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タンポポ姫の恋の処方箋   作者: rokoroko
42/199

42.レッドドラゴンスネーク 5 

引き続き、アンリ視点です。今回で一応討伐訓練は終わります。

ほんと長かったです。読みにくいところも多々あったと思います。ほんとごめんなさいです。

今回も残酷なシーンがあります。ご注意ください。

どうぞよろしくお願いいたします。




「危ない!」 


 間一髪、傍にいたコンラットがテリュースを庇い、身体の位置が入れ替わったのが俺の位置からでも解った。


 炎の到達点がずれて、二人の足元を直撃する。ドカーーーーーーン!


「うわーっ」

「うっ!」


 彼らの立つ足元の岩が崩れ、二人とも俺たちとは反対側の森の方へと落ちて行く。


「テリュース!コンラット?」


 落ちる瞬間、コンラットの右足の膝から下が、炭になって崩れて行くのが見えた。


 (見間違いだよな。そうだ見間違いに違いない。コンラットの足が・・・・・)


 コンラットが足を失ったなど、信じたくはなかった。


 今回の討伐訓練で、初めて怖いと思った。身体が震える。怖くて、怖くて、しかたがなかった。

 大の男がと笑われそうだが、テリュースたちの様子を確かめることが怖くてできなかった。


 この時初めて、死と言う存在を身近に感じた。


 それでも崖を降りて、俺は2人を助けに行かなくてはならなかった。

 シヴサル団長たち第3騎士団は反対側にいたため距離があり、テリュース達が落ちたのに気づいていない。気づいていたとしても、崖の下にまで降りれるほどの体力を残している者はいなかった。


 さてどうする?ポーションでもあれば、なんとかなるのだが・・・・・。

 ポーションを飲むには、団長たちがいるところまで戻らなければならなかった。遥かに遠く感じた。


 ふと胸に手を当てると、硬い感触があった。

 そう言えば・・・・・・と、内ポケットを探る。

 探り出したのはアンジュがくれたスキットルだった。

 1人10mlで、回復するみたいなことを、アンジュが言っていたことを思い出した。

 とりあえずスキットルのキャップ1杯を、口へと含む。味はフルーツジュースのように、美味しかった。ハイポーション独特の後に残る苦みも感じられない。

 飲みやすくて、美味しかった。

 ゴクリとキャップの中身を飲み干す。

 途端、成長痛のような痛みが、肋骨付近でした。骨が軋むような感覚の後、


「あれ。治った?」


 傷は勿論、骨折さえ治ってしまった。おまけに体力も回復していた。討伐訓練前よりも、魔力も体力も上がっていた。


 一口で、キターーーーーーーーーーーーーーーーッ!って感じだった。


 これなら1人でも、十分にテリュース達を救出できそうだった。


「さて、救出にむかいますか?」


 俺は飛ぶように崖を駆け下りる。背中に羽根でもはえているかのように身体が軽かった。


 テリュースとコンラットは、折り重なるように崖下に転がっていた。


「テリュース、コンラット、大丈夫か?」

「アンリ・・・・・・」


 俺の問いに応えたのは、コンラットだった。

 コンラットに近づくと、やはり見間違いではなかったらし右足の膝から下がなかった。

 今にも震えそうな身体を叱咤し、何事もない様子で話しかける。足の方から目を反らした。


「大丈夫か?」

「私は大丈夫だ。それよりテリュースは?」

「気を失っている。今、ポーションを飲ませてやるから」

「私より先にテリュースに、飲ませてやってくれ」


 自分の傷も痛いだろうに、コンラットは頑としてテリュースが先を譲らない。仕方なくテリュースに、先に飲ませることにした。


「テリュース、大丈夫か?ほらポーションだ、飲め」


 テリュースの口元にポーションの入ったキャップを押しつける。しかしテリュースは口を開こうとしない。気を失ったまま反応はなく、ポーションを飲もうとはしなかった。


(落ちた時に、頭でも打ったか?)


