表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢の華麗?なる脱出劇【恋愛要素マシマシ】  作者: サンショウオ
ゲームフラグとの戦い
97/136

その96(軍隊殺し1△)

 

 私が覗く遠見のマジック・アイテムの先には、黒い霧があった。


 それは予想よりも広範囲に広がっており、この中の何処にあの魔物が居るのか皆目見当がつかなかった。


 やはりあの霧の中に入って探さないとならないようね。


 まだルヴァン大森林の中に居たら捜索も大変だったでしょうが、今は平原に出て来ていると思われるので、見通しは効きそうだった。


 あの中では暗視も駄目なので、頼りになるのは「安心道案内」というゴーグルだ。


 エイベルは「安心道案内」を持っているので、直ぐに装着して戦闘馬車を操縦していた。


 そして軍隊殺しの幼体であるグラインダーを見た事がある私とエミーリアが、残りの「安心道案内」を装着して見張り員として軍隊殺しを探すことになった。


 見張りは私が馬車の右側、エミーリアが左側を受け持った。


 マルコムさんの話では黒霧の中には毒針を持った霧蜂がいるそうだが、この戦闘馬車には戦場で展開する「戦闘空間」という空間魔法が使えるので、霧蜂除けになるだろう。


「安心道案内」から見える映像に色はなく、障害物が立体的構造で浮き上がるような感じなのだ。


 今は平地を見ているので、地面の起伏が見える程度の長閑な風景だった。


 だが、その光景は直ぐにホラーな光景へと変貌していた。


 それというのも先程から馬車の結界に向けて無数の霧蜂が攻撃を仕掛けてくるので、その姿が「安心道案内」を通してばっちり見えるのだ。


「安心道案内」を着けていない人にとっては、何も見えない所に「ミシッ」とか「カツン」とかいう霧蜂が結界に当たる音が聞こえるので、何も見えない中、嫌な音だけが聞えるのは堪らないだろうなと思っていた。


「エミーリア、そっちはどう?」


 私が担当する右側にグラインダーの外見的特徴が見えなかった事から、左側を担当するエミーリアに状況を尋ねてみた。


「いえ、こぶし大程の無数の蜂が見える他は何も見えません」


 それを聞いて私は少し落胆していた。


 それというのも無数の霧蜂が群がって来るこの光景が当面続くのかと思うと、気持ちが萎えてきそうだった。


 それは周囲を見ることが出来ない他の人達も同じだったようで、エミーリアの言葉を聞いて動揺する声が聞えてきた。


 だが、その動揺もAランク冒険者の冷静な声が収めてくれていた。


 流石は魔物討伐のプロというところね。


 こんな状況だと馬は怖がって動かなくなってしまうが、ゴーレム馬は魔力で動いているのでその心配は無かった。


 これはゴーレム馬車を貸してくれたお父様にも感謝した方がよさそうね。


 やがて、馬車の動きが鈍くなると完全に停止していた。


 何かあったのかと馭者台との仕切りを開けて前方を見ると、丁度エイベルがこちらを振り返ったので、お互いのゴーグル越しにお見合いになっていた。


「どうかしたの?」


 私がそう尋ねると、エイベルは前方を指さした。


「前方におかしな物体があります」


 馬車の中からだと前方部分は見えないので、天窓を開けて覗いてみる事にした。


 私は馬車の床にある取っ手を引っ張り踏み台を持ち上げると、それに乗り天窓から顔を出した。


「安心道案内」越しで見える物は大きな岩に見えた。


 だが、それが岩ではないのは動いているので分かった。


 それはこちらに向かって動いているように見えた。


 ツォップ洞窟で見たグラインダーの外見はダンゴムシだったが、「安心道案内」越しではそれ程正確に見ることが出来ず、ダンゴムシかどうかは断言できなかった。


 だが、この霧の中で動けるのは他に居ないだろうとは思ってもいた。


「エイベル、アレだと思うのだけど貴方の意見は?」


 一応1人で判断するよりも良いだろうという事で、先程から御者台でじっとそれを見ているエイベルに話しかけた。


 エイベルもそれをじっと見えていたが、やがてこちらを見るとコクリと頷いた。


「お嬢、間違いないと思いますぜ」


 よし、では早速楽々掘削を仕掛ける事にしましょう。


 戦闘馬車の外には霧蜂が居るので、アビーに同行をお願いして「戦闘空間」の結界を張ってもらうことにした。


 魔物に楽々掘削を踏ませると言っても、小さなスイッチの上に丁度魔物の足が乗っかるとなるとかなり運に左右されてしまうので、複数個所に設置して可能な限り踏む確率を増やさなければならなかった。


 残っている「楽々掘削」は4つだ。


 私はアビーと手を繋いで馬車から降りると、アビーに「戦闘空間」の結界を展開してもらい、早速エミーリアと2人で罠を仕掛けて行く事にした。


 エミーリアは何処から取り出したのか、小さなシャベルを取り出すとそれで「楽々掘削」を直立して埋められる程の穴を掘っていった。


 私はその穴の中に「楽々掘削」を入れて、穴を埋めて行くのだ。


 そして完成した仕掛けは「楽々掘削」の突起が少し地面から出る状態だが、それはそこにある事を知っていなければ判別できなかった。


 だが、それではせっかく仕掛けても踏んでくれないという問題があった。


 そこで起動する面積を増やすため、起動スイッチの上に軽そうな平たい石を置いた。


 私達が3つ目を仕掛けていると、御者台のエイベルから声がかかった。


「お嬢、ヤツがこちらに向かってきますぜ」


 それは先程から聞こえてくる軍隊殺しの足音が徐々に大きくなってきている事や、歩く度に地面が少し揺れる事からも分かっていた。


 だが、この距離なら最後の1つも仕掛けられそうだった。


 私とエミーリアが急いで4つ目を仕掛けていると、また馬車の中から緊急を告げる声が聞えていた。


 その声を聞いてアビーが声を掛けてきた。


「クレメンタイン様、そろそろ時間切れのようですよ」

「もう少しよ」


 私はそう言うと、4つ目の「楽々掘削」を仕掛けると穴を埋めて行った。


 その間も軍隊殺しが近づいてくる足音や、地面の振動が大きくなってきている事は分かっていた。


 馬車からはエイベルの絶叫に似た声が聞えてきた所で、ようやく4つ目の「楽々掘削」を仕掛け終わった。


ブックマーク登録ありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