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タンポポ姫の恋の処方箋   作者: rokoroko
93/199

93.親たちの思惑?

 テリュースにエスコートされながら、来賓の方々に挨拶して歩く。

 いったい何人の方々にご挨拶したのか、覚えていない。

 もう誰が誰だか、解らなかった。(頭の中、大大大パニックだよ。)


「あ、あれは?」

「アンジュ、どうしたの?」

「アーサー兄様がいます」


 見知ってはいるが、久しぶりに会う顔を見つけて、アンジュは嬉しくなった。

 まさか次男のアーサーまで、王都に来ているとは、思わなかった。


「ごきげんよう。アーサー兄様も、来てくださったのですか?」

「大切な妹の婚約の儀だよ。来ないわけがないだろう」

「ありがとうございます」

「シルキーナ姉さまも、お久しぶりです。忙しい中、来ていただきありがとうございます」

「アンジュちゃん、本当に綺麗。今日はおめでとうございます」


 シルキーナ姉さまはアーサー兄様の婚約者で、トゥルース領の隣に位置するマルデリダ男爵領の現ご領主さまなのです。

 お父様であるマルデリダ男爵が早くになくなった為、シルキーナ姉さまが家督をつぎマルデリダ男爵になられたのだった。

 アーサー兄様は次男だし、今はトゥルース領の管理を主に行っているが、結婚したらマルデリダ男爵家に入り婿に入るみたい。

 爵位持たない次男の身なので、とても身軽だった。

 今は互いの領地の間に家を建てて住んでいて、どちらの領地も2人して管理している状態だった。

 結婚してもずっとそうすればいいのにと、アンジュは思っていた。

 だってお姉さまが出来たみたいで、嬉しかったんだもの。 


「まさかアンジュが、殿下と婚約するとはね」

「意外でしたか?」

「いや意外なのは、婚約の儀がこの時期になったことぐらいかな?小さい頃から、殿下のアンジュに対する執着を見ていると、こうなるだろうなと私やアル兄やアンリは思っていたよ」

「テリュース殿下の、私への執着ですか?」

「おまえは気づいていなかったみたいだが、殿下の好きに周りのみんなが協力したってことかな」


(うーん、わかんない。最初に私を好きになったのは、テリュース殿下って、どう言うこと?それに周りのみんなが協力したって?)


 疑問を込めテリュース殿下の綺麗なマリンブルーの瞳を見ると、彼は恥ずかしそうに眼を反らした。

 なんだか顔も、赤いような・・・・・?


「これってテリュース殿下にとって、想定内ってことですか?」

「知らぬは、アンジュばかりなりだよね」

「「そうそう、その通り!」」


 突然加わった相槌は、アルフレットとアンリだった。

 これでトゥルース家の、4兄妹が勢ぞろいだった。

(なんで兄様たちは知っていて、私が知らないわけ?)


「えーっ、どういうこと?」

「・・・・・えーと」


 テリュースに問いかけるが、恥ずかしそうに顔を反らすだけで何も応えようとはしない。

 アンジュは聞く相手を変えて、兄たちに聞くことにした。


「兄様、どう言うことですか?」


 真剣に聞くアンジュを見て、アンリはニヤニヤ笑う。

 3人の兄たちの中で、一番口が軽いのはアンリだった。


「アンリ兄様、テリュース殿下が最初に私を好きになったって、どう言うことですか?」

「うん?そのまんまだろう」

「どう言うこと?」


 アンジュが問うと、アンリは尚もニヤニヤ笑う。この状況を楽しんでいるようだった。


「テリィがおまえに恋したのって、いつだと思う?」


 いつ恋をしたなんて、解るものなのだろうか?

