催眠術、ですか……
「初めまして、本日から隣の207号室に越してきた【しおり姐】ともうしま……」
どうやら気付いたみたい。
しおりお姉様が目を見開いてガクガク震えてる。
てかしおりって、名字なんだ…………
「なぁ、ユーキ! まだか? …………あぁぁぁああ!」
リオは顔を出してすぐに光の速さでしおりお姉様の存在に気付く。
「あぁリオ、この人は今日越してきたしおり姐さ……」
( ゜д゜)ハッ! この殺気はもしかし……
「その名前で呼ぶなぁぁぁあああァァァァあああ!!!!」
「ごめんなさぁァァァああああい!」
「「「「「うるさい!!!!!!!」」」」
周りの部屋や近くの家の人から怒られてしまった(;´д`)トホホ…
☆☆☆
何故か今、僕たちは自分の部屋のソファーで正座させられているのだが……なんで?
恐る恐る前を向いてみると五円玉にタコ糸を通そうと健闘している最中だった……何がしたいの?
〜三十分後〜
しおりお姉様はまだ五円玉にタコ糸を通せていない。
何度も失敗しているせいでタコ糸はボロボロになってきていた。
そして、よく見るとしおりお姉様の目には薄っすらと涙がうかん……
「何がしたいの!? てか、リオもいなくなってるし……」
「何って、催眠術で忘れさせ……」
「いや、無理でしょ! 催眠術って……ぷぅ、クスクス」
「おいクソガキ、まだ殺られ足りねぇか?」
「フン、やれるものならやってみなさい! 私はあなたに負けてからボクシングを始めて、コーチには那○川 天○を超える実力があると言わせたんだから!」
リオは偉そうに仁王立ちをしている。
……でもさ、模擬戦って昨日だよね? あの後ログアウトしたのがさっきだよね? 普通に考えてありえな……
「んなわけねぇだろうが! たった数時間で成長するほど世の中甘くねぇんだよ!」
ですよねぇ〜
「チッ、バレたか。それで? なんで催眠術なんてしようとしたの?」
「…………んだよ」
「ん? どしたぁ? 聞こえないよ?」
「名前が恥ずかしいんだよ!」
「………はぁ? それで忘れさせようとしたと…………」
「そうだよ! 悪いか?」
「いや、私あんたの名前知らないんだけど?」
「「は!?」」
いやいやいや、それは流石に無理が……
「そうなのか……早とちりしてすまなかった」
ない!?
なに普通の人はこんなこと信じるの?
「ユ、ユーキも覚えてないわよね?」
「え、……あ、うん! てかしおりお姉様の本名なんて聞いたことないよ!」
「なぁ〜んだ! そうだったのか!」
「チョロっ」
リオがしてやったりって顔をしている。今回は僕も助かったから別にいいんだけど。
「いやぁ〜、そうかそうかぁ……それならさっさと言えよ?」
さっきまで機嫌の良かったしおりお姉様の表情が恐ろしいものに代わる。
「ホントは私のこっけいな姿見て笑ってたんだろ? そういえば、頭殴ると忘れるって言うし、やってみるか?」
「「や、やめ……ま、待って! 本当にごめ……」」
「「ギャァァァアアアァァァァァァァァァアアア」」
今日もにぎやかなアパートの一室に断末魔が響き渡る。
数分後、大家さんが来たが別に関係のない話だ。
……そう、今回のことにはなにも……