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タンポポ姫の恋の処方箋   作者: rokoroko
159/199

159.トゥーリからの報告

 アンジュが作ったプロティンは、自分でも驚くほどの効果だった。


 自分の身体が、日に日に元気になって行くのが解る。

 飲み始めて3日後には起きたり座ったりが、自分の意思でできようになった。

 今まで鉛のように重かった身体が、嘘のように軽く感じられる。

 本当に、よく聞くお薬だった。(プロティン、最高!異世界、万歳!)


 先日などは歩行器を使って、少し歩くことができた。

 あまり長時間の移動は無理だが、自分の部屋から食堂までなら歩行器を使って移動することができるようになった。

 ご飯を食べに行くくらい、自分の足で行きたいと思う。お腹も空くし、ちょうど良い距離だった。


 この分だと領地に帰らされる日も、そう遠くはないと思う。


 領地に帰ることは、アンジュ自身は嫌ではない。


 しかし、クロードはアンジュを、1年隠すと言った。

 隠すと言うことは、大人しくしていなければならないと言うことで、それを思うとアンジュは気が重かった。(1年って、長いよね)


 まぁ、それもこれもアンジュを、守る為なのだから仕方がない。

 それにクロードの言うことは絶対なので、従うしかなかった。


 そうなってくると王都で出来ることは、今の内に済ませておかなければならない。いつクロードに命じられてもいいように、用意しておかなければならなかった。


 なので今日はトゥーリに来てもらって、王都でやっておくことの総チェックをすることになっていた。



 トゥーリが来たと連絡を受けたアンジュは、歩行器を使って応接室へと向かう。


 プロティンのお陰で筋肉がついたせいか、かなり動きがスムースに移動できるようになった。

 それまではアンジュの部屋に直接来てもらうか、誰かに抱かれて移動していたのだから、かなりの進歩だった。


 最初はみんなが労わってくれて、優しく抱いて運んでくれたのだが、日を追うごとに扱いが悪くなっていた。

 アンリなどは、まるで荷物扱い。優しさのかけらもなかった。

(酷い!)


「お待たせしました」

「アンジュ、凄いわ。もう歩行器を使って、動けるようになったのね」

「はい、この通りです。動けなかった時が、嘘の様です」

「ほんと、よかったわね」

「はい・・・・・・」


 今までの苦労が解っているだけに、トゥーリは僅かな進歩でも本当に喜んでくれる。アンジュには、それがとても嬉しかった。


「さぁ、打ち合わせを始めましょうか?」

「はい、お願いします」


 アンジュが寝ている間に進められていたお仕事の進行状況を、トゥーリが話をしてくれる。


 バーベキューのお店に、レレミアたちのハーブカフェ、美容のお店に、先日のトレーニング器具の販売などなど。


「えーーーーっ、そんなに進んでいるのですか?」


 1ヶ月も眠っていたアンジュは、目覚めたら前世のおとぎ話の浦島太郎状態だった。


 1ヶ月も眠っていたせいで、やりかけだったはずの事業は、すでにそのほとんどが終了していた。

 すべてが、開店してしまっていた。

 ほんとトゥーリの手腕は凄かった。1ヶ月で3店舗もオープンさせるなんて。普通の人ではできないと思う。


 ――――――― 私、何もしていないのに・・・・・。


 アンジュは、まるで浦島太郎だった。


(私は誰?ここは何処?って感じだよね。)


 まぁ、お店のオープンはそこで働く人たちにとって、死活問題だからね。アンジュが寝ているからと言って、待てるはずがなかった。


「バーベキューのお店は、実際自分でも食べたことがあるし、アンジュがレシピをいろいろ残してくれていたので、楽だったわよ」

「お役にたててよかったです」


 バーベキューのお店は、目が不自由になる前にやることはやっていたので、あとはアンジー商会の者たちが、オープンに向けてテキパキと動いてくれたみたいだった。(ほんと優秀な、商会員たちだよね。)


 店名は、そのままバーベキューのお店となったらしい。


「バーベキューの、お店ですか?」

「そう、バーベキューのお店よ」


 もっとお洒落な名前はなかったのかと一瞬アンジュは思ったが、解りやすい方がよいのかもしれないと思う。

 まぁこの世界でバーベキュー料理自体が初めてのことだし、まぁいいかって感じだった。


「そう、それで今、王都での2号店の用意をしているところなの」

「凄い、もう2号店を?」

「流行は作られる。流行は待っていては、作れないのよ。何事も流行になる前に、動かなくてはね」

「おお・・・・・」


 アンジュは思わず、パチパチと拍手を贈る。確かに、名言だった。


(トゥーリ、凄いです。)