 それなら尚更ポーションを飲ませたほうが良いに決まっていた。

 逡巡は一瞬だった。

 俺はポーションを口に含むと、口移しでテリュースの口の中へとポーションを流し込む。


(まさか俺の初めてをテリュースに捧げることになろうとは・・・。俺のファーストキッスがテリュースだなんて、誰にも言えない。;泣)


 それでも俺に後悔はなかった。幼馴染だし、親友だし、王族だし、生涯主と決めた奴だし。理由なんてなんでもよかった。


 ゴクリとテリュースの喉が、上下に動く。

 俺はホッと息を吐き出す。飲んでくれさえすれば、ポーションは効くはずだった。


 寝ぼけているのかテリュースが、さらにポーションを求めるように熱烈に俺の唇を吸い上げる。俺はファーストキッスにも拘わらず、別の扉が開いてしまいそうな危ない予感に慌ててテリュースから離れた。


(やばい、やばい。アンジュに怒られる。)


 ポーションは飲ませた。あとは回復を待つだけだった。

 テリュースの様子を伺っていると、俺の時のように少し痛みに呻いた後、パチリと目を見開いた。


「アンリ?」

「おう、気分はどうだ?」

「うん、悪くない。むしろ良すぎる感じ?」

「そりゃあ、よかった。次はコンラット、お前の番だ」

「コンラット・・・・・・・?」


 テリュースの視線が、コンラットへと向かう。倒れているコンラットを見て、テリュースは息を飲んだ。


「コンラット!足が、足が、コンラットの足が・・・・・・」


 ブワリとテリュースの目に涙が浮かぶ。あとは言葉にならなかった。


「ご、ごめん。私のせいだ。私を守ろうとして・・・・・・・」

「違う。テリュースのせいじゃない。私がドジっただけ。だからお前が責任など感じることはないんだ」

「でも・・・・・・・」

「テリュース、今は責任の所在より先に、コンラットにポーションを飲ませてやろうぜ」


 テリュースに心配をかけないように平気な顔をしているが、コンラットはかなり痛いはずだった。


「ほら、特製ポーションだ。通常、10mlで効くらしいが、お前の場合どのくらい飲めばいいか解らん。とりあえず飲め」


 俺はスキットルごと、コンラットの口元にもっていく。コンラットはゴクリと喉を鳴らして、ポーションを飲み下した。


「こんなに美味しいポーション、初めて飲んだよ」

「だろ、俺も思った」

「うんうん、フルーツジュースみたいだった」

「これが結構効くんだ」

「美味しい上に、よく効くなんて凄いポーションだね」


 しばらくするとコンラットが、無いはずの右足を押さえてうめき声をあげる。じっと見ていると、なくなったはずの膝から下が再生を始めた。足が生えてくるように見えた。

 数秒後、コンラットの足は元通りだった。

 まさに奇跡の瞬間だった。


「コンラット、気分はどうだ?」

「うん、大丈夫。でも正直言って、とても驚いている」

「だろうな。俺もだ」


 まさか失った足がポーションで再生するとは、誰も思わないと思う。


「何、このポーション。凄すぎだよね」

「ああ、俺もさっきまで、このポーションの事は忘れていた」

「で、このポーションはなに?」

「アンジュから貰った。と言うか渡された」

「アンジュから?」

「またアンジュ姫も凄いポーションを作りましたね」

「そうなんだよな、凄いポーション過ぎるんだよな」

「私としては失ったと思った足を取り戻すことができて、感謝しかありませんが・・・」


 確かに足を失くしては、騎士として致命的だ。だからコンラットが感謝するのも解る。俺も今この時にこのポーションがあって良かったとは、思うが・・・。


「さて、この状況をどうやって誤魔化すかだよな」

「誤魔化す、ってどうして?」

「このポーションは俺たち以外、知ってはいけないものだと思う」


 こんな神業のようなポーションがあることが他人に知られでもしたら奪い合いになることは、解り切っていた。国と国なら戦争にさえなりかねない。作ったアンジュの身にも、危険が及ぶに違いなかった。

 テリュースのように凄いポーションだねと、喜んでばかりもいられなかった。


(ほんと想定外の妹を持つと、兄は苦労をするよな)


「まぁ五体満足で命があるんだ。後は何とか誤魔化せると信じよう」

「うん、そうだね。コンラット、私を守ってくれてありがとう。アンリ、コンラットの足を治してくれてありがとう。アンリ私にポーションを飲ませてくれて、ありがとう」

「俺は飲ませただけで、2人を治したのはアンジュのポーションのおかげだけどな」


 今の俺たちは、かすり傷一つなくピンピンしていた。

 崖から落ちたのに無傷なのは、まぁ木がクッションになって助かったとでも言えばなんとかなる。・・・・・・はずである。

 しかしコンラットの足は・・・・・・・。

 たぶんコンラットの足が炭と化し、崩れ去るのを見たのは俺だけだと思う。

 なので再生した足を見ても変には思われないだろうが、問題は服装だった。

 足は再生したが、スボンや靴下靴などはなくなってしまっている。

 本当に誤魔化すのが、大変そうだった。

 

読んで戴きありがとうございました。

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