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タンポポ姫の恋の処方箋   作者: rokoroko
110/199

110.監禁

「・・・・・・ここは、どこ?」

 

 何だか頭が、クラクラした。

 意識がはっきりしない上に、平衡感覚が鈍くなっていて、すぐに立ち上がることは難しかった。


 アンジュが目覚めてすぐに見たものは、やけに薄暗い見覚えのない部屋だった。


(そう言えば私、誰かに拉致されたんだっけ?)


 身体を起こそうとすると、ズキン!と、頭に鈍い痛みが走った。


「痛っ!」


 何か強い薬を嗅がされた時の、副反応のようだった。


(あのクロロホルムみたいな、薬のせいだよ、きっと。)


 ほんと酷いことをする。あのまま目覚めなかったら、どうしてくれるのか?と、犯人に文句の1つも言ってやりたかった。


(まだ誰が犯人だか、解んないけどね。)


 推理をするにも、判断材料が少な過ぎる。


 だってあの爆発の段階での、登場人物ってアンジュとレレミアだけだよ。

 アンジュを拘束したのは、たぶん男性だと思う。それも誰だか解んないし、推理のしょうがなかった。


 アンジュが寝かされていた(放り込まれていた?)場所は、部屋の床の上だった。

 見える範囲には、ベッドなどの家具もない。


 長い間、掃除などされていないようで、埃と黴臭(かびく)さが充満していた。


「この(にお)いと埃の様子は、ずいぶん使われていないお部屋のようですね」


(探偵を気取って、推理っぽい言い方をしていますが、ただの状況判断です。残念。泣;)

 

 ゆっくりと身体を起こす。

 支えるために床についた手は、見なくても埃だらけなのが感じられた。


(うわぁ、ばっちぃなぁ!)


 取り合えず手を叩いて埃を払うが、気持ち悪くてしかたない。

 早く綺麗な水で、手を洗いたかった。


(贅沢な話だが、前世で手を洗うのは当たり前だったし、今世ではお嬢様だからね、しかたがなかった。)


 アンジュが拉致されてから、いったいどれくらいの時間が経っているのか?辺りを見回しても、解らなかった。


「そうだ。、レレミア様はどうなったのかしら?」


 薬草園の扉の外からは、耳を劈くような爆音が聞こえていた。

 レレミア様の悲鳴も---------。

 いったい何が起こったのか?レレミアがどのように関係しているのか?

 アンジュには、解らないことばかりだった。


(さて、どうしょう?)


 このままここでじっと助けを待つような、可愛らしい性格をアンジュはしていない。

 そのせいでなんでもことが大きくなってしまうのだが、性格なのだからしかたなかった。


(おまえが言うなって、感じだよね。クロードからも、よく言われます。一応、反省はしているんだよ)


 幸い身体には怪我はないようだし、どこにも痛みは感じなかった。

 貴族令嬢が暴れても、大の男が負けるわけがないとでも思っているのか、手足の拘束もされていなかった。


「随分、甘くみられたものですね」


 ふっふっふっふっ・・・・・。

 なんかやりそうに、見えるでしょ。

 ご期待に添えるように、頑張りますね。


 アンジュはゆっくり立ち上がると、ドレスについた埃を払う。

 窓に近づくと、外から木が打ちつけられていたが、ところどころはがれていて、なんとか外の様子を見ることができた。


(ここって、森の中?)


 普通の貴族令嬢なら、森の中に置き去りにされたら、逃げる気も無くなるって感じだが、幸いにしてアンジュは普通の貴族令嬢ではなかった。


(こんなことで、泣いたりしないもんね)

 

 北のフィンメースの森には、メグスリの木を探しに行ったこともある。

 まぁ、あの時は妖精たちに連れて行ってもらって、結局帰れなくなったんだけどね。


(さて、どう動く?)


 ふと気が付くと、扉のむこう側、誰かがこちらへと近づいて来る足音が聞こえた。


 コツコツコツ・・・・・・・。女性のような、軽い靴音だった。


 もう一度埃の中に寝ころぶのは、アンジュにとっては不本意だったが、しかたがない。

 まだ意識を取り戻していないふりを、することにした。


(ほんと、ばっちぃなぁ。帰ったら絶対、お風呂に入ってやる!)


 アンジュが寝たふりをしてしばらくすると、扉の鍵が開けられる音がした。

 部屋の中に、誰かが入って来る気配がした。


「アンジュ様、まだお目覚めではないですか?」


 入って来たのは、レレミアだった。


 しかし、相手が解っても、敵か味方か解らない。アンジュはこのまま寝たふりを、続けることにした。


 アンジュがまだ目覚めていないと解っても、レレミアは部屋を出て行こうとはしなかった。

 アンジュの頭の近くに、ドレスが汚れるのも構わずレレミアが腰を落とす。


「ごめんなさい、アンジュ様。わたし・・・・・・」と、泣きはじめた。


 レレミアの他に、続いて部屋に入ってくるものは誰もいない。足音も聞こえなかった。


(ああ、もう、我慢できない。)


「レレミア様?」


 アンジュは身体を起こすなり、レレミアに声を掛ける。

 まだ意識をうしなっていると思っていたアンジュが起き上がったことで、レレミアは驚き悲鳴を上げると、その場に腰をぬかしたよう崩れ落ちた。

 

「きゃーーぁっ!」


 レレミアの悲鳴を聞いても、誰も駆けつけては来なかった。

 普通ならここで見張りの男たちが、「どうした?」って、駆け込んで来るところだよね。

 と、言うことは、今ここにはアンジュとレレミアの二人だけと言うことだった。


(何故、私は拉致され、今ここにレレミア様と二人だけでいるのか?解らないことばかりで、ほんと嫌になる。)


「ああ、驚かせてしまい、ごめんなさいね」


(ちょっとおばちゃん、はいっているかも。とても13歳の、話し方ではないよね。気を付けないと。いけない、いけない。)


「アンジュ様?」

「少し前から、気がついていましたの」 

「・・・・・・そうだったのですね」

「レレミア様、私あまりにも突然のことで、この状況がよく解っていません。ご説明していただけませんか?」


 アンジュには、どうしてこうなったのかを聞く権利があると思う。

 

「はい、アンジュ様。すべてをお話しします」


 レレミアは涙を拭うと、覚悟を決めたように頷いた。

 

 

読んで戴きありがとうございました。

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