41.レッドドラゴンスネーク 4
引き続き、アンリ視点です。
長い、長いです。もう主人公変わってない?って聞かれそうなくらい長いです。
討伐続きで読み苦しいところが多いにあると思いますがご勘弁ください。
だんだん残酷なシーンが出てきます。ご注意をお願いします。
どうぞよろしくお願いいたします。
体温と同じ温度にした石を掌に握り込むと俺は、トンネル状の洞窟へと向かって走り出した。
レッドドラゴンスネークが付いて来てくれるかが賭けだったが、俺の手の中にある石を餌か何かと勘違いしたのかうまく追ってきてくれた。
思いのほか自分の走る振動が、肋骨の傷に響いた。しかし、ここで足を止めることはできなかった。足を止めたが最後、あの世行きだった。
「俺、鬼ごっこって、あまり得意じゃあないんだよな」
子供の頃からかくれんぼの相手は、アンジュかテリュースだったので、内緒で負けてやる癖がついてしまっていた。息が上がる。いつもなら何ともない距離も、かなり遠くに感じた。
やっと洞窟の前に辿りつくと、少しレッドドラゴンスネークを待つ。レッドドラゴンスネークが洞窟内まで付いて来てくれなければ、意味がなかった。
レッドドラゴンスネークが狙いやすいように、俺自身の体温を少しあげる。
案の定、俺が洞窟に踏み込むと、それを追うようについて来た。
あとは出口まで走るだけだ。レッドドラゴンスネークは、後退ができない。ここまでくれば後は前に進むしかなかった。
出口付近には打ち合わせ通り、第3騎士団の騎士たちが待っていた。その中にテリュースやコンラットもいる。幼馴染2人の顔を見ると、少し落ち着いた気がした。
出口は少し高い所にある。俺は後ろのレッドドラゴンスネークを気にしながら、岩を登る。肋骨が折れている俺には、きついなんてものではなかった。痛みに視界が霞む。
この討伐訓練から帰ったら、ふかふかのベッドで1週間くらいゴロゴロしてやる。それぐらいの休みは取っても許されるはずだ。もう一生分くらい働いた気がした。
テリュースとコンラットの顔が見えた。あと少し、そのあと少しがとてつもなく遠く感じた。
「アンリ、がんばって!」
「あともう少しです。アンリ」
二人とも勝手に応援してくれるが、そう簡単なことではなかった。
(くそうーっ、身体よ動け!)
自分の身体なのに鉛のようだ。汗が目に入り、視界が霞む。
それでも順調にレッドドラゴンスネークは、後をついて来た。好奇心旺盛な子蛇だったことも、この作戦にとって良かったのかもしれない。
光が見えた。テリュースやコンラットの他に第3騎士団の顔も見えた。あと少しだった。
ふっと気が緩んだ瞬間、足元がグラリと崩れた。
(あああ、なんと運の悪い。あともう少しだったのに・・・・・、なんと短い人生だったことか)
と、目を瞑り、覚悟を決めたその時、ふっと身体が軽くなった。
「よくやった、後は任せろ!」
シヴサル団長の太い腕によって、引き上げられる。まさに危機一髪の状態だった。
15歳と言えども男、ある程度鍛えている俺は意外と重い、それなのに片手で引き上げるシヴサル団長の腕力って思わず見惚れてしまった。
(惚れてしまやろって・・・・・。やっぱり俺は可愛い女の子がいい。シヴサル団長には感謝のみ捧げておく。)
「お疲れ、アンリ」
テリュースに労われ、生還したことを感じた。
「氷魔法を使える者、前へ」
シヴサル団長の指示に、今度はコンラットが前に出た。氷魔法が使える者が3人とテリュースが加わり、レッドドラゴンスネークが穴から顔を出すのを待つ。
程なくしてレッドドラゴンスネークが、顔を出した。俺の目測はドンピシャだった。
後ずさることを知らないレッドドラゴンスネークは、顔が出たのだから身体も出そうと、前へ前へとぶつかって来た。
「レッドドラゴンスネークを凍らせろ!」
シヴサル団長の声に、4人が氷魔法を一斉に打ち出す。
レッドドラゴンスネークは炎を吐こうと口を開けたまま、凍って行く。
「よし、今だ。かかれ!」
剣を持ったシヴサル団長他数名が、レッドドラゴンスネークに飛びかかった。
凍ったレッドドラゴンスネークの首が、ゴトリと落ちる。
首が落ちる瞬間、レッドドラゴンスネークは最後の力で恨みがましい咆哮の後、口から炎を吐きだした。
死んでも、ただでは死ななかった。
「テリュース、よけろ!」
「危ない!」
炎の先にいたのは、テリュースだった。
読んで戴きありがとうございました。