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タンポポ姫の恋の処方箋   作者: rokoroko
62/199

62.魔物、怖い!

 妖精さんに救援の伝言を頼んだものの、なかなかお迎えは来なかった。


 こちらに来たのが午後3時ごろ。

 たぶんテリュース殿下はアンジュとお茶の時間を過ごすために、薬草園に来たのだと思う。

 なのに目の前でアンジュが消えちゃったのだから、多分今頃は大騒ぎになっているに違いなかった。

 それからメグスリの木の採取に、1時間。

(割と早く採取できたと喜んでいたのに・・・・・)

 まさか帰れなくなるとは、思ってもいなかった。


 妖精さんのひとりが救援を呼びに行ってから、すでの3時間近くは経っていた。

 今はもう午後7時頃に、なっているはずだった。


「なかなか助けが来ませんね」

『ようす、みてくる?』

「あなたまでいなくなると、私もどうしていいか解らなくなるから。もう少し、そばにいて欲しいです」

『うん、わかった』

「ごめんね。妖精さんも帰りたいよね」

『だいじょうぶ。アンジュといる』

「ありがとう」


 妖精はアンジュの肩にとまると、身体をピタリと密着させる。掌に乗るくらいの小さな存在だが、アンジュにはとても心強く思えた。


 迷子ならその場でじっと待つのが鉄則のはずなのに、アンジュは少しでも早く帰りたいと前に前にと歩いてしまう。

 自分がどこに向かって歩いているのかさえも、解らず歩いていた。


 もともと鬱蒼と木々が茂り、薄暗い所なのだが、陽が落ちたせいでさらに暗くなって来た。ほぼ闇の世界だった。

 体感温度もぐーんと下がり、寒くなってきた。

 今回は突然森に行くことになり、薬草園から直接来たのでローブすらなかった。

 自分を抱きしめ温めようとするが、ほとんど温度は変わらない。寒くて寒くて、堪らなかった。


「夜がこんなに怖いなんて、初めて知ったよ」


 暗闇から今にも魔物が現れそうで、落ち着かない。怖いなんてものではなかった。自分がこんなに怖がりだったのかと、驚いてしまう。


「魔物なんて、いないわよね」


 ただのひとり事だった。別に返事が欲しいわけではなかった。

 それなのに妖精から返って来た返事に、アンジュはびびってしまう。


『アンジュ、もりにまものいるよ』

「えっ、魔物いるの?」

『きたのもりにも、いる』

「そんなぁ、危ないじゃないですか?」

『あぶない、きをつけて』


 気をつけてと言われても、アンジュは剣など使えない。それにこの場には武器になるものは、なにもなかった。

 もし、今この時、魔物に襲われたら、逃げられるとはとても思えなかった。


(わーん、怖いよ~ぉ)


 -----------カサカサカサ・・・・・。


 草が動いた気がした。


「きゃーっ!」


 悲鳴とともに、アンジュは走り出す。怖い、怖い、怖い。

 後ろを振り返ることは、怖くて出来なかった。

 闇がどんどん迫って来るように、感じた。


「あっ!」


 歩きなれない場所で木の根にひっかかり、アンジュは転んでしまう。


「痛い」


 暗くて解らないが、膝くらい擦り剥いているかもしれない。

 ヒリヒリと膝が、痛かった。

 アンジュはもう泣きたくなった。

 辺りは真っ暗で、どこから来たのかも、どこへ行くのかも解らなかった。

 そう思うと周りすべてが、崖に思えてくる。

 もう前にも後ろにも、進めなかった。 アンジュは、その場に蹲ってしまった。


『アンジュ、だいじょうぶ?』

「ごめんなさい。あなたは大丈夫?」

『だいじょうぶ』

「そう、ならよかった。でも、これからどうしょう?」


 真夜中の森の中、どうすれば帰れるのか解らなかった。

 辺りはシーンと静まり返り、魔物が息を潜めているのではと思ってしまう。


(怖いよ~ぉ。テリュース殿下、アンリ兄様、誰でもいいから助けて!)


 アンジュの願いが通じたのか、草を踏みしめる音がだんだん近づいてくる。


 ザクザクザク・・・・・・。


 しかし、人が踏みしめる音にしては、重い感じがした。


 ザクザクザク・・・・・・。


 草を踏みしめ現れたシルエットは--------!


黒熊(ブラックベアー)?」


 体長3M超えの、熊の魔物だった。


 アンジュはその場で身体を丸め、目を瞑る。妖精を庇うように、両手で隠した。


 絶体絶命!なすすべはなかった。


読んで戴きありがとうございました。

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