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タンポポ姫の恋の処方箋   作者: rokoroko
181/199

181.トゥルース領へ!

いっぱい書き溜めてから、公開する予定が・・・・・・。

ぜんぜん書き溜めることができませんでした。(>_<)

今日はクリスマスなので、取りあえずUP致します。

 テリュースとまったりベッドの上に寝転がっていると、いきなり扉が開き父のクロードが入って来た。


(うわぁ、お、お父様?)


 ここは一応テリュースの部屋なのだから、ノックくらいはして欲しいと思う。そんなこと一般常識、マナーだと思うのだけど・・・・・・。


(そんなこと、お父様には、とても言えない。恐い、恐い。)


 咄嗟に飛び起き、アンジュは何事もなかったようにその場に座りなおす。

 テリュースも同じように飛び起きアンジュとの間をあけ、反対側に腰を下ろした。


 二人とも何かをしていたと言うわけでもないのに、耳が赤い。何だかとても見られてはいけないところを、見られたような恥ずかしさだった。


(まぁ、お父様は何でもお見通しなので、そう言った意味で何もなかったことなど、ぜーんぶ解っていると思うけど。)


 実際、色気のいの字も何も無かったのだが、アンジュはしっかり何もなかったアピールだけはしておくことにした。


「お父様、私と殿下の間には、何もありません。二人とも清い関係のままですから、ご安心を」


 隣ではテリュースも顔を真っ赤にして、うんうんと同意している。


(だってやっぱり、恥ずかしいじゃない。親の前でベッドに二人、いちゃいちゃまったりなんてね。むふふふ・・・・・。)


「そんなことは、解っている」


 アンジュのアピールに、クロードはさして顔色も変えず、いつもの堅苦しさ満載の口調でピシリ!と言う。


(ふーん、解っているんだ。)


 これは信用されていると言うよりは、まだお子ちゃまだと思われている?って感じだった。


 一人娘がテリュースとは言え、男性と1つのベッドを共にしていると言うのに、それに関する反応はま――――ったくと言ってなかった。


(何度も言うけど疾しいことなど、何もないんだけどね。残念;泣)


「アンジュ、目は覚めたかね」

「・・・・・はい。お父様、おはようございます」


 本当にまったく気にした様子もないクロードに、アンジュは何もなかったアピールしたことを早くも後悔していた。


(だ、だって清い関係ですって・・・・・。は、恥ずかし過ぎる。)


「ああ、おはよう。身体の調子はどうかね?」

「はい、どこも悪くありません。大丈夫です」


 良く眠ったおかげなのか、アンジュの体調はとてもよかった。


「殿下、その後、毒の影響は?」

「うん、大丈夫。影響はもうないよ」

「それでは予定通り、進めさせてもらってもよろしいですかな?」

「ああ、頼む」


 テリュースが何かを承諾すると、クロードは満足げに頷く。それが合図のように、再び扉が開いた。

 アンリ、コンラット、侍女のタマラが、部屋の中へと入って来る。


「姫様、おはようございます。」

「おはよう、タマラ」

「顔色が良くなられましたね。では、用意をはじめましょうか?」

「用意・・・・・って?」


 タマラはアンジュに優しく微笑みかけると、辺りを見回す。そこに立つ男性陣に困ったような笑顔を向けると、


「今から姫様がお召し替えをしますので、殿方は隣の部屋への移動をお願い致します」


 お願い口調だが、有無を許さず男性陣に退出を促した。


 ここはテリュースの部屋なのに、そんなに勝手なことを言ってもいいの?とアンジュが思っていると、不思議なことに男性陣の誰からの苦情もなくみな隣の部屋へと移動していく。

 テリュースが一番先に出て行くと、クロード、コンラット、アンリが、その後に続いた。(何故だ?)


「さぁ、姫様、ご用意致しますよ」

「はい、お願いします」


 用意された桶に入った水で顔を洗うと、タマラが持参したドレスに、アンジュは袖を通す。

 初めて見るドレスは、トゥルース領に行く為に、母のアンヌが用意してくれたものらしかった。


 落ち着いたマリンブルーのドレスは、アンジュにとても似合っていた。

 髪はポニーテールに結い上げられ、ドレスと同系色のリボンで飾られる。軽く化粧を施され、淡いピンクの紅を引かれた。


 久しぶりのお洒落に、アンジュはワクワク感を止められない。


(ずっと外出時は、男の子の変装ばかりだったからね。これでも女の子ですもの。テリィが綺麗だと、思ってくれると良いな。テリィ、大好き♥)


 ―――――コンコン!


