表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タンポポ姫の恋の処方箋   作者: rokoroko
129/199

129.晩餐

 ちょっと上等なドレスに着替えお洒落したアンジュは、テリュースにエスコートをされ、晩餐の席へと向かう。


 自分で作った料理なので新鮮さはないが、エビフライは久しぶりなので楽しみだった。


(今世では、はじめてだよ。楽しみだよね。)


「アンジュ、お疲れ様」

「はい、テリィもお疲れ様です」

「今日の晩餐は、どんな料理が食べれるのかな。楽しみだね」

「こちらの領は海に面しているそうです。海の幸の料理もありますので、楽しみにしてくださいね」

「海・・・・・、そうかミエリッハ領は、海に面しているからね。その顔だと、美味しいものができたようだね」

「はい。テリィの為にがんばりました」

「ありがとう。それは楽しみだね」


 扉が開かれると、みんなすでに席についてアンジュたちを待っていた。


 2つ空いた席の左側にコンラットにアンリ、右側にエルにトゥーリにトーイが座っていた。


 レレミアは、ミエリッハ子爵家側に座っていた。ケントは使用人側なのか、給仕の中に姿があった。


 アンリの隣にテリュース、エルの隣にアンジュが座ると、飲み物が運ばれてきた。

 テリュース、コンラット、アンリ、エル、トゥーリ、トーイはワインを、アンジュは果実水にした。

 今、ワインなど飲んだら、絶対に寝てしまう。アンジュはアルコールに、強くはなかった。


「さぁ、皆様。今宵は我が領の食材を使った、アンジュ様の最高の料理をお召し上がりください。フランドール公国に、栄光あれ!」

「「「「「フランドール公国に、栄光あれ!」」」」」


 ヴェルダリスの短い挨拶のあと、みんなが一斉にグラスを掲げる。

 前世の乾杯みたいなものだった。


 テーブルには、前菜から運ばれてくる。

 最初はトマトのカプレーゼと、マグロとアボカドのサラダが、ワンプレートに綺麗に盛り付けられた前菜だった。


 王都とは違いこの辺は輸送に時間をかけなくても良い為、畑で十分に熟れたトマトが食卓に上がる。

 良く熟れたトマトにモッツァレラチーズとバジルを、オリーブオイルと黒胡椒で味つけしたもので、見た目も美しいかった。

 マグロとアボカドのサラダは、醤油とマヨネーズで味つけしてある。

 こちらも色バランスの、美しいサラダだった。


 マヨラーのコンラットは、マグロとアボカドのサラダがお気に召したようだった。


「アンジュ姫、美味しいです。この赤い肉は、何の肉ですか?」

「マグロと言うお魚の身なんです。新鮮なものだったので、今回は生でアボカドとあえてみました。美味しいでしょ」

「マグロ?・・・・・魚ですか?初めて食べましたが、美味しいですね」

「そうですか。お気に召してよかったです」


 ミエリッハ子爵家の方たちも、恐る恐る前菜を口にすると、次の瞬間目を見張る。そして今度はパクパクと食べ始めた。

 ミエリッハ子爵家の方たちにも、お気に召したらしい。

 みんな綺麗にお皿を、空にしていた。


「・・・・・・美味しい」

「お父様、私こんな美味しい料理、初めて食べました」

「うんうん。私もだ。世の中にこんな美味しい料理があったとは・・・・・」


 次に運ばれてきたのは、エビフライだった。


(やほーっ、エビフライだよ。この世界に海老があると解れば、いろいろな料理が作れるってことだよね。)


「この料理にはタルタルソースかオーロラソースをかけて、お召しあげりください」


 アンジュが説明すると、みんな好みのソースをかける者、両方のソースを試してみる者といろいろだった。

 フォークとナイフで切り分け、口へと運ぶ。


 口に入れた瞬間サクッ!と音がして、次の瞬間プリプリの海老の感触が口の中に広がる。

 噛みしめると外側のカラリと揚がったパン粉と、海老の旨みが1つになり、とても美味しかった。


(海老って、美味しいよね。海、最高!)


 みんな食べることに夢中で、とても無口だった。


「まぁ、これがエビ?」 

「はい、エビフライと言います」

「こんな料理、初めて食べました。エビがこんなに美味しいなんて知りませんでしたわ。この調理法も、初めてです」


 まぁ、茹でるだけの調理法でしか食べたことがなければ、そう思うよね。

 この世界、油はとても高価な物なので、揚げると言う調理法はまだ広まっていなかった。ちょっと高カロリーだしね。

 

「アンジュ、このエビフライって、本当に美味しいね。タルタルソースも、オーロラソースも、どちらのソースも良く合っている」

「そうですか。お気に召して、良かったです」

「王都でも食べられると良いのだが・・・・・」

「そうですね。明日は海に行って、海老やお魚を買って帰りませんか?」

「うん、いいね。買って帰ろう」

「はい。明日が楽しみですね」


(やったーっ!これで明日は、テリィと海デートに決定した。)


 続いてすりおろしじゃがいものポタージュスープ、鶏肉の赤ワインソースかけと続いた。


 みんな初めての料理に驚き、感動し、すべてを完食していた。

 ほんと作った者としては、嬉しいかぎりだった。


 パンのディップも、好評だった。

 王都でアンジュの料理を食べなれているテリュースやコンラット、アンリやトーイも、満足してくれたみたいだった。

 トゥーリは眼をキラキラさせて、今度は海の幸料理の店も良いかもしれないなんて呟いていた。


(海の幸、美味しいよね。ほんとにお店のこと、考えてもいいかも。)


 締めのプチケーキのアイスクリーム添えなどは、アイスクリームを知らないミエリッハ子爵家の方たちには大変好評だった。

 甘いものは別腹みたいで、男性も女性もみんな完食していた。


「ふぅ~っ」トーイが、自分のお腹を擦る。


 膨らんでいるように見えるのは、気のせいではないと思う。

 アンリもお腹を擦っているところをみると、かなりの量を食べたみたいだった。


(いったいおかわり、何回したのかな?腹も身の内って、言うのにね。)


「アンジュ様、本当にありがとうございました。素晴らしい料理でした」


 ヴェルダリスが感動したと言わんばかりに、近づいて来る。

 エルがサッと立ち上がると、アンジュとの間に割って入った。ほんと騎士の鏡、反応の速さはピカイチだった。

 アンリやトーイは、食べ過ぎで、全然動けていない。護衛として、どうなの?と心配になる。


「な、何もしません。ただアンジュ様に、お礼が言いたかっただけで」


 両手を上にあげ危害を加える気はないと、ヴェルダリスが情けない顔をアンジュに向ける。

 エルはすでに抜刀していて、いつでも切れる状態だった。(危ない、危ない)


「解りました。お礼はもう結構です。エル、剣をおさめて」

「しかし、姫様?」

「大丈夫です。一先(ひとま)ず引いてください」

「はい、(かしこ)まりました」


「それで、アンジュ様にお願いが・・・・・」

「またお願いですか?明日の食事は、作りませんよ」


 今日はいっぱい頑張ったのだから、もう許して欲しかった。


(やっぱり、もう帰りたいかも、だよね。)


読んで戴きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