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タンポポ姫の恋の処方箋   作者: rokoroko
168/199

168.小さなお茶会

 今日はアンリに連れられ、アンジュは薬草園に来ていた。

 クロードに期限を切られた1週間の、1日目だった。(残り6日なのです。)


 もちろん今日もアンリのお古を着て、男の子に変装している。

 タマラのおかげで、何処からどう見てもアンジュは可愛い男の子だった。


 今日のファッションは、薄いベージュ色のシャツに、茶色の膝丈パンツ、同色のサスペンダーに、白いハイソックスに革靴と、最後にハンチング帽の中に、黄色の髪を隠して完成だった。

 これもすべて、アンリが8歳の時のものだった。


(な、何故だ?って、もう慣れたけどね。)


 ここへと連れて来てくれたアンリは、アンジュを薬草園に置くと、さっさとテリュースのところに行ってしまった。


(まったく仕事、熱心だよね。)


 どうせ3時のお茶の時間には、テリュースと一緒に戻って来ることは解っていた。食いしん坊のアンリが、アンジュが作ったおやつを、逃すはずがなかった。


(まぁ、この薬草園は、安全だからね。)


 この薬草園は許可のないものは、入ることは出来ない。

 アンジュが自分で許可を出したり、扉を開けない限りは安全だった。

 中には妖精たちもいるし、アンジュひとりでいても、なんの危険もなかった。


(・・・・・って、前にレレミアたちに、ここにいる時に拉致されたんだけど。まぁ、あれは自分で出て行ったのが原因なので、カウントには入りませんよね。) 


「こんにちは、妖精さんたち。お久しぶりです」


 この薬草園に来るのは、アンジュが目覚めてから初めてのことだった。

 アンジュに気づいた妖精たちが、わーっと集まって来る。

 男の子に変装しているアンジュだが、妖精たちは気にならないみたいだった。


『アンジュ、きた。おひさしぶり』

『アンジュ、げんきになった?』

「はい、ありがとうございます。すっかり元気になりました」

『め、みえるようになった?』

「はい、目もみえますよ」

『よかった。よかった』

『うれしいね』

「ありがとう」


 体調が回復したことを妖精たちに喜んでもらえて、アンジュはとても嬉しくなる。

 妖精たちも、本当に嬉しそうだった。


「今日はお菓子を用意して来ました。こちらのテーブルに、広げますね。少し早いですが、みんなでお茶にしましょう」


 今日は妖精さんたちの為に、小さめのクッキーとパウンドケーキを沢山作って来ていた。

 飲み物は甘い果実水を、小さなカップにいっぱい用意した。


 まるで妖精さんたちとの、小さなお茶会だった。


「はい、どうそ。召し上げれ」

『わーい、おかし』

『いただきまーす』

『おちゃかい、おちゃかい』


 妖精たちは大喜びで、お菓子を食べ始める。

 小さく作ったつもりのクッキーは、、それでも妖精さんの顔くらいの大きさだった。

 大きなクッキーを、美味しそうに頬張る妖精たちの姿は、とても可愛かった。


(異世界、最高!妖精さん、可愛いです♥)


「本当にここの薬草園は、素敵な場所ですね」


 久しぶりに見た薬草園は、とても美しかった。

 薬草たちはみんな活き活きと、成長していた。

 これもみんな妖精たちが、一生懸命にお世話をしているからなのだろうと思う。


「いつも丁寧にお仕事してくれて、ありがとうございます。これからも、頑張ってくださいね」


『アンジュ、どうしたの?』

『なにかあった?』


 いつもとは違うアンジュの様子に、妖精たちから心配の声が上がる。

 妖精たちにまで、心配を掛けてしまったみたいだった。


「これは内緒ですが、しばらくの間、領地に帰ることになりました」


 今日は妖精さんたちにアンジュがトゥルース領へ帰ることを報告に来たのだが、実際に言葉にするとなんだか寂しかった。


(これが永遠のお別れって、わけでもないのに、ね。)


『アンジュ、トゥルースにいく?』

「はい」

『だいじょうぶ、トゥルースすぐいける』

「妖精さんたちが、会いに来てくれるのですか?」


 妖精たちからトゥルース領までの距離など、何でもないように言われて、アンジュは驚いた。


 そう言えば妖精さんたちには、妖精の輪と言う移動手段があることを思い出した。


 妖精の輪は、直径10センチくらいのキラキラ光る輪だった。

 空間にぽっかり穴が、開いているように見え、妖精たちの移動手段として使われているものだった。


 メグスリの木を北のフィンメースの森に探しに行ったときに、アンジュも妖精の輪を使って連れて行ってもらったことがあった。


『そう、あいにいく』

『トゥルースにいく』

「ありがとうございます。ではトゥルースでも、お会いしましょうね」

『アンジュとあう』

『たのしみ、たのしみ』


 会いに行くと言われて、アンジュは嬉しかった。


 トゥルースの領地でも妖精たちに会えると思うと、なんだかとても心強かった。

読んで戴きありがとうございました。

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