4.お子様同伴のお茶会 3
今日に至るまでの苦労の日々を回想していたアンジュは、アンヌ同様に満足そうに微笑んでいるアーデル王妃様に目を向ける。
なんで子供たちまで巻き込むかな~ぁ。
王妃様に恨み言のひとつも、言ってしまいそうだ。
満面の笑顔の王妃様を前に、何も言えないけどね。
ここは大人しくお茶会が終るまで、耐えるしかない。
(がんばれ、私!)
アンヌは親子で賑わっている会場をさっと見回すと、
「やっぱりアンジュちゃんが、この中で一番かわいいわね」
と、恐ろしいことをさらりと口にした。
「お、お母様・・・・・・!」
やめてーっ! アンジュの心の叫びは、アンヌには伝わらない。
あまりにも突然のアンヌの言葉に、頭の中はまっしろ。身体はカキーン!と固まったまま。
アンヌの親馬鹿発言に、できれば穴があったら入りたい。
大きな声で、言わないで欲しかった。
絶対、周りにも聞こえているはずだ。
辺りを恐る恐る見回すと、注目を集めていないはずはなく。クスクスと忍び笑いが、あちこちから聞こえた。
いじめられっ子を作ってしまうのは、親にも責任があると思う。
これでアンジュがいじめられっ子になったら、絶対にアンヌのせいだ。
黄色みの強いふわふわの金髪を腰まで伸ばし、アーモンド形の大きな目に鮮やかなエメラルドグリーンの瞳、透き通るような白い肌に瞳と同じ色のドレスに身を包んだ姿は、まるで高級なビスクドールのようとアンヌたち家族は褒め称えるが、身内に褒められても嬉しくもなんともない。
身内贔屓って、言うじゃない。
自分のことは、自分が一番良くわかっている。
自分でもそこそこ可愛いかもとは思っているので(前世から比べると、かなりハイレベルなんじゃないかな)、不細工などとは決して卑下したりはしないが、身内の褒め言葉を真に受けて、自意識過剰にはなれそうにない。
それでなくとも朝昼晩と365日、父、母と3人の兄からは可愛い、可愛いと、猫可愛がりされているのだ。可愛いの、安売り状態。
アンジュの中での可愛いの価値は、とても低かった。
今日は3話、UPしました。