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タンポポ姫の恋の処方箋   作者: rokoroko
120/199

120.ミエリッハ領へ行こう!

 ゴロゴロドッカ――――ーーーーン!


 大きな雷の音に、アンジュはビクリと身を竦ませる。

 本当は両耳を手で塞いで蹲りたいところだが、今はそうする訳にはいかなかった。


(雷、怖いよ~ぅ;泣)


 外は雷雨、そしてトゥルース公爵家のクロードの書斎では、


「なに?ミエリッハ領へ行くだと、そんなことは絶対に許さん!」

「お父様、そんな~ぁ」

「いったい何を、考えているんだ。数日前に拉致された相手の領地に行くだと、おまえには危機感と言うものはないのか?」


 アンジュは久々に、クロードに特大の雷を落とされていた。


 ゴロゴロドカーーーーーーーン!ゴロゴロ―――――ドカーン!


 雷が鳴るたび、アンジュの身体はビクついてしまう。早く自分の部屋に帰って、毛布の中に潜りこみたかった。


(わーん、雷こわいよ~ぅ)


 来週からトゥーリとレレミア、ケントとエルとトーイも一緒に、レレミアの実家、ミエリッハ領へ行くことにしたと報告したところ、クロードからのこの雷だった。

 常日頃から、報連相(ほうれんそう)は大切だとか、忘れるなとさんざん人には言っておいて、報連相をした途端、この雷だった。


(この雷おやじ、どうにかして)


「でも・・・・・、今度開店させるハーブの店の為には、ミエリッハ領のハーブを見ておくことが大切なんです。ちゃんと護衛にエルを連れて行きますし、トーイも手伝ってくれるので、大丈夫だと思います。どうかミエリッハ領へ、行かせてください」


 やはりハーブの育っている環境など、しっかりと自分の目で見ておきたかった。

 どんなハーブが育っていて、どのくらいの収穫量があり、新しいお店の為にどのくらい納品できるのか、最初に詰めておかなければいけないことが沢山ある。


「お父様、お願いします。行かせてください」


 アンジュは両手を胸の前で組み、ななめ45度からクロードを見上げる。

 少し潤んだ瞳でじぃーーーっと見つめ、可愛く甘えた声で言う。

 お・ね・が・い・・・・と。


 それだけで今まで尖りまくっていたクロードの様子が、少し軟化したように思えた。

 絶対に許さんと言わんばかりだったのが、行かせてもいいかな?くらいには傾いている感じだった。


「おまえはミエリッハ領まで、いったい何日かかるか知っているのか?」

「馬車で2日くらいですか?」


 たぶんそのくらいだと思う。(違うのかな?)


「馬車だと急いでも、5日はかかるぞ」

「えーっ、そんなにかかるのですか?」


 急いでも5日もかかると聞いて、アンジュは驚いてしまう。せいぜい3日くらいのものだと、思っていた。

 ミエリッハ領は、とても田舎みたいだった。


「うーん、どうしょう?」


 お店の開店の為には、ミエリッハ領に行っていろいろ見てきたい。いや見ないといけないと思うのだが。


「解った、解った。テリュース殿下にお願いして、ゲートを開いてもらおう」

「ゲートですか?」ゲートって、何?

「我がフランドール公国には王族だけが使える、貴族の各領地に行ける魔法のトンネルが繋がっているのだ。そのトンネルを使えば数秒で、ミエリッハ領まで行けるはずだ」

「まぁ、そんな便利なものが、あるのですか?」


 初めて聞いたけど、魔法のトンネルって凄いと思う。


(数秒でミエリッハ領まで行けるなんて、ほんと便利な魔法だよね。ヤッホー。異世界、最高!)


