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タンポポ姫の恋の処方箋   作者: rokoroko
137/199

137.商会を作ろう!

 結果から言えばトーイは、まーたく、これっぽっちも役に立たなかった。


「あら、アンジュ、今頃気づいたの。ほんと人を見る目がないわね」

「だって、トゥーリの弟ですよ。しかも双子なんだし、少しはそっちの才能もあるかなぁと思って」

「まぁ双子と言っても、べつものだからね。それに私はこんなの(トーイ)と、一緒にされたくないわ」

「こ、こんなのって・・・・・?」


 トーイがガクリと、肩を落とす。

 こんなの呼ばわりされて、かなり堪えているみたいだった。


(まぁ、本当に役に立たなかったからね。)


 双子と言っても、何でも一緒と言うわけではないみたい。

 当たり前の話だが期待していた分、アンジュもかなりがっかりしてしまった。


「トーイが、ここまで使えないとは・・・・・」

「ひ、姫さん、そんなにがっかりされても、俺も困ります。それにトゥーリもこうして帰って来たことだし、俺はお役ごめんってことで」

「まったくお役にもたっていないけど、ね。まぁいいわよ。トーイは自分の研究室に帰りなさい」

「やった!姫さん、またね」


 トゥーリからの許可が出たところで、これ以上何かを言われては堪らないと、トーイはさっさと逃げだした。

 こんな時だけ逃げ足は、早かった。


「で、どこまで話は進んだのかしら?」

「えーと、全然進んでいませんね」

「まぁ、そうでしょうね。さてこれからどうするか?私とアンジュが王都にいて指示を出せば、動いてくれるような人物が欲しいわね」

「そうですよね。今回のことで私自身、まーたく役に立ちませんでしたからね。トーイのことばかり言っては、いられませんよね」


 今回、本当にアンジュは、役立たずだった。

 商売って信用が一番だから、13歳の女の子の話など誰も聞くものはいなかった。


 トゥーリだって23歳、まだまだ若造の部類だ。

 13歳のアンジュよりは、成人しているだけましかもしれないが、大人たちから見れば、年齢も実績も少なかった。


 それでこのジレンマ脱却の為に、考えついたのが商会を作ると言うことだった。


 商会組織を作るとして、人材はどうやって募集するのか?

 はたしてアンジュとトゥーリに、人を見る目はあるのか?


(なさそうだよね。私も自身はなかった。)


 二人だけでは、不安しかなかった。


 そこでアンジュは、このフランドール公国で一番人を見る目があるはずの宰相(クロード)に丸投げした。


「お父様、助けてください。もう私とトゥーリ様の二人だけでは、手に負えません。なので商会を作りたいのです。どうか力を貸してください」


 じーぃっと見つめ、涙が浮かんできたウルウルの瞳で、クロードに訴えかける。

 両手を胸の前で組み、まるで祈りを捧げるようにお父様、お願いと首を傾げた。


 グビリとクロードの喉が鳴る。焦ったようにアンジュから目を反らすと、はっきりと頷いてくれた。


「わかった。人材はこちらで見つけておこう。」

「ありがとうございます。お父様」

「それでどんな人材が欲しいのかな?」


 どんな人材って、仕事ができる人材だよね。

 とりあえず中年くらいの、年齢の人をお願いしたかった。

 それをどのようにクロードに告げようかと思っていると、出来る女トゥーリが要点をまとめて、依頼を言葉にした。


「トゥルース公爵、商会を作るにあたって必要な人員は、管理を任せられるほどの年配の方が欲しいと思います。それから営業ができる方、それと経理が達者な方、とりあえずこの3人は絶対にはずせません」

「うむ、そうだな。まずは最低でも3人だな」

「はい、よろしくお願いします」


 なんだかクロードとトゥーリの間で、いろいろなことが決まって行く。

 二人の会話はまさに打てば響くと、言った感じだった。


 アンジュはここでも、役立たずだった。


(前世では、勉強ばかりしていたからね。こう言ったお仕事の話になると、ほんと解らないことが多すぎだった。)


 クロードが選んだのは、管理を任せることのできる、エーオス・セヴィオリッグ子爵。40代半ばのなかなか渋めの男性だった。

 銀髪にグレーの瞳。黒の三つ揃いを着ているせいかちょっと見、執事っぽい雰囲気があり、仕事が出来そうな感じだった。


(まさにデキる男って、感じだよね。)


 子爵様が私たちと一緒に働いてくれるかが、不安だった。


 営業はテミティ・カーリテック、20代後半の男性で、綺麗な金髪にアンバーの瞳。明るくて、言葉を巧みに操る感じが、頭のよい営業向きだと思う。綺麗な男の子と言った男性だった。


 そして最後の経理にはエイン・カリルトン、20代前半の女性だった。

 前世の漫画ではないが、髪を三つ編みにしていて、瓶底眼鏡をしていた。

 仕事さえできれば容姿には、拘らない。

 どんな人なのか一緒に働いてみなくては解らないが、嫌な感じはしなかった。


(さぁ、これで商会ができるぞーっ!)


 これからもっと楽しくなりそうな予感がする。


「トゥーリ、良い商会ができそうですね。お仕事いっぱい、頑張りましょうね」

「ほんと、今まで以上にアンジュと、お仕事するのが楽しみだわ」


 色々なことが決まって行くにしたがって、なんだかワクワクしてきた。これからどんなことをしようかと思うと、楽しみで仕方がなかった。


「二人とも今までの仕事が忙しかったから、人を増やしたんだからな。人数が増えたからと言って、仕事を増やしたのでは本末転倒じゃないか」

「あははは、そうですね。少しペースダウンしないと、いけませんね」

「少しだけか?」


 クロードにジロリと睨まれて、アンジュは首を竦める。

 人数が増えてこれからもっと楽しくお仕事ができるのに、ペースダウンなんてしたくはなかった。

 とりあえずここは大人しく、従順にしておくことにした。


「はい、善処します」

「まぁ、ほどほどにな」

「お父様」

「なんだ?」

「お父様、だーい好き♥」


 アンジュがいつものリップサービスを言葉にすると、クロードの顔が朱に染まった。耳まで赤い。本気で照れているようだった。


 この国の宰相様も、娘には弱かった。

 まだまだこの手は、しばらく使えるみたい。


(お父様、可愛い。だーい好き♥)


読んで戴きありがとうございました。

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