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シャドーダンス  作者: 六青ゆーせー
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馬鹿な!


ミオは、思わず叫んでいた。


痩せた男が、雄叫びを上げて走ってきた。

ミオは、ボクシングスタイルで待ち受けた。


負けるはずはない状況だった。

だが…。


男が、両手に一本づつ持った刀が、ミオの花弁に接触する寸前で、ミオとレディに向けて放たれた。


ミオの花弁は、外側は敵の攻撃を跳ね返し、内側は接近戦で近づいた敵に、見えない創傷を作る。

俗にカマイタチと呼ばれるものだが、カマイタチの原因は科学的には解明されていない。

真空状態になるのが原因というのは都市伝説の類で、真空に晒されたとしても生物の肌は傷つきなどしない。

俗に言うしゃっ血療法など、実は人間は、大昔から真空を使いこなしていた。


ミオ自身にも、どういう理屈で創傷が出来るのかは判らない。

影の力は、イメージによって決まるので、科学的に理解される必要はない。


とにかく、カマイタチは、接近戦では非常に有効な武器だ。

どんなに影を纏っていても、強力な鎧などを身に付けていても防げない。


まず花弁が敵を切り裂き、次にミオのパンチが致命打を与える。


中距離のレディの分銅と合わされば、ますます破壊力は増していく。


だが…。


跳んでくる刀にカマイタチは通用しない。

飛び道具は、ミオがパンチで叩き落すか、類まれな反射神経を誇るフットワークで避けるしかない。


銃弾やナイフなどならパンチで潰せる。

ミサイルは避ける。

通常は、遠距離攻撃はミオには通用しないのだ。


が、至近距離からの、しかも切りかかると思っていたところからの射撃は、意表を突かれた。

刀、と言うサイズも、パンチで潰すには大きすぎ、避けるには至近距離過ぎた。


さらにミオの頭をよぎったのは、レディの事だった。


レディはまだ子供だ。

高校一年で、美鳥とは同級になる。

影繰りになったのは美鳥より一年遅く、実戦経験は二年に満たない。


攻撃力は高いのだが、回避能力はまだ未熟で、ミオも付きっきりで指導している最中だ。

彼は、ここまで至近距離の攻撃は、分銅で弾けない。

実は、レディの胴体ほどもある大きな分銅は、細かい制御に難があるのだ。


と、同時に、もし分銅で弾けた場合でも、この長さの刃物は、なお殺傷力を秘めてレディを傷つける可能性がある。

なぜならレディも、回避能力の未熟さを理解していて、分銅を体に近づける癖がついているからだ。


分銅とレディとの距離は、三〇センチを切るかもしれない。


真正面から弾ければいいが、横に当たった場合、何割かの確率で逸れた刃物は弾けて、なおレディを傷つけかねなかった。


元々、飛んでくる日本刀を避けるような訓練はさせていない。

想定すら、していなかった。


ミオは、レディを護らなければならなかった。


そのため、ミオは横に跳んだ。




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