「用意は出来たかい?」


 ノックの音がして、テリュースが顔を出す。

 彼も着替えたようで、よそ行きの格好をしていた。白地に金の刺繍が施された裾の長いジャケットが、とても似合っていた。


「アンジュ、綺麗だ」

「ありがとうございます。テリィも格好いいです」

「うん、ありがとう」


 アンジュはテリュースに、見惚れてしまう。素敵過ぎて目が、離せなかった。


(異世界、最高!テリィ、素敵――っ!格好いい!ひゅーっ、ひゅーっ。)


 テリュースのよそ行き姿は、とても格好良かった。

 手足が長く鍛えられた身体はスタイルが良いので、とても決まっていた。


 テリュースもアンジュを、熱く熱の籠った瞳で見つめる。

 久しぶりの女の子姿に、見惚れてくれているようだった。


(なかなかイケてるでしょ。うふっ♥)


「もう、よろしいかな?」


 クロードにウンザリしたように言われ、アンジュの顔は朱に染まる。

 前を見ると、テリュースの顔も赤かった。


(だって格好いいんだもん。しかたないよね。)


「これですべて用意は、整ったな」

「用意は整ったって・・・・・?もしかしてこの後すぐにトゥルース領へ向かうのですか?」

「ああ、そうだ」

「そうだって・・・・・」


 どうやらアンジュたちは、これからすぐにトゥルース領に行かされるらしかった。

 ほんと、慌ただしい。


(朝起きて着替えたら、即トゥルース領へって、ちょっと急ぎ過ぎだよね。)


 まだ何の用意も、整っていない。着替えや向こうへ持って行くものなど、何一つ揃っていなかった。


(このまま手ぶらで、行かされるわけ?それって、何かと不便だよね。)


「今回トゥルース領に行くのは、アンジュにテリュース殿下、アンリにコンラット、トーイにタマラの6人とする」


 いきなりのクロードの発表に、アンジュはタマラを振り返る。

 一緒に行ってくれるとは思っていなかったので、タマラの名前を聞いてアンジュはじわじわと喜びを感じた。


「タマラも、一緒に来てくださるの?」

「はい。どこまでもご一緒して、姫様のお世話をさせて戴きますね」

「ありがとう。嬉しいわ。よろしくお願いします」


 タマラが一緒と聞いて、アンジュはとても心強かった。

 領邸にも侍女はいるが、タマラほどアンジュの事を解ってくれる侍女はいない。アンジュにとってタマラは、侍女と言うより姉のような存在、ほとんど身内も当然だった。


 テリュースからも先ほど一緒に行くと聞いてはいたが、クロードの口から改めて聞かされて確信に変わる。


 トゥルース領には次兄のアーサーや兄の婚約者のシルキーナ姉さまもいる。おじい様もおばあ様もご健在なので、退屈することはないと思うのだが、やはりテリュースと1年も離れなくて良いのが一番嬉しかった。


「アンリ、コンラット、殿下とアンジュを頼む」

「もちろんです。テリィとアンジュ姫を、この身に変えても御守りいたします」

「了解、了解。任せとけって」


 コンラットの騎士らしい返事に、クロードは満足そうにうなずいて見せる。しかし続くアンリの返事には、案の定クロードは渋い顔をしていた。


 クロードへの反発からなのか?このところアンリの態度は、とても悪い。

 昔は公爵家の3男らしく、言葉使いも態度も洗練されていたと思うのだが、最近は特に偉そうな態度を取るようになった。


 これでもいざとなったら頼りになるから、少々の口の悪さも許されるのかも知れないが、せめてこんな時くらい真面目にすればいいのにと、アンジュは思ってしまう。(わざとお父様を怒らせなくても、ねぇ。)


「アンリ、気を引き締めて、殿下やアンジュをを守れ!」

「解ってますって」


 ここは一言「はい」と言えば、クロードに長々と説教されることもないと思うのに、本当に我が兄ながら要領が悪い。

 このままではいつまでもクロードの説教が終りそうにないので、アンジュは先に話しを進めることにした。


「お父様、ここからすぐにトゥルース領へ向かうのですよね」

「ああ、その予定だが?」

「私、領へ持って行きたいものなど、いろいろ荷物があるのですが」


 このまま手ぶらでトゥルース領へ行くのには、いろいろ問題があった。


 トゥルース領へ持って行きたいものが、沢山ある。


(用意したアーサー兄様たちへのお土産も、どうするわけ?)


