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タンポポ姫の恋の処方箋   作者: rokoroko
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8.薬草の館

 どこをどう走ったのか?

 方向音痴のアンジュには、まったく検討がつかない。

 それほど遠くまでは来ていないと思うのだが、帰り道さえも解らなかった。


(王城内で迷子って、最低かも・・・・・・。)


 ここは、何処なのだろう?

 どうやって帰ったらよいのかも解らない。

 それに今はまだ元の場所へは、戻りたくはなかった。


 城の中ならばテリュース殿下に連れられツアーなどしたこともあるが、この建物に来たのは初めてのことだった。


「誰かいませんか?」


 声に出して尋ねても、答えてくれる人は誰もいない。

 しーんと、静まり返っていた。


「お邪魔しますね」


 一言断って入口のドアノブを回すと、ガチャリ!と回った。

 施錠されてはいなかったようで、見た目より重い扉を開けて、そーっと中へ入り込む。


 少し休ませてもらおうと入り込んだ先は、温室と言うよりは、城の薬草園。薬草の為の館だった。


 薬草園の中は外の光をほどよく取り込んでいて、部屋の中とは思えないほどとても明るかった。

 魔法によって適温に調節がされているのか、普通の温室のようなむっとする不快感はない。まるで自然の中にいるような、錯覚さえ覚えた。


「すごい!素敵!」こんな建物、見たことない。


 目の前の光景から、目を離せない。

 マーク殿下たちに虐められて今まで沈んでいた気持ちは、すっかりどこかへ消え失せていた。


 建物の中にはアンジュの大好きなハーブ系の植物はもちろんのこと、ありとあらゆる薬となる草木が、栽培されている。一般的なハーブ類から、かなり高価で珍しい薬草もあった。


「すごいです。すごいです。まるで宝の山ですね」


 どの世界でもそうだが、(・・・・・・と言っても、私は前世のニホンとこのフランドール公国しか知らないけどね) 

 病や傷を治す為に、薬はとても必要なものなのだが、この世界ではかなり高嶺の花のようで、王族、貴族や一部のお金持ちしか手にすることができないもののようだった。

 お金がない為に病気や怪我を治すことができず、悪化させて命を落とすことなど珍しくはなかった。

 ニホンではどこにでもあった薬局さえない。

 医者はいるにはいるが、優秀な医者は王族、貴族、大富豪のお抱えがほとんどで、前世での病院の役割をしているのは、神殿や教会くらい。それも設備や薬品は、まったくと言っていいほど量も質も足りていなかった。


 そんなフランドール公国にアンジュは、ニホンと言う国で24歳まで生きた佐藤千尋の薬学の知識を持って生まれて来た。

 その上、我がトゥルース家は薬学に秀でた家系で、領地のトゥルース領では数多くの薬草を栽培している。まさに適材適所に転生させてくれたものだと思う。


(神様、ありがとう!) 


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