「それでハーブカフェの方はね、獣人のウエイトレスを3人雇い入れたの」

「獣人さんの、ウエイトレスですか?」


 はっきり言ってアンジュは、今まで獣人に会ったことがない。

 この世界は獣人たちの国があるのは有名なはなしだし、数は少ないが王都にも何人かいることは知っていた。

 カフェで働くウエイトレスに3人も雇ったと聞いて、驚いてしまった。


「とても可愛い子たちよ。アンジュが領地へ帰る前に、一度一緒に見に行きましょうね」

「はい、行きます。行きたいです」


 どう言う経緯で3人も雇うことができたのかは解らないが、もふもふの彼女たちに会えると思うと、アンジュはとても楽しみだった。

 メイド服の獣人さんって、きっと可愛いと思う。


(獣人さん、最高!もふもふ、素敵!)


「レレミアたちもいろいろ勉強して、かなり使えるようになったわよ」

「そうなのですか?」

「今ではケントが一番、ハーブティを入れるのが上手くなって、お客様にとても好評なの」

「まぁ、あのケントがですか?」


 レレミアたちのハーブカフェは、店に出すメニューのレシピは先に渡していたし、識字率の低いこの国の人たちに合わせてメニュー表はイラスト入りで作成してあったので、それを見ながら色々用意してくれたみたいだった。


 こちらは南のブラギニルの森の伐採木を使っての内外装に、自然派を意識させるような森のコテージ風のお店に仕上がったらしい。


 それにはリシャール殿下や、森番さんたち、テリュースたちもかなり協力してくれたみたいだった。


 早く身体を元通りにして、見に行く日が楽しみだった。


 こちらのカフェの店名は、ハーブのお店『レモングラス』


 お洒落なのか、そのままなのか解らない店名だった。


 (私もレモングラスは好きだから、別にかまわないけどね。)


 トゥーリの話によると、バーベキューのお店も、ハーブカフェも、既にオープンしていてかなり繁盛しているらしい。


 ミエリッハ子爵家の厨房から修業に来ている2人の料理人も、一生懸命修業に励んでいるらしい。順調で、何よりだと思う。


「じつわね、最初に戴いた美容のお店も、アンジュには悪いけど、すでにオープンさせて貰っちゃいました」

「えっ?」


 な、なんと最初にトゥーリのお願いしていた美容のお店も、すでにオープンしているみたいだった。


 アンジュはもう大口を開けて、トゥーりを見つめるしかなかった。


(なんて早業、凄すぎる。)


 アンジュが考えた化粧品にボディソープ、シャンプーにリンス、トリートメント、香水などなど美容に関するものを売っているお店だった。


 こちらも伐採木を使った、自然派っぽいお店にしたらしい。

 伐採木は沢山あるからね。有効利用させて貰っていた。


 この世界ログハウスは珍しいので、どのお店もかなり目立つ建物となっているようだった。


 お店の名前を聞いて、アンジュは恥ずかしくなってしまった。


 アンジュの名前からとって、天使(エンジェル)とつけたらしい。


(天使の店だよ。なんだか綺麗になれそうなお店だよね。)


 アンジュが眠っていた1ヶ月は、それだけのことができる時間だった。


 ほんと長い間、寝ていたものだと思う。

 それによって、視力を取り戻せたのだから後悔はないとは言えないが、仕方がないと思う。

 生きて今、アンジュはここにいるのだから、これからまた頑張ればいい。

 アンジュの中には、まだまだいろいろなアイデアがあった。


「アンジュ、プロティンも天使の店で売るから、そのつもりでいてね」

「プロティンも、ですか?」

「まだ、治験とかいろいろなことをクリアしてからになると、思うけどね」

「そうですか。よろしくお願いします」

「だいたい、今報告しておくことは、これくらいかしら?」

「はい、そうですね」う~ん。初耳ばかりだった。 

「では、次はアンジュがもう少し自分の力で歩けるようになったら、変装してオープンしたお店を見に行きましょう」

「はい。楽しみにしていますね」


 早く自分の力だけで、歩けるようになりたいと思う。

 アンジュは早くトゥーリと、変装してオープンしたお店を見に行きたかった。

 

読んで戴きありがとうございました。

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