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3話 異世界へ転移した者たち

 薄浅葱色の靄だった少女、カナタについていくと、さっきまで林だった場所に、木造の建物があった。

 もう魔法を見たし、なんなら自分で使ったから、いちいち建物が現れたくらいで驚いたりしない。


「どうぞ。お入りください。」


 もう日は暮れ始めていたが、建物の中に灯はないのに明るい。


「この明るさも魔法なのか?」


「ちょっと違いますけど、魔法との違いは微々たるものなので気にしないでください。」


 パンっとカナタが手を叩くとちゃぶ台が出てきた。もう一度手を叩くと今度はほかほかの飯が出てくる。


「すげぇ...けど、何からできてるのこれ」


「この大地の魔力です。食べたら魔力が回復すると思いますよ。」


「お腹はすいたままじゃない、それ?」


「まぁそうですね。」


「まぁそうですね、っておい。」


「そんなことより...」


 流された。とりあえず座って出された飯を食べる。あ、味はするんだ。よかった。

 しかし改めて見ると凄まじい美少女だな。


「...ています。」


「あっ、ごめん。聞いてなかった。もう一回いい?」


 しまった。見惚れてぼけっとしてた。


「? しっかり聞いていてくださいね。今、あなたには大義が任されています。」


 大義...そういや何回かカナタに言われていたような。


「具体的には何を?」


「異界の者の殲滅です。」


「ゴホッ!ゴホッ!せ、殲滅〜!?」


 掻き込んだ魔力米を詰まらせてしまう。


「なんで殲滅なんて物騒なもんを...」


「異界の者たちが、この星の大地が持つ魔力に惹かれ、地球人を異界へ送りました。あなたはこの星最後の人間です。この星を守ることがあなたの大義」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!その言い方だとまるで、異世界人のほうが地球人を異世界へ連れて行ったって聞こえるんだが」


「はい。その通りですよ。この世界の中枢を彼らは工作員で占拠し、地球人を先導し、焚きつけ、異世界へ送る。それが彼らの計画です。」


「な、なんでカナタはそんなこと...」


「私、アマミカナタは、この星の現女神です。」


 あ、あらめがみ...?初めて聞いた名詞だけど...


「私たち現女神は、およそ20年前、この世界に異界とを繋ぐ門が開かれたのを感知しました。そこから出てきた調査員は、どういうわけか現女神しか持てないはずの魔力を有していました。先程試したように、魔力を持つ生命で、かつ地球上にいれば限定的にはですが脳を覗くことができるので、その者から基本的な情報を抜き取ったのです。」


 だからそれだけ詳しいのか。


「じゃ、じゃあ、俺も異世界に行って、騙されたみんなを連れ戻さなくちゃだな。」


「いいえ。その必要はないでしょう。」


「な、なんで...」


「おそらくすでに、全滅しています。」


「...は?」


 あまりの言葉に立ち上がる。


「ど、どういうことだよ...全滅って、まさか」


「はい。もう70億人全員、殺されているでしょう。」


 嘘だろ...そんなことありえるのか。でも目の前にいるカナタは神様。地球人を殺す計画も脳から得ていたんだろう。


「門をくぐった地球人を、門の中で整理し、門から出てきた瞬間に高台から魔法を放つ。ざっと言えばこういう計画でした。」


「.....なんで殺すことにしたんだ?地球の魔力なんて俺たちは使ってこなかったぞ。魔力だけ渡すよう向こうも交渉してくれたら...」


 できるだけ冷静に言葉を紡ぐ。


「使っている自覚がないだけで、本当は農作業などで大地の恵みを受けているんです。そして彼らは核兵器を恐れた。自暴自棄になった地球人が、核兵器で大地をボロボロにしては意味がない。対話による解決を決断しなかったのはこれが原因でしょう。」


 もう言葉はでない。1週間前まで同じクラスだった奴らや、ネットで知り合った奴ら。コンビニのおばちゃんや南極ツアーの時のお姉さん-俺の、初恋の人も、みんなみんな魔法で殺された。その事実を認めるのは簡単ではなかった。


「どうしますか?改めて聞きます。異界の者を殲滅しますか?」


「あぁ。やるよ。でも、ただの殲滅じゃない。ちゃんと相手のトップに直接問いただしてぶん殴ってやる。」


「決まりですね。」


 カナタはニコッと笑って


「では、まず私の仲間を探してもらいます。今、現女神は地球に5柱いるのでよろしくお願いします。」


「ん? カナタの力を借りるだけじゃダメなのか?」


「1柱の力ではおそらく太刀打ちできないと思います。地球と異界の総力戦となるので、戦力はしっかり集めましょう。」


「オーケーわかった。で、その仲間ってどこにいるんだ?」


「ヨーロッパのどこか、アフリカのどこか、オーストラリアのどこか、アメリカのどこかですね。」


「アバウト過ぎないかなぁ!?」


 予想以上にふわふわした回答が返ってきた。


「でも、目印になるものはあります。」


「目印?」


「異界の者たちは多くの魔力を持つ私たちを特異点と呼び、探しています。ならば...」


「異世界人がいるところに現女神ありってことか」


「そういうことです。ただ、他の現女神を探す前にやるべきことがあります。」


「それはわかるぞ。まず、ガルシアたちを討つことだな。」


「その通りです。では明日から早速修行ですよ!」


 この時の俺はまだ、この修行期間で3回は半泣きすることを知らなかった。

ご読了ありがとうございます。

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