「アンジュ、荷物は後から送り届ける。心配しなくてもよい」


 よほど心配そうな顔をしていたのか、クロードに心配するなと言われた。着替えなど必要なものは後から、届けてくれるらしいかった。


 どうしてもアンジュたちは今からすぐに、トゥルース領へ行かなければいけないようだ。

 クロードの言うことはトゥルース公爵家では絶対なので、クロードにこれからすぐにトゥルース領へ行くように言われたら従うしかなかった。


「殿下、そろそろお願いします」


 前回ミエリッハ領へと行ったときは、見送りの人も大勢いたが、今回はクロード以外、誰もいない。寂しい出発だった。


(それにここは、テリュースのお部屋だしね。)


 テリュースの部屋は、誰でもが勝手に入ることは許されていない。セキュリティも万全だった。


 アンジュたちは本当に誰にも内緒で、領地に隠されるらしい。

 まるで恋愛小説の逃避行みたいで、アンジュはワクワクしていた。


「殿下、アンジュをよろしくお願いします」

「クロード、大丈夫だ。アンジュのことは、心配しなくていい。アンジュは私が守る」


 ―――――アンジュは私が守る。


 そう言われて、アンジュの胸はキュン♥とときめいてしまう。本当にテリュースが、好きだと思った。


「ありがとうございます。やらかし娘ですが、よろしくお願いします」


 クロードが再度深々と、テリュースに向かって頭を下げる。 


(やらかし娘って、ほんと失礼だよね。まぁ、間違ってはいないけどね。)


「ああ、大丈夫だ。解っている」


(この返事って・・・・・、テリィも私のことを、やらかし娘だと思っているってことだよね。ほんと失礼しちゃうよね。)


 しかしここは我慢、我慢。反論せずに、黙っていることにした。

 だって実際沢山やらかしているから、アンジュも文句は言えなかった。


「では、行こうか?」


 テリュースは軽く頷くと、前回のように「ゲート!」と、空間に手を翳し詠唱する。


 何もないところに、まるで黒いトンネルのようなものが現れた。


 前回は王宮の中庭の何もない空間に、黒いトンネルが現れたのだが、今回はテリュースの部屋の壁に大きな穴が空いたように見える。


 アンジュにとって2度目のゲートだが、これはこれで不思議な世界だった。

 壁にぽっかりと人が通れるほどの、黒い大きな穴が空いていた。


「アンジュ、おいで」


 テリュースがいつものようにアンジュを、手招きする。

 アンジュは素直に、テリュースの隣に近づいた。


「さぁ行くよ。いいかい?」

「はい、お願いします」


 綺麗なマリンブルーの瞳が、アンジュを優しく見つめる。

 手を差し出されて、アンジュは大人しくテリュースの手を取った。

 くぃっと引っ張られて、テリュースの腕の中へと抱き込まれる。

 前回は恋人つなぎだったが、今回はしっかりと腕の中へ抱きしめられていた。


 何度経験しても目の前に広がる真っ黒な空間に、1人で足を踏み入れるには抵抗があった。

 テリュースに抱きしめられていると、とても安心できる。


「さぁ、行くよ」


 テリュースがゲートの中へと、足を踏み入れる。

 しっかり抱きしめられているので、アンジュも引かれるように、続いてゲートの中へと入って行く。


 耳の中にキーンと、金属音が響いた。

 地面がグニャリと歪むような感覚が気持ち悪くて、アンジュは慌てて眼を瞑る。テリュースの胸に、縋り付いた。


 感覚は、ほんの一瞬のことだった。


「アンジュ、着いたよ」

「えっ、もう着いたの?」


 テリュースに呼ばれ目を開くと、そこはもうトゥルース領だった。

 しかも、領邸のアンジュの部屋に、直行状態だった。


 追い立てられるように、トゥルース領まで来てしまった。

 これからの生活が、どうなるのかは解らない。

 アンジュの隣には、今テリュースがいる。

 アンリにコンラット、トーイにタマラがいて、アンジュはとても心強かった。 

読んで戴きありがとうございました。

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