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7話 2つの路。1つの結果

 煙が引いていく...ガルシアはどうなった?


「期待外れだなぁ、小僧。」


「なっ!?」


 まったくの無傷でガルシアは立っていた。距離も詰められ、30mほどの猶予しかない。やはり前回は完全に不意打ちだったためにダメージを与えれたにすぎなかったということか。

 よく見るとガルシアも魔力を放出してシールドを作っていた。


「実を言うとな、期待していたのだよ。冥土の土産に教えてやるが、小僧が強くなれば我が軍にスカウトしようと思っていたのだがなぁ。」


「聞くつもりもないことをぶつぶつとどーも。」


 こちらの攻撃が通らないとしても、ガルシアの攻撃もこちらには通らない。なら五分五分であることに変わりはない。一度形勢を立て直すこともできる。


「もう終わらせよう。できるだけ目立ちたく無かったから使うつもりはなかったが...心して受けろ。」


 そう言うとガルシアは魔力を溜め込む。彼の空間だけが燃えているように見え、動くことも声をあげることもできない。


「アラタ!!防御!」


 カナタの声でハッとする。急いでシールドの準備を...


「遅い。【紅百合(くゆり)】」


 爆炎の花が目の前に咲き誇る。それと同時に全身に激痛が走る。


「うがぁぁああっ!」


 熱いのか痛いのかの判断も出来ない。シールドで緩和できたため一般的な漫画では軽症の範囲内であるが、実際に受けてみると発狂するほど痛い。


「アラタぁ!」


 カナタが駆け寄ってくる。


「バカ!魔力がないカナタが来てどうする!逃げろ!」


「共に逝け、悲しき少年達よ。」


 ガルシアが急接近し剣を抜く。膝をつく俺と、構えた剣の間にカナタが両腕を開いて立つ。


「アラタは殺させません。アラタを殺したら私も舌を噛み切って死にます! 私の魔力が欲しいのでしょう?」


「ふん、確かにそうだな。」


 ホッとカナタが胸を撫で下ろしたのがわかる。


「俺が軍人として動いたらの話だがな。」


「それはどういう...うぐっ」


 ガルシアがカナタの口を押さえ持ち上げる。


「悪いが俺は魔力などに興味はない。この星を餌に時期皇帝となるのだ。」


 やめろ、やめてくれ...

 ガルシアの次の行動が読め、絶望に落ちる。


「特異点が1人減ったところで...問題はないな」


 そう言い切るとガルシアは剣を左手で持ち、カナタを突き刺そうと剣を引く。


「やめろぉぉおおおおおお!」


【瞬閃】の準備をする。しかしこのまま振ればカナタも巻き添えをくらってしまう。どうすればいい。考えろ。

 そこで俺はカナタの言葉を思い出す。

 俺の修行はあくまで[技]の修行だとカナタは言った。それなのに俺は刀の修行ばかりしていた。刀で勝負しても、勝ち目はないのに。


 ならば-----


「さらばだ」


「その汚い手を離せぇ!」


 名付けて---


「【双路の劔(そうじのつるぎ)!!】」


「なにぃ!」


 ガルシアの視点からはカナタを避けるように左右から薄浅葱色の斬撃が飛んできただろう。カナタを掴んでいた右手は切れ、左胸はえぐれている。


「ゲホッ、ゲホッ!ア、アラタ...」


 弱々しく名前を呼ばれる。


「悪い。こんな土壇場で完成になっちまって。」


「いえ...ありがとうございます。」


 その言葉を聞いてニコッと笑う。こんな時くらいはカッコつけてもバチは当たらないだろう。


「さて、ガルシアは...」


 視線をやればガルシアはそのまま立っていた。もう、虫の息ではあるが。


「俺の勝ちみたいだな。ガルシア。」


「そのようだな。俺の野望もここまでか。」


 息だけ口からでているような声で答える。おそらく肺まで潰したのだろう。


「辛いものだな。死の直前というものは。さっさとトドメをさしてくれんか?」


「あぁ。わかった。」


 刀を構える。しかし、いざ人を切るとなると躊躇いが生まれる。今までは考えないようにしていたが、これから俺は何人もの異世界人を斬り殺すことになるだろう。その一人目を目前にして迷いが生まれていた。


「恐れたか?小僧。」


 ビクッと身体が震える。


「わかるのか?」


「そんな間抜けはいくらでもいる。全員除隊するか斬り伏せるかだがな。だが、覚えておけ。臆せば貴様が殺される。お前の同胞のようにな。」


「知っているのか!地球人のことを!」


「地獄さ。それ以上の言葉はない。さぁ、早く斬ってくれ。もう耐えられたものではない。」


 覚悟を、決める。

 ザシュッ!と首を斬る。「それでいい」と言わんばかりの表情でガルシアは最期を迎えた。


 人を殺めた。この言葉が脳を這いずり締め付ける感覚を覚える。割り切ったつもりだったが、実際に首を跳ねると心臓が思いっきり縮こまる。


「アラタ、さっきの技は...」


「あぁ、【双路の劔】。【瞬閃】を圧縮して2回分魔力を込めたら左右に放出すればあぁなったんだ。正直、上手くできるかは賭けだったけどな。」


「大佐ぁ!どこですかーー。大佐ぁ!!」


 上空から叫び声がした。どうして気づかなかったのか、大きな竜がすぐそこの空まで近づいている。


「まだ終わりじゃなさそうだな。」


「そうですね。もし、私の仮説が正しければ...」


「言いたいこと、なんとなくわかるぜ。今ならもう、ドラゴンだって怖くねぇ!」


 魔力を最大限に溜め込み、空を睨んだ。

ご読了ありがとうございます。

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