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バタフライは、横に跳んで餓鬼から避けよう、と思ったが、踏みとどまり、逆に前に跳んだ。
餓鬼は驚きの表情を浮かべた。
バタフライも、反射的に逃げようとはしたのだ。
だが、餓鬼が恐ろしいのは、ある程度の距離を取った時だと気が付いた。
ピッタリと貼り付いてやったら、こいつは落とせないかもしれない。
一年先、いや一か月先なら、眉毛一本も動かさずに落としてのけるだろうが、影を身に付けて一日の今は無理だ。
そして、近づいてしまえば、餓鬼の戦闘力などたかが知れている。
このバタフライ様に敵うはずがない!
バタフライは、吹き飛ばした美鳥を抱えるように倒れた餓鬼に覆いかぶさり、餓鬼の喉に指を這わせた。
「チェックメイトだな」
大男は勝ち誇り、笑いを浮かべた。
が、笑いはそのまま、引き攣った驚愕に変った。
なにっ!
俺の心臓が…。
驚いて視線を落とすと、餓鬼の手が、バタフライの胸に刺さっていた。
心臓を鷲頭かみにする…。
言葉では言うが、実際にされたものはいない。
さすがのバタフライも初めてだ。
史上でも初めてだろう。
生きたまま、心臓を掴まれた気分を味わうことになろうとは…。
餓鬼は、大男を見ながら言った。
「首を絞めてもいいですよ。
その何秒かで、僕はあなたを殺せる」




