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「今夜も多分、餓鬼は塾に行くはずだ。
襲撃は夜の方が良い。
なまじっかな光りがあれば、奴も影を使おうとするはずだ。
だが、上手く真っ暗闇の中に奴を放り込めれば、暗闇での戦い方なんて、まだ判らない。
戸惑っているうちに眠らせて捕獲するんだ」
大男はビルの屋上で黒い長袖Tシャツに着替え、目ざし帽をかぶりながら言った。良治と呼ばれたピアスの男は、せっせとピアスを外していた。
「高く売れるんだろ? 兄貴、一億ぐらいにはなるのかな?」
「馬鹿、十億だって勿体ねぇよ。
何十年かぶりの野生種だぜ。ちゃんと仕込めば一仕事で何億も稼げるようになる。
レンタルでうちの会社は億万長者だ!」
「ボーナス、増えるかな?」
ピアスを取り終わった男は、黒のニット帽をかぶり、顔に墨を塗りながら尋ねた。
「成功すればおやっさんの機嫌も良くなるだろうぜ。
それに奴が稼げるようになったら、当然、会社も大きくなる。
ボーナスどころか、月々の給与が増えるぜ」
「おおっ、海外旅行もいけるかな?」
大男は自分の外見を鏡で確認していた手を止め、良治を見た。
「お前、少しぐらい貯金とかしねぇのか?」