 5日も馬車に乗って旅をするのは、いろいろな面で大変だった。

 長い間座っているので、腰は痛くなるし、揺れるので気分が悪くなる。

 何より狭い空間に座っているのは、ストレスだった。


「お父様、お願い!」


 再びウルウルの瞳で訴えると、


「解った、解った。私からも、殿下に頼んでやる」


 結局アンジュにはとても甘ーーーーい、クロードだった。


(お父様、だーーーーいすき。)


 ◇◆◇◆◇


 クロードと一緒に、テリュースのところにゲートを使わせてもらえるように頼みに行くと、


「えーっ、アンジュが、ミエリッハ領まで行くのですか?女ひとりでは、とても危ないと思います」

「ひとりではありませんよ。トゥーリ様とレレミア様とケントさんと、護衛にエルとトーイを連れて行きます」


 5人で行くのだから、大丈夫だと思う。役に立つかどうかは解らないが、男性が2人もいるし、騎士のエルもいる。


(ほんと私の周りには、過保護な人たちが多すぎるよね。)


「それでも、危ないと思うよ」 

「殿下、アンジュは馬車で行こうと思っていたので、私も馬車で行かすよりゲートの方がましかと」


 クロードが珍しく、アンジュの後押しをしてくれる。

 親がゲートでなら行ってもいいと言っているのに、テリュースだけ反対も出来ないようだった。


「確かにゲートの方が安全だけど・・・・・・。アンジュ、どうしても行きたいの」

「はい、行きたいです。ハーブのお店をオープンさせるには、どうしても行く必要があるの、お願いテリィ」


 ここでも両手を胸の前で組み、祈るように()()()と、ウルウルの瞳でテリュースを見つめる。

 テリュースが、ゴクリと唾を飲み込むのが解った。

 何だかテリュースの顔が、朱に染まっているような気が・・・・・。(何故だ?)


「わ、解った。アンジュをゲートで、ミエリッハ領まで連れて行く」

「連れて行くって?」送って行くではなくて?


 連れて行くってことは、テリュースも一緒に行くってことだよね。


(一緒に行けるのは嬉しいけど、王族がそうそう他領にいってもいいのかな?お仕事だってあると思うし、ねぇ)


「お仕事が忙しいのに、テリィは無理しなくていいですよ。私たちをゲートでミエリッハ領に、送ってくだされば充分です」


 それに王族が動くと、ミエリッハ元子爵たちだって大変だもの。泊る部屋だって、ある程度良い客間を用意しなくてはいけないし、大変だと思う。


「アンジュ、何時行くつもりなの?」

「最初は馬車で行くつもりだったので、明日か明後日には出発しょうかなと思ってました」

「それなら3日後にゲートを開くから、そのつもりで」

「本当にいいのですか?」

「もちろん、アンジュの為なら、私もがんばるよ」

「・・・・・・・・?」


 なんでミエリッハ領に行くのに、テリュースががんばるわけ?

 ゲートって、そんなに大変なことなのかな?

 それなら無理にゲートを使ってもらわなくても・・・・・・、って思うよね。


「アンジュ、殿下もこう言って下さっているのだから、お言葉に甘えさせてもらいなさい」


 本当にいいのかな?とも思うけど、クロードもこう言っているのだから、ここは素直に甘えさせてもらうことにした。


「はい、よろしくお願いいたします」


(テリィ、大好き♥)


 結局、最初の予定では、アンジュにトゥーリにレレミア、ケント、エルにトーイの5人だったが、これにテリュースとコンラット、アンリがもれなくついて来るとなると、総勢8人。

 アンジュはゲートがどんなものか見たことがないので解らないが、そんなに沢山の人達が一度に通れるのかなと思う。


 ゲートが使えれば、旅行の費用が安くすむ。安全だし、最高だと思う。

 

 3日後にはテリュースがゲートを開いてくれると言うのなら、これで行きと帰りは安泰と言うことだった。


 みんなでミエリッハ領に行けると思うと、アンジュはとても楽しみだった。

 

 ゲートで異世界旅行だよ。異世界、最高!


 

読んで戴きありがとうございました。

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