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タンポポ姫の恋の処方箋   作者: rokoroko
162/199

162.ハーブカフェ『レモングラス』1

 いつものように市場の少し手前で、馬車が止まる。


 ここでアンジュ達を下ろした後、少し離れた馬車の駐車場みたいなところで、待機すると言うことだった。


 アンリとテリュースが、先に馬車を降りて行く。

 続いて降りようとしたアンジュだが、馬車につけられた階段はかなり高かった。


(これをひとりで降りる訳?足の長さが、足りなさすぎるよね。)


 アンジュが自分のいる位置から、地面までの距離に怯んでいると、


「アンジー、おいで」


 それに気づいたテリュースが、アンジュを呼んだ。

 呼ばれ慣れない自分の名前に、何故かドキドキした。

 これはテリュースの声が、いつもより甘さを含んでいるからだと思う。


 アンジュが目覚めてから、さらにテリュースが甘くなったような気がするのは、気のせいばかりではないと思う。

 前からアンジュには優しかったテリュースだが、今は彼の態度やしぐさに愛情を感じていた。


「はい。よろしくお願いします」言って、アンジュが両手を差し出す。


「今日のアンジーは男の子なんだから、おいでって言われたら私に向かって、飛びこんで来なくちゃ」

「えーっ、そんなの」恥ずかし過ぎる。

「さぁ、アンジー」


 促されテリュースに向かって、そーっと両手を差し出す。

 テリュースの腕の中へ飛び込むなんて、アンジュにはハードルが高すぎだった。

 いつものなれたエスコートとは違い、子供のように抱き上げられることにも抵抗があった。


(テリィ、お顔が近いです。)


 ここでもアンジュは簡単に、抱き上げられてしまう。

 テリュースはとても大切なものを扱う様に、優しくアンジュを馬車から下ろしてくれた。


「ありがとうございます」

「どういたしまして」


 なんとかお礼をいったものの、アンジュは恥ずかしすぎて、テリュースの顔を見れなかった。(うっ、どうしょう?)


「アンジー?」


 きっと今のアンジュの顔は、真っ赤だと思う。本当に久しぶり過ぎて、どうしていいのかアンジュには解らなかった。(1か月ぶりだものね。) 


「お待たせしました。遅くなって申し訳ありません」


 まさに天の助け、割って入った声の主はトゥーリだった。


(ナイスタイミングです。トゥーリさん。)


 今回行くお店は、どこも初めてのところなので、トゥーリには本日の案内をお願いしていた。

 遅くなったとトゥーリは言うが、まだ約束の時間にはなっていない。こちらの方が少し早く着いたみたいだった。


「いや、時間通りだ。今日はよろしく頼む」

「あれ、アンジュはまだ?」


 言ってトゥーリが、キョロキョロと、辺りを見回す。

 1か月前と身長は変わっていないはずなのに、アンジュは彼女の目に入らないみたいだった。(うっ、悲しすぎる。)


「トゥーリ、私はここにいます」


 なんとかトゥーリの視界に入ろうと、ぴょんぴょん飛びながらアンジュは自分の存在を主張する。

 途端、周りから大爆笑が上がった。


(な、なに?)


「アンジュ、今日は可愛い男の子なのね。とっても似合っている」


 アンジュであることを確認しながらも、クスクス笑っていると言うことは、最初から解っていたみたいだった。


「トゥーリ、今日はアンジュではなく、アンジーだから」

「そうそう、今日の設定は俺たち3兄弟。アンジーは末の弟ってことで」

「まぁ、3兄弟ですか?楽しそうですね」

「そうだね。今日はよろしく」

「はーい。お任せください」


 アンジュたち4人は、目的地に向かって歩き出す。

 降車場から少し歩くと、中心部の公園へとたどり着いた。

 道路を挟んだ反対側に、色とりどりのお洒落なお店が並んでいる。


 その中でもひときわ目立つ、木製の建物があった。

 ログハウスと言うよりは、ラグジュアリーハウスと言うものだと思う。

 前世のフィンランドで有名な、マシンカットログハウスと言われる建物だった。

 壁が鮮やかな赤レンガ色のカラーリングがされており、窓枠や階段、手すりなどが白く塗られていて美しい外観をしていた。


「美しい建物ですね」

「でしょう。さぁ、中へどうぞ」


 扉を押すとカウベルのドアチャイムがカランコロン♪と鳴る。何だか懐かしい音がした。


「いらっしゃいませ、にゃん」


 トゥーリに聞いていた獣人のウエイトレスさんに、迎えられる。

 アンジュが想像していた何倍も、獣人のウエイトレスさんは可愛かった。


「4人、お願いします」

「はい、どうぞにゃん」


 席まで案内される間、アンジュの目の前には、もふもふのしっぽが、楽しそうに揺れていた。


(あ~ぁ、もふりたい♥)


読んで戴きありがとうございました。

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