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タンポポ姫の恋の処方箋   作者: rokoroko
174/199

174.地下書庫の件のご報告

 今日で3日続けて、アンジュは薬草園に来ていた。

 アンジュが王都に居られる時間も、残すところあと4日になっていた。


 今日は昨日の図書館の地下書庫での一件を、テリュースたちに報告するのが、目的だった。


 カレンの告白は、今でも耳に残っていた。


 ―――――― 私、アンジュ様が、大好きなの。


 今でも信じられないカレンの告白と、彼女がとった行動だった。


 ここに集まったテリュース、コンラット、アンリ、トーイは、ここ最近のカレンの奇行を知っている。

 側室志願などもあり、昨日見聞きしたことはどうしても彼らに報告しておかなければいけなかった。

 なので、本日集まって戴いたわけなのだが・・・・・。


 アンジュは恥ずかし過ぎて(信じられなくて)とても自分の口からは報告できないので、トーイに頼んで説明してもらっていた。


(だってカレン様が、私を・・・す・・き・・♥って、自分では言いにくいよね。)


「カレン嬢の目的は、アンジュだったってこと?」

「実はそうだったらしいですよ。王宮図書館のあの薄ぐらい地下書庫で、熱烈に愛を囁かれていましたからね。アンジーくんが、ですけど」


(熱烈って・・・・・、ちょっと大袈裟だよね。でもほんと、怖いくらいだったよ。あんな告白も、あるのですね。)


「アンジュ、おまえって人たらしだと思っていたが、同性にまで惚れられるとは、ほんと半端ねぇな」

「うっ」それって褒め言葉じゃないよね。

「しかしスザンナ様に握られた弱味が、アンジュが好きだってことだろう。普通女性が女性を好きでも、弱味にはならないと思うけど」

「確かにそれほどの弱味だとは、思えませんね」

「まぁ、そう言う理由づけをしてでも、マークの妃候補が欲しかったってことだろうな」

「王族の妃候補が脅しの交換条件って、ちょっとレベルが低すぎませんか?普通だったら王族の妃候補って、貴族令嬢なら誰でも夢見るポジションでしょう?」


 いつか王子様が・・・・・って、女の子なら誰もが憧れるシチュレーションだよね。


「あのマークの妃候補だからね。すでに3人も失格になっているのだから、なりてもいなかったんじゃないか」


 酷い言われようだが、確かにその通りだった。

 ただでもテリュースの人気が高いのに、わざわざ人気のないダメ王族の妃候補になりたい令嬢もいないに等しかった。


「マークの妃候補になって、テリィの妃候補のアンジュと仲良くなれると思ったら、兄弟仲は悪いは、アンジュに近づくこともできない。スザンナ様やマークからは好き勝手言われて、『森の恵み亭』でのあの状況だろう。そこで破談になったわけだし。普通だったらそこで諦めるよな」

「普通だったらね。その後私に、側室にしてくれ!だからね。これがすべてアンジュへの愛ゆえってことになると、凄い執着だよね」


 本当に怖いくらいの、執着?愛情?だった。


「もしかしてカレン嬢は、私の恋敵になるのかな?」

「恋敵って、そんなものにはなりませんよ」


 テリュースが心配そうにアンジュを見つめて言うので、きっぱりと断言しておいた。


(私はテリィ、一筋だからね。テリィ、大好き♥)


「でも、テリィより、カレン嬢の方が行動的だよな。アンジュの為に手当たり次第って感じだぜ。まぁ、そのどれも空回りっぽいけどな」

「あと4日でアンジュは、領地だしね。このままにしておいても大丈夫じゃないかな」

「そうだな。アンジュは一応今も重病で、今後は領地で静養だし、アンジュが領地に帰ればアンジーも王都で見かけることはなくなるわけだしな」


 確かにこれから1年間は、アンジュもアンジーも王都にいないのだから、カレンに会うことはないと思う。

 冷却期間と言うことで、カレンの気持ちが覚めてくれることを祈るばかりだった。


「それにしても、喉が渇いたな。お茶の用意はまだなのか?」

「本当ですね。フレイには頼んでおいたのですが」


 いつものように薬学研究室付き侍女のフレイに、アンジュは今日も作って来たお菓子を渡して、3時頃にお茶の用意をするようにお願いしておいたのだが、すでに3時は過ぎているにもかかわらず、用意はなかった。


「私がもう一度、頼んで来ます」


 言ってコンラットが、奥へとお茶を頼みに行く。本当にきびきびと行動が早かった。


 しばらくしてお茶の用意に現れたのは、フレイではなかった。


「申し訳ありません。フレイさんは所要で出かけておりまして、私、マヤアと申します。すぐにお茶をご用意いたします」


 マヤアと名乗った侍女は、30代後半くらいの地味な女性だった。

 この薬草園に入れると言うことは、リシャール殿下の許可が出ている者なのだろうが、アンジュは初め見る侍女だった。


 アンジュがじーぃとマヤアを見ていると、彼女が慌てて顔を背けたような気がした。気のせいかもと思えるようなタイミングだったので、アンジュの気のせいかも知れないが、なんだか気になる態度だった。


 今日もリシャール殿下は、王宮の会議に出席していた。


 テリュースたちにカレンのことを、報告する分にはなんとか報告できても、(と言いても、全部トーイに報告させたのだけど、ね。)

 同性から愛の告白されたことをリシャール殿下に報告するのは恥ずかしかったので、ここに居られなくて少しほっとしていた。


 テーブルの上には今日はお茶ではなく、果実水が並べられていた。

 お菓子はアンジュが持ち込んだものではなく、誰が作ったのかクッキーのようなものが添えられていた。


「私が持って来たお菓子は、どうしたのでしょう?」

「もうしわけありません。フレイさんがおられないので、厨房で作ったものに致しました」

「そうなのですね。フレイはどうしたのでしょね」


 なんだか変な感じがするが、アンジュにはそれが何なのか解らなかった。

読んで戴きありがとうございました。

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