169.薬草園でお茶を
小さなお茶会の後、アンジュは薬草園で妖精たちのお手伝いをしていた。
「そろそろ時間ですね」
もうすぐ3時に、なろうとしていた。
薬学研究室側の扉が開いたかと思うと、リシャール殿下が顔を出す。
テリュースたちとは別々に、来られたみたいだった。
アンジュが挨拶をしょうとすると、リシャール殿下が怪訝そうな顔をする。
困った様な、怒ったような口調で、アンジュに訪ねて来た。
「きみは誰?どうやってここに入ったのかな?」
「えーと、リシャール殿下?」なんだか怖いんですけど・・・・・。
「ここは子供が入っていいところではない。早く出て行きなさい!」
リシャール殿下は見た目穏やかで優しそうに見えるが、実際は子供であっても容赦がなかった。
冷たい口調で言われると、さすがにアンジュでも何も言えなかった。
(マジ、泣きそうなんですけど。リシャール殿下、怖すぎです。)
「叔父上、それはアンジュですよ」
半泣き状態で狼狽えるアンジュを救ったのは、反対側の扉から入って来たテリュースだった。
リシャール殿下が怖すぎて、アンジュは扉が開く音にも気づかなかった。
「えっ、でもこの子?」
「その男の子、アンジュなんです」
言ってテリュースが、アンジュが被っていたハンチング帽を取り上げる。
帽子の中に隠していた黄色みの強いふわふわの金髪が、零れ落ちた途端、魔法が解けるように可愛い男の子は、男の子の格好をしたアンジュに姿を変えた。
「・・・・・アンジュ、だったのか」
「そうですよ、叔父上。今日はアンリの弟の、アンジーです」
テリュースがなんだか楽しそうに、アンジュの頭をいい子いい子と撫でる。
「アンジュ、すまない。薬草園に入るなり、見知らぬ男の子がいたので、驚いてしまった」
「いえ、私の方こそ、早く名乗ればよかったのに、ごめんなさい」
薬草園への鍵である、腕輪を見せれば一目瞭然なのに、そんなことにも気づかなかった。
「叔父上もアンジュも何二人で、謝っているのですか?叔父上をも騙せるほどの、変装だったってことでいいんじゃないですか」
「そうだね。本当にアンジュだと、気づかなかったよ。完璧な男の子だった」
「そう言われるのも、なんだか複雑ですね」男にしか見えないってね。
(だって、女の子だもん。)
「アンジュ、クロードから詳細は聞いている。大変だったね」
「リシャール殿下、ご心配をおかけしました。目もこの通り良くなりました」
「ああ、よかった。それで来週より、領地に帰るのそうだな」
「はい、1年間は向こうで過ごすようにと、言われています」
「私もクロードの意見に賛成だ。ここにいたのでは、皇太子争いに巻き込まれて、傷つけられるだけだからね。重病説が出ている今が、よい機会だろうね」
「私は大丈夫だと思うのですが、父の命令は絶対ですからね。しかたないです」
「1年なんて、アッと言う間だと思うよ。楽しんでおいで」
「はい」
「アンジュ、今日のお菓子は何だい?」
テリュースがもう待ちきれないとばかりに、お菓子を催促する。
アンジュが合図を送ると、薬学研究室付き侍女のフレイが、てきぱきとお茶の用意を始めた。
「今日のお菓子は、レモンとローズマリーのケーキとレモンタイムのクッキーです。どうぞ召し上がれ」
読んで戴きありがとうございました。
毎日1話UPしようと決めてUPしてきましたが、これが結構甘かった。
毎日追われるようにUPしています。
今日はちょっと途中になってしまいました。ごめんなさい。