模擬戦 リオVSしおりお姉様
《P【しおりお姉様】からP【リオ】に模擬戦の申請が行われました。これより模擬戦が行われます》
模擬戦を知らせる音声とともに、私たちは闘技場へと転移される。
「おいクソガキ! 大口たたいたの後悔させてやるよ?」
「へぇ~? 面白いこと言うじゃない? そんなこと言ってもいいの? 一応ヤウチューブで、配信されてるのよ、コレ」
「じゃあここでてめぇをぶっ潰せば赤っ恥かかすこともできんのか、サイコ〜じゃねぇか」
そう言うとしおりは、瞬時に間合いを詰める。
「……っ! 【ファイア】」
リオは慌てて魔法を打つ。しかし、最低限の動きでかわされ、そのまま一撃をみぞおちに喰らう。
「おいおいおいおい! どうしたんだよ、この程度のパンチも避けられないのか?」
「今のはちょっとした不意打ちで驚いただけよ!」
「じゃあ今度は本気でいかねぇとなぁ」
「伍の太刀【乱れ桜】!」
高速で放たれる二十連撃。
不意打ちで打った四方八方からくる斬撃は、まるで最初から分かっていたかのように余裕の表情でかわされる。
しかも、避けるのと同時にちょっとしたカウンターも添えてくるのでゲームでなければリオの右腕は悲惨なことになっていただろう。
「へぇ? 長剣使いにしては速いじゃん」
「油断しないほうがいいと思うんだけど?【スラッシュ】」
「忠告ありがとさん♪」
しおりは盾を投げて斬撃の軌道を無理やり変える。
「でもさ、油断はしてないぜ? ただあんたの剣が警戒するに足りないだけだ。それに、油断してるのはあんたじゃねえのか?」
先程投げた盾が背中に直撃し、リオが前に倒れた。
そして、リオが立ち上がるまえに後頭部へと、拳を振り下ろす。
リオのHPバーは半分をきり、黄色く点滅しだしていた。
「はぁ〜い。ここで残り半分で死んでしまう可哀想なクソガキに大ヒント! 私は学生な頃にボクシングをやっていたので、瞬発力と動体視力がすごいぞ」
「じゃあ、動体視力を超えるスピードでいけばかわせないってこと?」
「あぁ、かわすことは、できないな」
その言葉を聞きリオはほほ笑む。
「だったら一発あてて吠え面かかせてやるよ!【神速】!」
確かに、普通のスピードじゃ攻撃を当てることすらできなかった。
しかし、【神速】ならその、五倍のスピードが出る。人間の動体視力じゃ目で負えない。
「【ウェポンチェンジ】!」
掛け声とともに、しおりの手に現れた二メートルもある大鎚を真っすぐにふる。
リオは、大鎚に直撃し真横に吹っ飛ぶ。
《P【リオ】のHPがゼロになりました。
これにより、P【しおりお姉様】の勝利となります》
「かわすことはできなくとも、攻撃を当てることはできるんだぞ?」
そう言うと、しおりは、見た人全員が卒倒するような美しい笑みを浮かべたのだった。