表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャドーダンス  作者: 六青ゆーせー
98/99

132

132

良治は、上手く二人を誘導していた。

前方の状況は判らなかったが、どっちにしろ合流した方が戦いやすいに決まっている。


そこで、敵に距離を詰められないギリギリを狙って、良治は少しづつ前進していた。


わざと接近し、ナイフを撃つ。

すると経験の浅い小娘が、分銅で攻撃してくる。

射程距離は判っているから、ここで一気に前進するのだ。


連中には、炎に慌てて逃げているように見えているだろう。

小娘がムキになって追ってくるので、勢いボクサーも前進せざるを得なくなる。


これの繰り返しで、良治は前に進んでいた。


攻撃に変化をつけることも学んだ。

野球のピッチャーと同じだ。

色々な変化球を混ぜるように、大きなナイフを投げたり、分裂するナイフを投げたりする。

大きなナイフは時間がかかると思っていたが、二、三本なら手早く作れるようにもなった。

敵は大きなナイフで怪我をしているので、神経質になっていた。


良治が、戦いの中で考え、色々に戦法を工夫するのは初めての事だ。

そもそも影繰りと二対一の戦いをするのも初めての経験なのだが、それも、逃げていれば味方に辿り着く、という気楽さからくる余裕の賜物と言えた。


そして、気が付いてみると全てのナイフを跳弾で投げたり、大きなナイフを分裂させたりすることで、ボクサーを慌てさせ、小娘を怒らせて全身速度を加速させることに成功した。


連続で襲ってくる分銅の攻撃を避けて、全力疾走するうちに、やっと仲間の姿が見えてきた。

良治は、こみ上げてくる喜びを隠して顔を引き攣らせたが、すぐに状況が判らずに、口をポカンと開けることになった。


味方二人が、まるで睨めっこでもしているかのように、突っ立って向き合っているのだ。


「兄貴、どうしたんだ?」


「僕は、この人に心臓を握っています。

殺したくなかったら、大人しくしてください!」


大柄な兄貴が、膝立ちにされて、後ろに餓鬼が立っていた。

言葉を喋らなかったら、小さくて判らなかった。


良治は咄嗟、ナイフを浮かべる。


「止めな。

あんたがナイフを発射する前に、あんたの兄貴の動脈が切れちまうよ!」


黒い獣が、後ろも見ずに言った。


「どうやら詰んだようだな」


ボクサーと小娘が、良治の後ろに立っていた。


「ああ。


誠君が全てを仕切ったようなもんだ。

大した中学生だよ」


永田が笑った。

アクトレスは、獣の姿で、内心の動揺を抑えていた。


真…。

真だって?


用心深く、アクトレスは問う。


「で、あんたたち、なにものなんだい?」


永田は胸から手帳を取り出した。


「俺たちは内調だよ」


獣が黙り込んだ。

大男がゆっくり手を上げる。


「判った、判ったよ。

お役所じゃ仕方がない。

お国に逆らうつもりは無いんだ。降参するよ」


誠が、ホッと笑顔を浮かべた瞬間、脇腹に重い一撃を受けた。


しまった。


思ったときには遅かった。

大男の言葉に、指先を緩めたところを狙われた。


美鳥を吹き飛ばしたのと、同じ一撃だった。

大男は、体のどこからでも攻撃を繰り出せるのだ。


誠は線路を越え、反対側に落ちた。

同時に、良治が誠に向かって、突っ込んでいく。


大男は、隣に立っていた美鳥の背後に素早く回り、美鳥の顔と同じぐらいある太い腕を、美鳥の首に巻き付けた。


「おっと、動くなよ。

俺たちゃあ零細企業でね。

公務員さんみたいに、のんびりしたこと言ってられないんだよ。

この餓鬼は、今のままでも何億も稼いでくれるサラブレットだ。

三佐さんに出てこられたって、引けないね!」


線路の反対側では、良治が、ナイフを餓鬼の首に突きつけていた。


「動くと喉笛が裂けちまうぜぇ」


誠は、良治を落ち着いて見ていた。


「あなたたちは、僕をどうするつもりなんですか?」


大男が近くにいたら、良治に答えさせなかっただろう。

だが良治は、空気を読むとか、相手の気持ちを考えるとかは出来ない男だった。


「ヒヒヒ。

そりゃあ稼いでもらうのさ。

なーに、俺と兄貴で、優ーしく、お前を一人前にしてやんぜ!

それで、俺はロンドンに海外旅行をするんだぜぇ!」


勝ち誇った良治だが、そのまま凍り付くことになった。

誠が、首元のナイフに構わず、立ち上がったのだ。


ひっ!


良治が叫んだ時には、良治の心臓は握られていた。


「美鳥さんを放してください!」


大男も、さすがに驚いた。

この餓鬼は、いや、この少年は、もはや不意打ちを喰らう以外は、まともな攻撃は一切効かなくなってやがる!

たった一日で、ここまで育った化け物は初めて見たぜ…。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