 テリュースが恋を意識した時って、1年前のあの再会した時しか思いつかなかった。


「お母様と出席したあのお茶会の時ですか?」

「もっと昔だ」

「・・・・・・アンリ、もういいだろう」


 テリュースは、もう顔が耳まで赤く染まっていた。

 目が泳いでいるし、明らかに怪しい人だった。


「それこそ婚約したんだ。もういいだろう」

「・・・・・・」


(そんな凄い、お話なのかな?テリュース殿下が私に恋をした瞬間って。)


「テリィがおまえに恋したのは、13年前だ」

「13年前って・・・・・・?」


(それって、私が生まれた年だよね。)


「私、0才、・・・・・ですよね」もしかしなくても、赤ちゃんだった。

「そう、あたり。おまえが生まれたばかりの時に、テリィは恋をしたんだ」

「へぇ?」変な声が出てしまった。


(まだ、赤ちゃんだった私に、恋をしたってこと?)


「当時テリィは3歳だったけど、アンジュへの執着は凄いものだったよ。私たち兄弟さえ、近づけようとはしないのだから、ね」


 アルフレットが、当時を思い出すように言う。


「ほんと殿下は、アンジュのことが大好きだったよね。だから国王陛下や王妃様が、父様と母様と4人で策を練った」

「策って何ですか?」

「名付けてアンジュを皇太子妃に大作戦!」

「私を皇太子妃に大作戦?」

「つまりアンジーは生まれた瞬間から、皇太子妃に大作戦!が始まっていたってことだな」

「この婚約の儀は、その第一歩ってところだろうな」

「見ろよ。親たちのあの嬉しそうな顔。自分たちの思い通りに、事が運んで大満足って顔だぜ」

「ああ、父様たちが呼んでいる」

「しかたない。行くか」


 クロードたちに呼ばれ、兄様たちが離れて行く。何この暴露話?


(私たち、父様達にいいように、誘導されていたって訳?)


 自分で何でも決めて、育ってきたと思っていたのに、アンジュはショックだった。(これ、どういうこと?)


 アンジュは決して親たちの思惑に添って、恋をしたわけではないと思う。


「13年間かけて周りを巻き込んで、二人は恋をしたってことなのかな?」


 でも・・・・・、人生って周りがどうこうしようとして、そうそう誘導できるものではないと思う。

 テリュース殿下がいくら赤ちゃんのアンジュを好きでも、赤ちゃんのアンジュが3才年上のテリュース殿下を好きになるとは限らない。

 お互い成長していく上で、いろいろな要素が加わり別れることもあったかもしれないけど、今私たちは恋をしていると思う。


 ーーーーーー今日、婚約しました。


 小さい頃からの刷り込みだろうとなんだろうと、アンジュはテリュースが好きだって声を大にして言える。


「兄様たちの暴露話を聞いて、正直言って驚きました」

「そうだよね。もしかして気持ち悪い?」

「どうしてですか?」

「だって赤ちゃんのアンジュに、恋をしたんだよ」

「それは赤ちゃんの私が、恋をしたいくらい可愛かったってことですよね」

「う、うん」

「もう隠し事は、ありませんか?」

「うん、ないよ。別に気持ちを隠していたわけじゃないしね」

「それならいいです」

「うん。やっと捕まえた。もう離さないからね」

「はい、ちゃんと捕まえていてくださいね」


 テリュースがアンジュを、両手でギュっと囲い込む。

 密着した身体から、互いの鼓動が伝わって来た。

 ドキドキと、鼓動が早い。


(これは私の鼓動?テリュース殿下の鼓動?)


 二人の鼓動が混ざり合い、一つのリズムになる。

 普通だったらここで、キスだよね。やっちゃう?キスしちゃう?

 無事婚約の儀も終えた仲だし、キスくらい婚約者の二人には普通だよね。

 (前世の)外国では、挨拶みたいなものだし。(そこまで言い訳する?)

 二人の視線が絡み、吸い寄せられるように顔が近づいて来る。

 もう少しで、唇が重なると言う瞬間!


 きゃあーーーーーーーっ!会場中がどよめき、女性人の黄色い悲鳴が、響き渡った。

 本日の主役二人に、好奇や嫉妬、羨望、祝福などいろいろな視線が注がれる。

 やばっ!、ここはまだ婚約の儀の会場だった。


(もう、見ないでよね。)


読んで戴きありがとうございました。

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