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タンポポ姫の恋の処方箋   作者: rokoroko
105/199

105.花粉症にはハーブティ 

 久しぶりの家、自分の部屋なのに、なんだかちょっと落ち着かない。

 1か月家を空けただけでこんな感じになるとは、アンジュも思っていなかった。

 王宮に戴いた私物も何もない部屋の方が、落ち着くなんで不思議だよね。


「でも、・・・・・・・つかれた」


 アンジュは、ベットにごろりと寝転がる。

 貴族の令嬢としてはどうかと思うが、幸い誰も見ていなかった。


「テリィのことは好きだけど、なんだかよく解らない」


 ほんと自分の人生は、超特急だと思う。

 ジェットコースターのように登り下りはないが、凄いスピードで進んでいると思うのは、気のせいばかりではないと思う。

 もっとゆっくり恋をして、恋愛をして、結婚と言う流れになるはずだったのに、いきなり婚約の儀まで終わってしまった。


 2年後にはテリュースと結婚する。

 それは別にかまわない。

 テリュースの事は、素直に好きだと思う。

 それでもどうしても未来に不安を感じてしまうのは、前世の千尋も経験したことがないことを、アンジュが経験するからなのだろうか?


(自慢ではないが24年間、彼氏無し、恋愛経験無しの、薬剤師の卵だからね)


 まぁ、ここでグダグダ考えても、しかたがない。運命と言うのは、そんなものなのだろう。

 自分で勝手に結論づけたところで、瞼が重くなった来た。

 重くて重くて、目が開けられない。


(私、結構疲れてたんだ。)と思ったところで、アンジュの意識はストンと途絶えた。


 ◇◆◇◆◇


 翌日はテリュースとの約束通り、早起きして紅茶のシフォンケーキを作った。

 お添えのアイスクリームも、アンリに氷魔法で冷やして貰うだけにしてある。


「アンジュ、そろそろ行くぞ」

「はーい。ごめんなさい。よろしくお願いします」


 アンリは護衛も兼ねているので、朝はアンジュと一緒に出勤することにしたらしい。

 妹の護衛は不本意のようで、朝のせいかあまり機嫌はよくなかった。


(きっと低血圧なのよね。それか夜更かしのし過ぎ?なにやっているだか?)


 王宮まで一緒に馬車で来た後、薬学研究室まで送ってくれる。

 ここでアンジュをトーイに引き渡して(なんだか犯罪者みたいだよね)、アンリはテリュースのところへと戻って勤務に着く。


「トーイ、後はたのんだぞ」

「はい、はーい、薬草園と薬学研究室から、出さなければいいんですよね」


(人を危険物のように、言わないで欲しい。)


「ああ、よろしく頼む。何かあったら、テリュース殿下の執務室まで、連絡をよこしてくれ」

「はい、は-い。了解しました」


 アンリに対してめちゃくちゃ低姿勢なトーイと、不機嫌顔のアンジュに見送られ、アンリはテリュースの所へと勤務に向かった。


「さて姫さん、今日は何をしますか?」

「何をしましょうか?」


 アンジュは少し考える。


 今朝、長兄のアルフレットの屋敷を揺るがすようなクシャミで、アンジュは眼を覚ました。

 それは1回だけでなく、


「ベクシューーーーーン!ベクシューーーーーン!ベクシューーーーーン!」


 何度も繰り返していて、とても苦しそうだった。

 あんなに力いっぱいくしゃみをしていたら、さぞかし体力を使うに違いない。

 よけいな力が腹筋などにかかって、筋肉痛になってしまいそうだった。


「そう言えば最近王宮では、くしゃみをしている人が多いわよね」

「そうですね。風邪と言うのとは少し違うような」


(それって前世のアレルギー性鼻炎、花粉症ではないかと思う)


「ベ、べ、べ、ベクシューーーーーン!」


 アンジュが前世の花粉症のことを考えていると、トーイまでも盛大なくしゃみをした。


「トーイも、くしゃみですか?」

「ふぁい、先日からくしゃみが止まらなくて」

「ちょっと待っていてくださいね」


 花粉症と言うのは、花粉という異物アレルゲンが体内に侵入するのを、排除するためヒスタミンが放出され、涙、くしゃみ、鼻水で体外へ放り出そうとし、鼻づまりで花粉の侵入を防ごうとして起こる症状のことなのだが、ハーブの中には抗アレルギー作用や抗ヒスタミン作用をもつものがあるので、ハーブティーにして飲んで、花粉症の症状が重くならないように予防することもできるのです。(ハーブって、凄いよね。)


「花粉症ならネトルとエルダーフラワーのブレンドティがいいかもしれませんね」


 マスカットに似た甘い香りでやさしい味わいのエルダーフラワーと、緑茶のような香りと味で飲みやすい、ネトルのブレンドしたハーブティをトーイに入れてみた。

 温かい湯気が心地よいのか、顔をカップにつけるようにして、トーイはハーブティを飲み干す。

 吸入器のように鼻からと喉から、スチーム を吸入する事で症状が緩和できているようだった。


「姫さん、なんだかすごく楽になりました」

「そうですか。よかったです。ではこのエルダーフラワーとネトルのブレンドのお茶を、花粉症で苦しんでいる方に、飲ませてあげるとよいかもしれませんね」

「そうですね。みんな喜びますね。では早速、俺は薬学研究室の奴らと、アルフレット様に届けてきますね」

「ありがとう、トーイ。アル兄様、とても大変そうだったので、お願いしますね」


 花粉症って、ほんと大変だものね。

 ハーブティでも飲んで、少しでも楽になってくれればよいと思う。


 後からトーイに聞いた話によると、ハーブティはとても好評だったらしい。

 ブレンドしたものを譲って欲しいと、薬学研究室に人が押し寄せ大変だったとリシャール殿下がぼやいておられた。

 お茶を配るだけなのでいいと思っていたが、これも報連相(ほうれんそう)案件だっだらしい。


(わーん、ごめんさーい。まさかそんなことになるとは、思わなかったので・・・。) 


 でも、そんなに人気があるのなら、ハーブティの専門店を開くのもよいかもしれませんよね。

 今度トゥーリ様に、相談してみーよう、と。




読んで戴きありがとうございました。

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