっと仲良しで、幸せになってほしくて。その色は、その感情は、大切にして欲しいな」
むむむ。その感情って、このなんとなくムズムズする感じのことかな?クロヴィス様にヤキモチを妬かれて、嬉しくて、なんだかムズムズするこの気持ち。シエル様がそういうのなら、ムズムズするけどきっといい感情なんだろう。
…でも、名前をつけるならなんて感情なんだろう?
ということでアリスティア、気持ちを揺さぶられます




