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美鳥は、永田の判断が正しかったのを、今さらに思い知った。
この巨大な筋肉の塊のような男に、何十何百のパンチを打っても、男は涼しい顔で美鳥を見上げるばかりだ。
美鳥は、中一で実戦に出たから、格闘戦も数えきれないぐらい経験していた。
だが接近戦を専門とする、この男のようなプルファイターの影繰りと殴り合うのは、さすがに初めてだ。
蝶の鎧で影も厚くなり、力もその分増しているはずなのだが、全く歯が立たない。
美鳥なりの工夫はしている。
手甲の部分をメリケンサック状態にして、破壊力も上げている。
それでも、大男の影のオーラは分厚く、傷はつかない。
例え手甲をナイフにしても、男に通用しないのは同じだろう。
接近戦専用の影繰りとして、素でも美鳥の鎧以上の強力な影を纏っているのだ。
「誠君、私と一緒にこいつを沈めて!」
美鳥は叫んだ。
えっ! と誠は狼狽え。
「そ、そんなことはできません!」
「それしかないのよ!」
美鳥は絶叫する。
その瞬間、美鳥の手が止まった。
バタフライは、美鳥が座った腹から、ドリルを発生させた。
切り裂くことも出来たが、それでは餓鬼に落とされて終わりだ。
先の丸まったドリルで、殴るように少女を弾き飛ばし、後ろに立った餓鬼にぶつけた。
大男は即座に立ち上がった。
が、冷たい電気が皮膚を走った。
餓鬼が、こっちを見てやがる。
倒れる一瞬も、奴は視線を外さなかった。
普通は、相当のベテランでも、跳んでくる少女に視線が移るはずなのに…。
やばい!
男は、横に跳んだ。




