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8話 那由多の太刀

 上空を飛ぶドラゴンに対して刃先を向ける。同時に息を吸い


「【瞬閃!】」


 思いっきり叫んだ。薄浅葱色の斬撃はドラゴンの片翼をもぎ取り爆散させる。


<グルァァァア!!!>


 ドラゴンが断末魔を上げながら地上に叩きつけられた。


「なんだ!」

「どうした!?」

「敵襲!!敵襲!!」


 異世界の軍人たちが慌てふためく。その隙を逃さずさらに魔力を込める。


「【双路の劔】」


 2つに別れた瞬閃は若い兵士たちの首を掻っ切った。


「ヘルマン!ヨニー!」

「フランコ中尉!一時撤退を!」

「よし、私が一旦指揮をとる!駐屯地へ撤退!」

「「ハッ!」」


 撤退する軍人を見て一息ついた。


「あぁ、なんとかなったぁぁ。読み通りガルシアは部下には何にも伝えて無かったみたいだな。相当相手も混乱してたぞ。」


「無茶しますね...奇襲で竜を狙ったのは良いですけど、爆発で目くらましになってなかったら危険でしたよ。」


「奇襲でしか勝ち目ないしなぁ。1番おっかないドラゴンを墜とせたんだからまずまずだろ?」


「でも、まだ十数人います。この地を離れてもいいですが、他の現女神の地で挟み撃ちになっても面倒ですから...」


「今やるしかない。だよな。」


 普段使わない頭をフル回転させ戦略を練る。頭の痛くなる話だった。


 ーー-----------------------


 今や異世界人の駐屯地となった国会議事堂では予算委員会が開かれているかのごとく喧騒に包まれていた。


「ガルシア大佐はどこをほっつき歩いているのですか!」

「攻撃してきたのは地球人と見るべきです!」

「いや、ガルシア大佐の攻撃かもしれません。」


 着地点の見えぬ言い争いに苛立つ青年がいた。


「いつまでの中身のない議論を繰り返している!我々の脅威が誰であれ、帝国に反する者なら敵であるはずだ。それがたとえ大佐だとしても...」


 大声で叫んだことで隊員の肩がブルっと震える。


「おい、貴様。」


 青年が隊員の一人を指差す。


「な、何でしょう。」


「貴様は一人西へ飛べ。何日かけてでもいい。西方隊へ異常を伝えるのだ。」


「お、お言葉ですが、この地は広大ゆえ【ゲート】以外での移動は不可能かと...」


「ゲートを使えるほどの魔力を使う余裕はない。もう一度言う。西へ飛び、異常を伝えてこい。」


「か、かしこまりました!」


 言われるがまま隊員は西へ飛び立つ。


「フランコ中尉ッ! 一体どうする気ですか!」


「言ったはずだ。私が指揮を執ると。」


「しかし!この距離を単独で飛ばすのは危険です!」


「知るか。帝国のためだ。彼も納得しよう。」


「中尉、あなたは何を...!?」

「ん?なんだこれは!」


 ドゴオオォという爆音と震動が国会議事堂を襲う。


「敵襲か!?迎え撃つぞ!」

「「ハッ!!」」


 残った隊員全員である18人を連れて外へ出る。


「飛龍隊!各自の龍の安全を確認しろ!」

「「ハッ!!」」


「飛龍1異常ありません。」

「飛龍2異常ありません!」


「龍が狙われたわけではないのか...?」

「伏せろォッ!」

「!?」


 国会議事堂が魔力による斬撃で崩れていく。東西南北すべての方向から攻撃が飛んでくる状況に若い指揮官は冷静を保つことはできない。


「敵は複数体だ!分散して討つ!」


「もう少し状況を見ても良いのでは!?」


「そんな時間はないっ!4人ないし5人で4方へ進め。」

「「ハッ!!」」


 軍人たちが分散する。その様子を見ていた者が薄く笑いを浮かべた。


 --------------------------


 狙い通りだ。正直ここまでガバガバな作戦に引っかかってくれるなんて思ってもいなかったから拍子抜けだが、好機は生かそう。


 高台から【双路の劔】を撃って狙いを分ければ敵は複数を相手にしていると勘違いするはず。とカナタに伝えた時は訝しむ顔をしていたが無事に帰えれたらドヤ顔で帰ってやろう。


「いっちょやったるか!」


 目視できるのは南側に走ってきている4人。内2人に狙いを定める。


「【双路の劔!!】」


 2つの瞬閃が2人の兵士を切り裂く。不意打ちに使えばまず間違いなく一撃必殺になる技のようだ。


「いたぞ!あそこだ!」

「【火生!!!】」


 火の粉が襲いかかってくる。しかしガルシアの魔法に比べれば威力、スピード、規模が格段に劣った魔法は、俺が魔力シールドを出すまでもなく空中で消え去った。


「くそ!詰めるぞ!」

「バカ!中尉に報告をするぞ。」

「その間に斬られちまうぞ!突っ込むしかねぇんだぁ!」


 やはり正気を失っている。ガルシアのような狡猾さや強さがまるでない。これならいける...


「【瞬閃!】」


 双路の劔と違い、ただの瞬閃では真っ直ぐ飛ぶことしかできない。だからあえて俺は軍人たちの足元を狙った。


「グワッッッ」

「なんダァ!?」


 同時に思いっきり走る。双路の劔より威力の高い瞬閃は地面に当たると大爆発を起こした。その隙に...


「どこだっ!?」

「チクショウ!何も見えねぇ。」


 当然煙で俺も敵の位置は見えていない。なら瞬閃を小さく分散させた弾幕を貼ればいい。名付けて...


「【那由多(なゆた)の太刀!】」


 無数の薄浅葱色の斬撃がボール投げくらいの速さで前進する。


「ぎゃ、ぎゃあああ!!!!」

「イデェ!いてぇよおおおお」


 うめき声が聞こえてくる。聞いているだけで痛々しいが、ゲートをくぐった地球人たちも同じだろう。と心を鬼にする。そんな心を持てる自分が、少しだけ嫌になった。

ご読了ありがとうございます!

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