6話 再戦の狼煙
結局今日は結界を破れず終わった。魔力も底をつき、頭がガンガン痛む。カナタの魔力ドーピング飯で回復をしても追いつかないほど撃ちまくっていたから、仕方がないが...
「なぁカナタ、そろそろ答えを教えてくれないか?」
「んー...結論から言ってしまえば、わかりません。」
「ふんふん、なるほどって...ハァ!?わからないってどういうことだよ!」
「だって人間に魔力を与えるなんて初めてのことなんですから、どんな技を使えるかなんて想定できませんよ!」
なんてこった...最低でもカナタが答えを知っていれば解決するかと思ったが、これでは先は長そうだ。でも...
「早ければ明日にもガルシアは来るかもしれないんだよな。」
「そうでした!」
突然声を挙げてカナタが立ち上がる。
「お!何か案があるのか?」
「戦闘服ですよ!戦闘服。」
戦闘服...そういや今までパーカーとかダウンとかテキトーな服ばっかり着て過ごしていたな。
「忘れていました。これです!」
カナタはパンっと手を叩く。もう見慣れすぎた光景だった。
シュッとカナタの広げた両手の上に黒い服が出現する。よく見ると...和服なのかな?これは。
「これは直垂です。魔力に富んだ糸から織ったので、魔力の通りや瞬閃の威力も上がると思います。」
ひたたれ...ってなんだ?という顔は出来るだけ隠した。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥とも言うが、なんでもかんでも聞いている状況なので、今の俺はそうも言ってられない。
「魔法のアイテムじゃん!」
「まぁでも結局はアラタの使い方に依存するので、気休め程度の効果しか得られないと思いますけどね。」
「あぁ、そう...」
どうも現実ってのはファンタジーのように都合よくいくものではないらしい。
これを着ただけではあの結界は破れるようにはならなさそうか?
「とりあえず着てみてくださいよ。」
「おう。」
着るのムズッ!
あたふたした俺を見かねてカナタがため息をつきながら着付けてくれる。
「サイズはちょうど良さそうですね。おお〜結構様になってるじゃないですかぁ。」
ちょっと照れることを言うなっての。
「おお、本当にちょっと魔力が強くなった気がする。」
本当にちょっとだけだけど。
「さぁ、明日からですがもう異界の者が攻めてくる可能性があります。」
さっき俺が言ったことなんだけどな、それ。
「ガルシアの脳って覗けないのか?そうすりゃいつ頃来るかわかるだろ?」
「ダメです。もう魔力はほぼすべてアラタに授けたので。失敗でした。もう少し自分用に取っておくべきでした...」
なんか何処か抜けているんだよな、本当に女神なのか?とは当然言えないので
「まぁそれならしゃあない。明日から攻めてくる可能性があるなら修行で魔力を使いすぎたらダメってことだな。」
「そうです。ただ、今のアラタで異界の者を倒せる確率は60%ほどだと思います。この確率も一昨日の彼が本気であったらの話ですが。」
かなり厳しい戦いになることは間違いないってことか...それにガルシアには他にも仲間がいる。
「とりあえず明日からは慎重にってことだな。もうグッタリだから寝るよ。おやすみ」
「はい。おやすみなさい。」
よくよく考えたらこんなぐっすり眠る機会なんてめったに無かったな。むしろ普段より健康的な生活なのかも知れない。とぶつぶつ考えたまま布団に入って間もなく、俺の意識は消えた。
目が覚めて朝ごはんを食べたらすぐに【瞬閃】の修行を再開した。やはり黒い直垂を着ても結界を破るほどには至らなかった。
刀の振りを綺麗に振ってみたり、魔力をじっくり練って撃ってみたり、抜刀みないな動きで撃ってみたりと迷走を続ける。
そんなこんなでもう昼をまわった。一向に解決に向かわないからと少し横になってふけっていた。
「こりゃダメだ。どんな刀の使い方をしてもビクともしねぇ。」
魔力を使いすぎてはダメとなっていることを言い訳にして帰ろうとしたその時、後ろからシュゴォォと音がする。
!!
「[羽衣鼓!]」
考える間もなく叫び、刀を振った。激しく燃える炎弾が目の前ではじけ飛び、火の粉として足元に落ちた。
「ずいぶん雑な登場だな、ガルシアさんよぉ。」
異世界へ連れて行かれた皆のことを思うと、自然と声に怒気がこもる。
「反応できるようになったか。これは楽しみだ。部下を騙して待たせているのでな、早速だが殺させてもらうぞ。」
そうボソボソ言うと、ガルシアは両手で俺を捉える。その行動を見た瞬間に魔力をへそに貯める。
「【火界呪!!】」
一点に集中した火炎が迫る。
「うりゃ!!」
魔力を手から放出しガードする。この技程度なら完璧に防げるとわかった。俺の魔力と炎が激しくぶつかり、林まで覆い尽くすほどの煙となった。ちらっと横目で木陰に隠れたカナタの無事を確認した。
「【瞬閃!】」
煙に乗じての奇襲。今の俺のできるだけをこの瞬閃に乗せた。
ご読了ありがとうございます。
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